無駄に使った46分 (2021.7.17水戸戦レビュウ前編)

0 – 1。

観ていて挽回できる匂いがしない、プアな敗戦でした。
今季ワーストに近い出来。

水戸のほうが、特にその攻撃、はるかに魅力的で、かつ、破壊的でした。

すこし前なら、0 – 3 だったところ、なんとかこのスコアで凌げるようになったことが収穫だった。

確かに後半は、けっこう攻めに転じはしましたけれど、なぜギクシャク。
魅せるシーンに乏しかった。

ハーフタイム、小手川と田中パウロが強度の高いアップをしているので、後半冒頭からふたりの投入があるな、と診ていましたが、案の定。

プレビュウで指摘したとおり、であるならば、ゲーム開始から、佐藤、小手川、前を揃えるべきだった。

〈半分を、まったく無駄に費やした〉
前半を終わった時点、この先、たとえ同点、あるいは逆転しても、ゲーム総括のタイトルは、これにしようと思っていた次第。

推定ではありますが、前節山形戦の、後半の出来が良かったことがチームの残像としてあって、それをなぞりたかったこと。

それと、おそらく指揮官からはシンプルに、という指示があったのではないか、ほぉ!、と言うくらい、ロングボール多用なゲームの入りになった。

ま、この展開もわずかな時間のみ。
山雅のプレイヤー全般に、動きの悪さ、というかボールや人への寄せの緩さが目につくばかりで、ボールを手中にできずにいると、じきに水戸ペースになってゲームは進行。

北ゴール裏の同志チノ氏は……、

センターバックを含めたプレイヤーがサイドからの相手攻撃に対応すると、インサイドハーフ(ボランチ)がボールウォッチャーになってしまって、中央に侵入してくる相手をケアできていない、というご指摘。

なるほど、失点シーンもそうでしたが、水戸のインサイドプレイヤーには、すべて前に入れらていましたから、あれでは捕まえられない。

前半、佐藤も前も眠っていた、ということになるのか……。


〈じゃあ、後半はどうだったのか〉
ゲーム終了の笛がなると、水戸の何人かはピッチに倒れ込んだところをみると、山雅の攻撃圧は相当なものだったんでしょう。きっと。

けれど、小手川が多く捌いて、パウロ、パウロで侵入とクロスを繰り返す攻撃。

心躍ることは間違いないが、すくなくとも、山形戦ほどの脅威はなくて、チームへの落とし込みにしてもまだまだ未成熟。

これ、おそらくは、パウロを配することによって、彼を囮にしたチーム戦略、というレベルまでもっていかないと、山雅の武器としては、道半ば、でしょうか。

つまり、ロングスローがあるという脅威を、ロングスローを使わないことで活かす、そんな戦略。

たとえば、昨晩の水戸が魅せた、前線のプレイヤーの落ち着いた、俊敏な連動が加わってこないと、このリーグでは、とても相手は崩れません。

では。

試すに好機の水戸戦 (プレビュウ)

ホーリーホック、現在までのリーグ戦績は、勝ったり負けたりで 12位。

直近10試合は、2勝3分5敗で勝ち点9 (うち無得点ゲームが、5つ)。

山雅(勝ち点5)よりは、だいぶマシ。

けれど、決して芳しい成績でもない。
攻撃的であることを身上にしてやってきたチームなんだろうから、湿りがちな雰囲気は察せられる。

そうなると、中下位の順位にあるチームによる、それなりのゲームになるんだろうか、という楽しめない予感を打ち消そうとしているが、なかなか気持ちが高まらないで困っているのが、ホンネ。

そこで、敢えてこういう局面を観たい、というプレビュウになってしまう。

❶前節の山形ほどではないが、鋭いパスを縦に入れ、速い攻撃を仕掛ける。
どこからでも得点できるタレントが揃っているチーム。
― そういう見立てで戦うべきだろう。

その上で、こちらはそれを上まわる攻撃的な姿勢でやりあう、こういうのを観たいですね。

奮闘しているのは十分に承知しているんだが、河合 秀人を先発ではなくて、むしろ、ギアアップの切り札として、途中投入すべきと考える。

高い位置からの攻撃圧を意図するならば、3 – 5 – 2の、5のうちの3枚は、小手川、佐藤、前を並べてしまうのが、より強烈ではありませんかねぇ?

❷こだわりの証明として、工夫したセットプレイ(含むコーナーキック)を表現すること。
反則ポイントで、水戸はリーグワースト2位。
強度高い守備をしているとも言えるが、ファウルが多い。

ならば、被ファールで獲たチャンスを最大限に活かすことに専念したらどうか?

実際、水戸は、その失点の4割を〈セットプレイから〉していることでもあるし。

星 キョーワァンに、田中パウロのアシストでもって、頭で得点させてやりたいなぁ。

……と、今回は、どれだけ攻撃的な山雅になりつつあるのか、そしてどれだけ狡猾なセットプレイを仕掛けてくるか、ここに注目します。

では。

ふたつの顔 (2021.7.11山形戦レビュウ その❸)

ゲームとは、かならず相手のあること。

ゆえに、実際はそれほど単純な話でないんだろうけれど、あのゲーム、佳境(60分~)にさしかかったら双方が、まったく別のチームになった感は強烈だった。

攻撃のギヤを上げた山雅が一方にあって、そこに、モンテディオの足がとまったことが加味された現象、とするのがいちばん妥当な観方、と思う。

やりたい放題のサッカーが立ち現れ、それまでとは鮮やかに違った山雅。

ふたつの顔のこの落差……。

もちろん、後のほうの〈顔〉に期待するんだけれど、あの攻撃が時間限定であったり、失点を喰らわないと発動されない、というのだけは御免蒙りたい。

こうなれば、今週末のホーリーホック戦のみどころは、そこのところでしょうね。

〈裏切りを おおいに期待する〉
で、後半戦に一歩踏み入れた今、確認しておきたいことが、ひとつありまして。

結論から言うと、今季の山雅は、順位に正直な勝ち負けを重ねてきた。

リーグ戦勝ち負けの集積が、順位。
だから、順位は各チームの実力をおおかた表現しているはず。

山雅は、上位チームには順当に敗れ、勝利を、下位か同位程度のチームからしかモノにできていない。

すくなくとも、6位以内を確保しているチームには勝利がない。

チームがみづから新しい顔を刻んでいく過程を、上位に対し善戦した、ではなく、上位を喰い続けることで示してもらいたい、と強く望んでおります。

そういつまでも、最少失点の敗戦を喜んでもいられませんしね。

では。

たかが一蹴り、されど一蹴り (2021.7.11山雅戦レビュウその❷)


〈ゴールに軽重なし〉
失点は、山形の、ロングなカウンター攻撃からだった。

クロスのつもりで中に入れたボールが、ディフェンスに当り跳ね上がってネットを揺らす。

なんとも形容しがたいゴール……ってのも、ヴェルディ戦のデジャブでしたが、とにかくゴールに向かってボールを入れる勤勉さは大切です。

結果、なにが起こるかわからない、のですから。


〈効果を 定常化せよ〉

で、これから残り時間の中で挽回、となってくる。

その時、こちらがカウンター攻撃を選択するほどに、山形のプレイヤーたちに走るエナジーは残っていなかった、と診たんでしょうね、きっと。

そこで、みづからが前へボールを動かして行く戦略に振ろうと、先に入れた小手川 宏基に加え、攻撃的な切り札として、田中パウロ、平川  怜を投入した。

2センターバックが基底に残り、ボランチふたり(あるいは 小手川を含めて3人)を高い位置に持ってきて、といった布陣の下、徹底して左(パウロ)サイドを起点にする執着。

なりふりかまわぬ資源集中投下の姿勢、これも〈名波効果〉のひとつかも知れない。

パウロ、まるで水を獲た魚のように、動き回ってクロスやパスを供給しまくりましたから。

(ついでに言うと、大野 佑哉を最終ラインに入れ、星 キョーワァンをフォワードに配転するパワープレイを敢行。最後の最後までねじ込んだことも特筆しておく)

ゲームのどこかで、なけなしの1点で逃げ切ろうとして舵を切ったのか、山形は見違えたように運動量が落ちて、自陣に固まってしまう。

交代カードが切られるたびにチームとして迫力を失ったのは、当方の交代策が機能したのとは対照的だった。

― ゲームラスト3分の1のサッカーを、なんで最初からできないのかしら?

まぁ、たしかに正直な感想で、別のチームになった、と言っても良かった。

パウロを、これからも切り札とし続けるのかも、思案どころでありましょう。

要は、名波効果が、効果と感じさせないくらいに日常化するだろう、という期待が持てた一戦でした。

〈練習と実戦と〉
最後に。

押し込んだ結果として、雨のように降らしたクロス。

ここの精度がなんだこうだと、取り沙汰したくないのがホンネでして。

というのは、ゲーム前の練習を観ていると、シュートはほとんどが、ペナルティエリア縁の中央あたりから打っている。

ならば、そこへボールを到達させて打つようにするのが、練習効果の再現という意味では、もっとも生産性が高いのではないか、と思うわけです。

山形の守備ラインが下がりまくっていて、ペナルティエリアの外縁にはキレイに空きスペースができていたのだから、ここへ持ち込んで打つことにこだわってもよかったのでは?

ふだんから仕込んでいることをこそ、表現して下さいよ。

では。

0 – 1で負ける力 (2021.7.11山形戦レビュウ その❶)


向こうの西空に明るさが増して、低い暗雲が北へと動きだす。

すると、雨はあがり、静かな夕暮れがスタジアムに舞い降りてきた。

そんな中、ゲーム開始のホイッスルが響くとは、これは吉兆かな?、と思って観ていましたが、所詮、負けは負け。

けれど、そこに進化が感ぜられた敗戦だった、というのは決して強がりもないのです。
おそらくは、この感じ、スタジアムを後にする山雅ファン&サポーターの胸中に宿っていたのではないか?

〈プレビュウのハズレをご勘弁〉
カウンターの応酬となればシメシメのチャンスだろう、としたプレビュウとは、かなり違った様相の展開。

最初から飛ばしてボールを巧く動かしてくる山形に対し、前への突っ込みが裏目に出てはボールロスト。

あるいは、前傾をいなされてボールを深く運ばれる、といった歯がゆい前半。
特に、右サイドの下川と宮部は、加藤らに何度もサイドを割られて苦しんだ。

それでも、中に人数をかけて締めることで自由にさせない。

それと、山形のペナルティエリア侵入の特長は、単騎突入と見せておいてショートなパスをかませて仕留めるやり方なんだが、これら第2、第3の侵入者にも人が寄せてスペースを与えない。

藤田 息吹の左サイドでのボール捌きにも、なんとか喰らいついた。

……、そんなで焦れずに我慢し、終了近くになると次第に形勢をこちらにたぐりながら失点なく乗り切った前半、といえました。

ヴェルディ戦でも指摘しましたが、守備にまわった時、縦の列とともに、横の列のスライドをキチンと揃えてブロックを創り、相手の攻撃をこちらの思うところに導いていくような戦略を感じますが、いかがなものなんでしょう?

最後のところで身体を張る、ってのは当然大事なこと。

ですが、その前、相手の攻撃からテンポを奪う視点、そこに工夫をこらさなくては、痛恨の複数失点からは抜け出せだせないだろう。
で、ここ2試合は、そこに手が入っていることが実感される。

その結果としての、最少失点ではなかったか。

これ、まさに〈名波効果〉のひとつ、でありましょう。


さらに、特に守備的なタレントについて。

監督の途中交代という、苦しい2シーズンを闘う山雅ですが、新卒、あるいは20代前半のプレイヤーが、実戦を通じて多く抬頭し、ポジションを確保している姿、ってのは、新しい山雅の、象徴的な出来事として忘れてはなりません。

クラブとして、そういう面までようやくと手がまわる成長局面に入った、とも言えますが、現監督で、その傾向がさらに強まることを願っています。

では。