執拗さ を振り払え (ゼルビア戦プレビュウ)

〈 ブレイクスルーでとらえよ〉
先頃開示されたJクラブ2020シーズンの決算内容は、けっこう示唆に富む。

トップリーグから降格した1年目。
山雅は、チーム人件費を前年比76%にまでカット(減少幅リーグ最大)した陣容だった。

金額ではおおよそ2018シーズン並みでリーグ戦を戦ったものの、昇格に失敗。

主要メンバーが多く去った今季は、そこから更に減額してチームを構築していることは、ほぼ間違いない。

堅実な経営姿勢を採らざるを得ない市民クラブが、COVID-19禍をしのぐには、それが必然だ。

なので、〈山雅らしさ〉を過去のチームやスタイルから引っ張り出してきて、それで、現在のチームやゲームを測定して論ずるのが妥当であるか?

僕たちはそろそろ、そこを自問しよう。

今年を含めて3年くらいの未来から今を見通して語るべき、と思い始めていて、これを、山雅に関するブレイクスルー思考、と呼ぶことにした。


〈縮小と拡大、それぞれの現在地〉

で、実は。
山雅の緊縮策とはまったく逆の方向に向かっているのが、町田ゼルビア。

2020年のスポンサー入の対前年伸び率は 40%で、リーグトップ。
山雅の9億9,600万円(リーグ6位)に対し、9億3,700万円と猛追していて、今季はおそらく追い抜くと思われる。

また、チーム人件費は、前年比24%増加。
額自体は山雅の半分だったが、今季は、その差がかなり縮まっているはず。
補強したメンツをみても想像がつく。

チーム力曲線が、対照的に、下降と上昇を描く両者の昨シーズンの対戦成績は、互いにアウェイで勝ってホームで敗戦の、1勝1負。

その交差がより接近しているだろう今季、山雅にとってかなり厳しい対戦になるのは、もう火を見るよりも明らか。

6位町田、17位山雅、は偶々ではなくて、それなりの根拠あっての順位なのだ。

〈シンプルに執拗な 町田流〉
❶相手デイフェンスラインの裏へロングボールを入れ、競り勝ってシュート。

❷相手ペナルティエリアの縁あたりに味方の前線プレイヤが上がると、そこへ縦パスが入る。
と、それを駆け上がったボランチへ戻し、今度はボランチが前方へパスを供給。
テンポ良くダイレクトな、ワンツーワンツーを仕込むことで、相手ディフェンスを正面から切り裂く。

やることはシンプル、けれど、ドゥドゥ、鄭大世、中島、長谷川ら、リーグ屈指の屈強なフォワード陣が襲いかかって来るのだから恐ろしい。

事実、前節北Q戦は、ボール保持60%で、クロス21本、シュート18本と、相手の倍近くを繰りだしながら、無かったのは得点だけ、というゲームをした。
結果は、0 – 1 の敗戦だったから、2連敗回避を至上テーマで乗り込んでくる。

〈クロスで突破口を〉
こちらとても、3連敗はごめんであるし、守ってばかりいても勝利はない。

シュートへの切り口は、サイド侵入からのクロスが最も現実的ではないか。
データ的に、こちらが上まわるのは、サイド攻撃(それも左サイド)。
ならば、それに注力。
ただし、クロスに直接合わせる、というよりも、その跳ね返りやこぼれ球を押し込むことを念頭に、2列目、ボランチが厚く攻撃に参加、これでしょうね。

前がかりになった際にボールロストすれば、町田式の裏狙いロングボールが炸裂するリスクはあるけれど、とにかくは得点をめざしましょう。

良くも悪くも外山と河合と下川、それとボランチの奮闘に賭けるゲームとみます。

では。

マッチポンプの見苦しさ。

【ご報告】6/1、6/2の両夜、予告通りにISSが観られたことを、念のために。

会話の中でフト行き過ぎてしまうので、その意味を訊き返せないまま終わってしまう言葉が、けっこうある。

〈マッチポンプ〉は、そのひとつ。

みづからマッチで火事を起こしておいて、騒ぎになったら、やおら、ポンプ車で登場し、火を消してみせることをいう。

要は、自作自演の、偽善的なおこない、を非難する言葉だ。

聖火リレーを報じているTV画面を眺めていて、この風景こそがマッチポンプだよなぁ、と変に感心してしまった。

さぁ、どこどこで何日何時に走りますよ、と宣伝しておいて、さて、人が寄って来ると、今度は、密になるからご遠慮を、なんて言っている。

話題にはしたいけれど、そんなに集まってもらっても困る、というのは虫のいい話でね。

だったら、無人の沿道で、走者と報道だけが演ってギャラリイを当てにするな。

リレーを辞退するという報道があった時。

なんだよ、こんな連中をひっぱり出さないと演出できないの?、とその古ぼけた発想に、愕然とした。

どうもこのオリンピックは、冷笑に値する企画、ということで一貫している。

この先、どんな噴飯じみたことが待つのやら、それを楽しみにしている自分が、悲しくなる。

聖火リレーは、そもそもヒトラー政権が案出(1936年ベルリン大会)した。

ゲルマン民族こそ、ギリシア(=ヨーロッパ文明)の後継者であることを誇示、高揚するための演出として。

そのプロパガンダに、しかもヒトラーが蔑んだ、極東の黄色民族がなぜこれほどに血道をあげるのか、理解できない。

ここへ来て、COVID-19の感染増加で、リレーが中止に追い込まれているとか。

マッチポンプをやっていたら、ついに、自分のお尻に火が点くとは……。

では。

クラブに注文つけるなら (2020 決算開示)

去る3月、水戸に 0 – 3で敗戦した日。

京子さんのメールは、いつまでもいると思うなサポーター、といった内容。

以来、メールの中身が敗戦するとネガティブなのはもちろん、クラブ上層を責めるような論調が多い。

気持ちがわからなくもないが、フロント、と言われてみても、組織と機能分担も承知していないのでどこの部門のことやら、軽々に誰彼を批判もできまい、というのが僕の考え。

萬年は、せいぜい実戦の中から、称賛と批判の材料を拾うつもりであるから、話題を、企業としての山雅内部にまで及ぼすことはないだろう。

経営の舵取りについても、決算書(B/S、P/Lなど) から垣間見るに過ぎない。

要は、ゲームの様相、経営の通信簿、といった見映え(結果)で語ろう、という姿勢。
それを生み出した内部事情など知ってもいないのだから。

さて、先月28日付で、Jリーグが、傘下53クラブ(除く柏、湘南、磐田)の2020季の決算を(先行的に)開示した。

詳しくは、その資料をご覧いただくとして、

山雅について、いくつか触れておく。

❶営業収益(売上高)
昨季は、19億2,800万円。対前年では、 7億8,300万円の減少。
かなり大きな落ち込みだったが、この売上高は、リーグ第6位。

ゆえに、柴田体制となった後半戦の順位が5位だったのは、クラブ規模に見合った戦いをした、と言える。
もちろん、福岡、徳島が、山雅より約2億5,000万円少ない予算を使って昇格してみせたことを忘れてはなりませんが。

今季はリーグからの降格救済金がなくなるので、昨シーズンより厳しい予算組みと思われる。

❷チーム人件費
昨季は、10億9,000万円。対前年 3億4,000万円の減。
これは、リーグ第5位。
ただ、第6位の福岡から、京都、徳島の3つが、9億円台。
第9位の新潟が8億円台なので、山雅以下5クラブが、年俸計で団子状態。

ちなみに長崎は、人件費を前年比3億5,000万円アップ、リーグ3番目の予算をつぎ込みながらも昇格を逃したから、いわば、痛恨のシーズンだった。

昨季の人件費カットには、COVID -19のマイナス要素が織り込まれておらず、それが反映されるのは今年からと診る。

今季一新されたメンバーの顔ぶれには、昨季より厳しい人件費コントロールが潜んでいるに違いない。

だから、総体として低年俸のプレイヤーたちが、勝負に挑みながら自らの市場価値を高めていく、そういうシーズンでもあると覚悟して見守りたい。

最後に、京子さんのメールの、チーム周辺から人々が去る、という危惧について。
自分から勝手に惚れ込んだ熱が醒める、ということは、理由がどうあれ、なにも山雅という現象に限ったことでもない。

Easy come, Easy go (労せずして獲たものは失いやすい) 、とでも割り切って、見つめるしかないです。

くどくなってしまうが、COVID – 19の逆風下、発声による応援が禁じ手となり、いまだにそれに十分に見合う手法を開発できないでいるファンサポーターが、クラブに対して体制をああしろこうしろ、と言える筋ではない、と思う。

プレイヤーの気持ちを高める方法、装置をおのおのがもっと熱心に編み出しすのが先決。

文句を言うのは、それから。

では。

一期一会の決意 『Midnight Run』(1988年)

1980年代は、ずいぶん奢った、軽薄で恥ずかしい時代だった、と思っている。

おそらく、時代の恩恵をすこしも感じなかったヒガミが僕の中にあるからだ。

5月18日に、チャールズ グローディン (1935~2021年) が亡くなったとの報に触れて、思い出した作品が、これ。

マーティン ブレストの監督。

グローディンは、ここで助演の立場。

けれど、彼の演技があったからこそ、主演のロバート デニーロ(1943年~ ) が活きた。

ご都合主義的なシーンがあちこちにあるけれど、そこはコメディと割り切ってしまうとして、’80年代には迎合できない、無骨で不器用な〈男〉たちが描かれたところが、気に入っている。

それから、4年後にメガホンを採った『Scent of a Woman』でも、時代に取り残されて反抗する男(アル パチーノ)を描きましたね。

物語は……、
元警察官の主人公(デニーロ)は、出頭命令に応じない被保釈人を裁判までに連れ戻す稼業で、飯を喰っている。

そこへ、ちょっとひとっ走りの仕事 (= midnight run) が舞い込んだ。

麻薬王の金を横領して慈善事業に寄付してしまった会計士(グローディン)を捜し出して、NYからロスまで連行してくる案件だ。

5時間のフライトで戻ってくるチョロイ仕事のはずだった。

ところが、そこに人の欲望が入り混じってきて、四苦八苦の道中になってしまう……、ってのが粗い筋でありまして、

旅上、いまは、かつての同僚と所帯を持っている元妻の自宅に寄って、逃走資金と車をせびる、といったなんとも切ないシーンが織り込まれる。

で、ラストが、この映画の焦眉。

夜のL.A.空港。

連れて来た容疑者を解き放って旅を終えようとする、デニーロ。

『Take Care』と『See you in the next life』が繰り返される、男の別れ。

次の世で逢おう、とは、もう決して現世では逢わないだろうな、俺たちは、という決意。

そして、それぞれがまた、自分の孤独に戻っていく。

では、たとへセリフの意味がわからなくとも、感情の往来がわかってしまう名演を、エンドロールの直前まで、是非お楽しみ下さい。

 

ボールボーイに救われる (岡山戦レビュウ❷)

(相手)CKをもたらした下川のクリアミス、(上門に)かわされた米原のディフェンス、前のトラップミス。

これら失点につながった失策がことさら記憶に残ってしまうのは、山雅の戦い方に一貫性が感じられないため、と改めて気がついた。

― 支離滅裂(なサッカー)だったね。

昨日、出社するとすぐに、同僚からはこんな感想。
久しぶりに聴く四文字熟語が、妙にココロに響く。

❶左サイド、下川と外山のコンビネーションに格別の相乗効果が見いだせないのであれば、下川を右サイドバックに配し、左センターバックには常田を入れる。
で、佐藤と前でダブルボランチを構成すべきではなかったか?

❷ソネさんは、表原を使っても良かった、との感想。
確かに、突っ込んでいくタレントは観たい。
それには、その前段で、セカンドボール回収の、山雅流方程式を確立しなければ。

……、と戦術的なことを並べてはみるものの、問題はもっと別のところに在るように思えてしまう。

例えば、ファールで獲たセットプレイに向かうチームからは、どっちがリードしているのかわからなくなるほどの、切迫感に欠ける、なんだかだるい雰囲気が発散されるのであった。

最下位に落ちた際に騒いだ方々よ。

萬年の心象からすると、このチーム、更に沈滞しているように思えてならないが、いかが?

けれど、こんなゲームでも、感動を見い出さなければ、やり切れぬ。

終盤にさしかかった頃、多分、岡山側の蹴り出したロングボールがタッチラインを割った。

それを、パイプ椅子に腰かけていた(ように見えた)ボールボーイが、インサイドでトラップ、そのボールがダイレクトに山雅プレイヤーの手中に渡った場面があった(ように記憶する)。

本来ならば、手でキャッチしてタッチライン際に返球すべきなんだろうけれど、山雅のユースにはなかなかの猛者がいるんだ、と唸ってしまった。

気の効かない、相手に有利な状況しか生み出せない凡庸なプレイが続く中、ゲームに射した一筋の光、でした。

では。