カクテルとブランデー (北九州戦プレビュウ)

前置きをひとつ。

ギラヴァンツは、クラブ経営面で、J3断トツの、No.1 評価(2018年、2019年)を勝ち取ったことを、指摘しておきたい。(デロイトトーマツ社による「Jリーグマネジメントカップ」より)

これには、2017年に専用スタジアム(ミクスタ)を獲たことが大きく寄与しているには違いない。
けれど、専用スタジアムを手にしてもパッとしないクラブも在ることを思えば、やはり、経営手腕があってこその躍進、とみていいだろう。

戦績的にも、J2に復帰した昨季は9連勝(第7~15節)を達成し、リーグに旋風を巻き起こす。
後半、(おそらくは対策されて) 失速したものの、年間 5位を確保。

今季は現在22位と苦しむが、監督3年目、小林イズムも浸透しているだろうから、互いの順位など、まったくアテにならない対戦、と考えるべき。

【その中盤を無力化せよ】
4 – 4 – 2 を採用する北九州。
で、その運用とは……、
基底部では、センターバックふたりとボランチふたりが四角形を作り、そこから攻撃を始動する。

ボランチは、縦関係になるというより、むしろ、並列的に位置する。

サイドバックのふたりは高い位置をとる。

残る4人、つまり、アウトサイドハーフとツートップは、ほとんど横一線に並ぶようにして、攻撃に向かう。……、といった感じ。

チャンスとみれば6人が一斉に走り込んで来る攻撃を、覚悟しなければならない。

これを極端に表すと、その陣形は、カクテルグラス(向かって右)のような格好を呈し、とにか前線へとかなりの人数(=エネルギー)を投入するスタイル。

とすれば、山雅としては、ギラバンツの後方、その左右にできるスペースを自在に使い、ビッグスイッチ(サイドを変える)やクロスの多用することで、ペナルティエリアに多く侵入したい。

前線と、ボランチあるいはセンターバックの連携を分断できれば、その攻撃力を減衰しつつ、こちらが攻撃に傾けるチャンスを大きくできるわけだ。

いわば、カクテルグラスの脚部を長く間延びさせるようなイメージでしょうか。

対し、こちらは、ブランデーグラス(左の絵) のようにですね、中盤を厚く太く、かつ、前線にも人数をかける、って感じですかね。
しかも、背丈はずんぐりと。
つまり、全体を縦にコンパクトにしてしまうことで、相手のボランチの使えるスペースを窮屈にしてしまう。

ギラバンツのボランチふたり、例えば、永野、針谷は、22~23歳と若く、山雅であれば、米原や平川に似たり寄ったりの経験値。

対し、佐藤や前らは、技量と度胸の総体で彼らを上回っているだろう。
だから、ボランチ対決では、かなりのアドヴァンテージが有る。

攻撃のキレ味は、どうも相手に分があるようだ。
とはいえ、向こうよりも多く得点しないと勝ちは決してない。

ならば、ここは単純な話。

特に中盤で上まわることで、相手よりも多くペナルティエリアに入ってシュートに持ち込む、そういった割り切りで行きましょうよ、山雅。

では。

クラブ決算、つまみ食い。

Jクラブで、昨年度の決算が公式にリリースされ始め、そのいくつかを。

清水エスパルス。
興行収入で前年比4億700万円の減少だったが、責任企業の(要は、親会社ね) 鈴与様から、特別協賛金 !という名目で救済してもらった結果、3,800万円の黒字。
強化費は過去最高の、22億300万円だった。
これ、山雅の総収入(19億2,700万円)をはるかに越える。

それでいて、昨季、勝ち点28 (16位) か。
勝ち点1を稼ぐのに使った年俸が、ざっと7,900万円とは、贅沢な世界ですな。

大分トリニータは、11年ぶりの赤字転落。
二度と、地方政府にすがることもできないだろうし、厳しいな。

また、浦和レッズは、純損失で6億円の赤字。
特に、無観客興業などによって、入場料収入が前年比約19億円ダウンしたのが効いているようだ。
この減少幅は、ほぼ山雅の総売上に等しい。
絶大な集客力が、かえってアダとなった例。

社長は、親会社(三菱)による補填ではなくて、パートナー企業(よくわからん)の支援によって赤字幅を減らしたと弁明、それが本当なら大したもの。

さて、山雅。

県内メディアによる、決算に関する報道を、その文言から引用すると、

―シーズンパス購入者が、無観客となった試合などの払い戻しを辞退して寄付した金額が、約4,800万円余りに上ったことなどから、327万円の純利益を確保~ ―とある。

これ、― 寄付金などにより―、とあるから、間違いじゃあないんだが、
その4,800万円がなかったら赤字だった、とも受け取れる。
チト乱暴な論調ではあるまいか。

こういう部分の、ファン&サポーター ヨイショは、クラブが言うならともかく、メディアが軽々にそのままをなぞるもんでもない。

むしろ、決算書を、かつかつ300万円の純利益で着地させたことを分析して報道すべきでしょう。

では、また。

山雅らしさ、というゲーム。

たしか、25日の朝のこと。

家人が隣家へ出かけていって、中信エリアだけの新聞(読み終わったもの)をいただいて来た。

山雅の、鐵戸編成部長のインタビュウ記事が、お目当。

前日、京子さんからのメールでは、この記事について否定的な言及があったので興味が湧いたらしい。

おこぼれに預かって斜め読みした。

記者の執筆要旨が定まっていないことが(おそらく)原因で、記事の中身がちっとも腑に落ちないので困ってしまう。

ちょうど、毎朝15分やっている公共放送のドラマ主題歌、日本語で歌っているようなんだが、歌詞が頭の中で日本語として一向にたどれない、まさにあの感覚。

一体、どういう切り込みでマイクを向け、テッちゃんに何を言わせたかったのか?

どうやら〈山雅らしさ〉がキーワードらしいことはうかがえた。

スランプに陥った時におこなわれる、この確認作業。
山雅を取り巻く一帯では、キャッチコピーのごとく、ひんぱんに登場する。

  Gans  asks  What  makes  Yamaga   time  after  time.

山雅らしさ、が蒸し返されるのには、以前から食傷している。

それがいまや、自分探し、いや、あら探しのゲームの観ありで、笑える。

らしさ、の認定根拠はもっぱら、勝敗、順位という結果から導きだされるようだ。

となれば、ほとんどが情緒的な印象論ばかり。

数値としてのデータはほとんど示されない。

好不快、悦楽と落胆などの感情は否定しないけれど、その基準で仕事が一刀両断されるとしたら、ゲームをやってるほうは浮かばれないんじゃぁないか?

虹の彼方の理想郷、実は家に居た青い鳥、掬い取れない手桶の満月。
……、実体なき願望でないのか、自問するのもいいかもね。

ただ、このテーマについては、語れないこともなくて、らしさの根源はおそらく、〈後からやって来たアマチュア集団〉に在ることだけは確か。

たとえば、昨日リリースされた、2020年期 株式会社松本山雅の、最終的に黒字を確保した決算内容。

より詳細が公表されれば、そのやりくり上手に迫れるんでしょうが、流行り病の逆風下で、こういった通信簿を報告するところに、山雅らしさを観察できなくてどうするのか、とは思います。

では、また。

【群馬戦レビュウ❷】ゲームの中で加速せよ!

ゲームの主導権を、我が方に手繰り寄せること、についてなんです。

群馬戦では、それが観られて、たいへん興味深かった。

もっとも今季、ここについてはかなりのところまでは出来ているんだけれど、いつしか、 山雅=強者 の勘違いが湧いてきた結果、勝利(=結果) だけに評価基準を見い出すようなお歴々も多くなっているので、見落とされている点かも知れない。

勝ちを目指してやるんですが、では、勝利すれば結果オーライ、かね?

さて、群馬戦では、今季初、浜崎 拓磨が右アウトサイドハーフとして先発した。

アルウィンで浜崎が最後にプレイしたのは、2018年5月3日 (2 – 0 で山雅の勝利)。
この時は、水戸ホーリーホックの、左サイドバックとしてプレイした。

だから、3年ぶりのアルウィンのピッチだったのだが (おそらくは当初の予定どおり)、60分近くまでプレイして、表原 玄太と交代した。

ゲーム前半の山雅は、風下というハンディキャップもあり、群馬の最終ライン裏を狙って、ボールと前線のプレイヤーが一気に入り込んでいく策を敢行。

このため、浜崎自身は、スルーパスを空いたスペースに供給することを優先したためか、自らが突破していくシーンに乏しい。

観ていて、消極的な姿勢を感じさえするが、いやいや、初の公式ゲームだもんな、チームメイトとの連携もまだ手探りか、と、萬年、情状を酌量しておった。

ところが、後半が始まるとすぐに変化があって、右サイドを、果敢に駆け上がっていく浜崎がいたんですね。
ボールを蹴り出しておいて自ら侵入して、マイナスのクロスを河合 秀人に供給する。
あるいは、前 貴之、鈴木 国友と連動して左サイドからチャンスを創る。

前半から多くチャンスメイクした 左の外山 凌に負けじとしていたかどうかは、知らない。

けれど、ゲームの中では、こういった攻撃ギアのシフトアップこそが、流れを当方に引き寄せる要件のひとつであって、ブースト(加速)を起こすカードをいくつ持てるか、切れるか?
これこそ、今後の大きなテーマでありましょう。

とにかく、ゴールに直結するクロスボールと、それを演出するサイド攻撃に強力な駒がひとつ加わったことは、群馬戦の大きな収穫だった。

となると、第13節アウェイのアルビレックス戦(5/9)。

ただいま売り出し中、左アウトサイドを担う、MF 本間 至恩。

そのゲームで、彼を抑え込むであろう山雅の右サイド陣が、なんとも頼もしく、楽しみになってくるわけですな。

では。

強みで勝利 の方程式 (2021.4.25群馬戦レビュウ)

後半アディショナルタイム突入直後のコーナーキックからだった。

昨日のミスすべてを帳消しにするようなして余りある、センターバック 大野 佑哉によるゴールで、
1 – 0 の勝ち。

CKの跳ね返りを外山 凌がシュート。
その弾道を変えて、キーパーの逆をとって魅せた、阪南大卒による連携だった。

勝利はもちろんのこと、チーム不調の中、7,000人近くが参集することに感動を覚えたスタジアムでありました。

【中盤を制するために……】
群馬のスタイルを打破するためには、内田 達也と大前 元紀を自由にやらすな、とプレビュウで指摘した。
なぜか?
岩上 祐三(ボランチ)はもっぱら最終ラインに降りて起点になるから、そこからのボールを中継するボランチ内田と、前線から下がって来てボールを捌く大前のふたりに仕事をさせないことで、群馬の攻撃を不活性化できるからだ。

あとは、岩上からのロングフォードへ備えれば、万全に近い。

ゲームの主導権を、時間を追うごとに握れるようになったのは、この部分で成功したからに他ならない。
そのためには……、
❶前半から、群馬最終ライン裏へロングなボールを多用しそこに阪野ら前線の3人が走り込む。これを執拗に敢行して、その最終ラインを下げさせた。

❷左サイドバックに下川 陽太を配置。
それによって、左サイドの攻撃性がかなり増し、そこから群馬ディフェンスを脅かした。
こうすることで、浜崎 拓磨 という優秀なプレイスキッカー兼アウトサイドハーフ(右)を、外山(左)と同時に実装できるわけで、このゲーム最大のキモだったと思う。

……、結果、群馬の布陣は、最終ライン3人と前線5人の距離が間延びしてしまい、その間を内田と大前が必至で取り繕うみたいな、構図となる。

こうなると、そこの空きスぺ―スを、佐藤 和弘と前 貴之がかなり自由に使えるようになり、山雅の強みの根源である、中盤での制圧が実現した。

後半、久保田 和音が投入されると、大前は、より前線で仕事ができるようにはなったものの、残り時間が少なくなればどうしても、岩上からの起死回生的なロングフィードに依存する傾向となるのが、いわば、群馬スタイルの皮肉だった。

【ゲーム最大の殊勲者となると】
公式MVPは、ゴールを決めた大野なんだろうが、攻撃総体への貢献度でいうと、萬年が観るかぎり、阪野 豊史だった、と思う。

後方からのフィードを落してセカンドボールを手中にする回数と確率で、出色。

さらに前線からの追い込み(ファーストディフェンス)の率先的な実行、これには目を瞠るものがあったからだ。

同様に、鈴木 国友も前線でボールのタメと捌き処となっていて、得点こそなかったものの、その仕事ぶりは特筆したい。

勝利して、まづは安堵の結果。

攻守に切り換えの速い好ゲーム、といった耳ざわりのいい言葉が聞こえそうなんだが、悪く言えば、ミスが多く、ボールが行ったり来たりのせわしいゲーム。

この路線で行くのならば、当面の課題は、コミュニケーションとボールやりとりの齟齬の解消。
さらに、昨日の成果を、スタイルの異なるサッカーへ適用させること。
そんなところでありましょうね。

やたらと力と緊張を使ったスタジアムよ、とにかくは、お疲れさまでした。

では。