引き分け上等、魅せ場なし (2020.9.13 栃木戦レビュウ)

雨中のゲームは、追いついて、1 – 1 のドロー。

〈見出しのココロ〉
①あの内容じゃあ引分けも止むなし、②たとえ先制されても、引き分けに持ち込めるようになったね、というふたつの意味で、引き分けを、まぁ良しとしよう。

ある程度割り切って、田坂サッカーに付き合ったのは予想どおり。
4バックを採り、ポジション対抗の意識を高めておいて、たとえば、センターライン手前の位置からでも、フリーキックは単純にペナルティエリアへ抛り込むとか、ロングボールで相手最終ラインの裏狙いの長いボールを多用するとか。

ただし、栃木程度の得点力が乏しい相手ならば、多少は守備労力を軽くしてでも、もっと攻撃面に独自のアクセントをつけるべきだった、という意味で魅せ場なし、と断じてしまうわけです。

付き合っても良いが、どこかに突き放す策を耽々と仕込んでもらいたい。

〈攻撃における物足りなさに 手当を〉
特に、サイド攻撃にもっとこだわり(=反復性)が必要だったのと、ペナルティエリアまで侵入した時の、後方からの畳みかけ(=波状性と厚み)に欠けた。

もともと個人技ではかなりの優位性があるので、随所に魅せるプレイはあったものの、単発感が否めない。
あとひと手間とひと工夫の連動性不足が、かえってあぶり出された格好でした。

これは交代カードの切り方への不満に通じていて、あと2枚を残したのは大いに疑問が残ります。
例えば、①息吹に変わって、久保田を2列目の右に入れ、4 – 1(米原) – 4(セルジ―ニョ、阪野、杉本、久保田) – 1(服部)にする。
あるいは、杉本をボランチに落として、イズマを2列目に入れる(阪野と入れ替え)とかで、超攻撃的にしてしまう、なんてのを観てみたい。

②服部のところで、空中戦を担保するのならば、セカンドボールを手中にするために、地上戦に堪えうるメンツを衛星のように配置すべきであり、そのためには上記①くらいやってみてはどうか?

で、服部の運用ですが、彼が囮と化して、その外側にサイドバックが上がっておいて後方に収める、といった狡猾さも織り込んでしまいましょう。

……、以上、悲観的になる必要もないけれど、攻撃部分でズルさある深まりが要るでしょう、というレビュウです。

ただし、守備陣の成長が随所に見られたことは指摘しておきます、感嘆の声が漏れたくらいに。

では。

倍速の瞬殺,に立ち向かえ (栃木戦プレビュウ)

順位はともかく、甲府とは対戦成績でトントン、甲府が3バックを採用、ということもあって、このプレビュウは、第15節 栃木 vs 甲府 (8/30、1 – 0 で栃木が勝利)を下敷きに書いています。

〈栃木が 一気の瞬殺サッカーで来る理由〉
❶全員がハードワークしてゴールに向かうサッカーが信条であること。

リーグ最少失点は、単に田代 雅也キャプテンを中心とした最終ライン(4バック)だけの勲章ではなく、前線のファーストディフェンスから手を抜かないことの賜物なのだ。

❷(おそらく)昨季20位で土壇場ギリギリ残留したという危機感、攻撃力不足と個のクオリティなどからして、チンタラやって胸を合わせたら勝負できない、という田坂 和昭式の計算が在るはず。
なにせ、得点のほうはリーグで下から2番目。(ただし、攻撃回数では上位)
相手に合わせることなく、スキを衝いて攻め切るに限る、という判断だろう。
攻撃の様相はカウンターだが、受けて立ったところからでなく、圧迫し続けておいてボール奪取と反転、という感じ。

❸山雅ディフェンス陣の主力が、近年の栃木ディフェンスを熟知していること。

服部 康平は、2018年にほぼDFとして、38ゲームに出場。
2019年は、森下 怜哉が27ゲーム、乾 大知が19ゲームに先発だった。

手の内を知られていればこそ、考える余裕など与えず、むしろ処理しにくいようなボールを入れて、守備網に穴を開けにかかるのではないか。

……、こう書いてくると、田坂氏がかつてコーチであった(2016年)、どこぞのチームを描写している錯覚に陥るんです。

〈方向性を信じ、さらなる深化をめざせ〉
ようやくリーグ前半終了間際になって、まだフルスピードとは言えないけれど、山雅式が整って来た感あり。
前節山口戦での仕込みを無にすることなく、山口と同様、一途に向かってくる栃木をどうやって攻略するか?

❶ゲーム開始から、でき得る限り栃木の勢いに押されない工夫が要る。
イーヴンで蹴り込まれるボールのはね返りを手中にするには、ディフェンスラインとその前の2列目(ボランチ)間のスペースをコンパクトに締めること。
甲府は、5 – 2 – 3 の、2と3の間が間延びて、そのスペースを良いように栃木に使われていた。

相手を前に向かせない、となれば、当方も同様にロングボールを使ってもかまやしない。
ハッキリとした狙いで中途半端なボールを入れ、栃木DFを背走させよう。
バタバタと落ち着かない、忙しいサッカーにも手を染める勇気を持って、そのためのメンツを先発として配置するのが良い。

❷攻撃を厚くするためには、中盤でボールを動かながら人数を増し揃えていくこと。
だからこそ、それに挿し込むシンプルな攻撃も効いてくる。― これぞ、山雅式攻撃の眼目。
しかも、栃木の失点をみると、ショートパスからが、全体の40%。
ゆえに、長短のパスを駆使した攻撃がますます有効なのです。


それには、セルジ―ニョ、杉本、久保田、鈴木らをどういうタイミングと組み合わせで投入するのか?、ここが采配の妙でありましょう。

❸フォワードへの割り当てを綿密に。
それぞれの強みの発揮を含んだ仕事をハッキリさせ、ピッチで各自に与える時間的なプランを伝えるくらいに徹底しても良いのでは?

現在、チームトップスコアラーは塚川 孝輝(5点)。
彼の攻撃的なプレイスタイルの結果、とも言えるけれど、今節こそは、フォワード陣が、スコアを刻むことを望む。

で、ボランチは、アウトサイドハーフと連携して、栃木サイドバック(溝渕、瀬川)を封ずることと、セカンドボールの回収に、まづは、注力したい。

では。

喜ぶべきか、悲しむべきか?(2020.9.9山口戦レビュウ)

結果は、2 – 2 のドローであるが、その評価はどうか?

ゲーム後の、ヒーロー?インタビュウに、塚川 孝輝は笑顔まったくなしで対応した。

観ていて、その気持ちは痛いほどわかったけれど、やはり喜ぶべきゲームでありましょう。

だって、1 – 2 の逆転負けで終えていたら、さぞかしヒドイ日々と暮しだったろう。


たとえ苦笑気味の同点弾だったにせよ、塚川だって浮かばれないでしょうし。

〈喜ぶべき、今後につながる良点〉
❶ほぼゲームプランどおりに進められ、攻撃のアクセルを踏み込んだ直後に、先制点に手が届いた。

❷ゲームを通し、そこそこソリッドな陣形を保つことができた。
これは、最終ラインに落ち着きと、錬成がすこしづつ見えてきたのが大きい。

❸攻撃的なカードを投入すれば、相手陣形を緩め、その間隙を衝くことができるようになった。
72分、セルジ―ニョがダイレクトで阪野に出したパス、あれは秀逸のJ1レベル。

GKから2本のパスでシュートまで行くシンプルさが在ってこそ、波状的なパスで崩すやり方が活きてくる。
でないと、堅く守るJ2特有の守備網は、なかなか破れない。

❹(山口のような)攻撃的なチームとの対戦に有効な中盤の組み合わせにはメドがたったが、これを守備的(=失点の少ない)なチームとやる時、どうやって適合/変容させていくのか? ➡次節の栃木戦でテストだ。

❺トップを担う、ジャエル、服部、阪野、さらに高木 彰人。
それぞれの持ち味(強み)、スタイルが披露されてきて、前線に期待値が高まっている。
これは、チーム内理解度の総体が上がっている、と見るべきでしょう。
※2度ほど決定機を外してヒーローになり損ねた阪野の奮起にこそ期待!

……、なかなか調子の上がらないチーム同士の対戦という事情を差っ引いても、前半戦の終盤近くになって、ようやくわづかではあるけれど、布サッカー方式がつかめてきた萬年。

正直な現状認識(の発言)、チャンスを与える選手起用、ゲームプランと交代枠発動、これらについてはけっこう納得しています。

いままではなぞったようなデッサンであったのが、描線一本一本がしっかりと魅力的になっていく、そんな予感ですかね。

では。

正直者 と戦う覚悟 (山口戦プレビュウ)

〈追想に浸れば……〉
2018シーズン第6節、アウェイのレノファ山口戦を、読者はご記憶か?

2 – 0でリードしていた後半アディショナルタイムに、立て続けに2失点したゲーム。
いやでも今後長く語られるだろうけれど、山口の同点弾を叩き込んだのは、前 貴之だった。

その前は、今や山雅の主力メンバー。

他方、前節の対福岡戦、2年前に歯ぎしりさせてくれたイレヴンは、山口にはもはやひとりもいなかった。
監督が霜田氏であることを除いて。

更に、山口のワントップは、4年前に松本市内の牛丼屋で挨拶した小松 蓮(山雅からのレンタル)が務める。

……、サッカーを通じて噛みしめる、たった数年で起こった時代の変転だ。

〈あっけらかんのレノファ〉
小野瀬(➩ガンバ)、オナイウ(➩現マリノス)、佐々木 匠(➩仙台) といった強烈な攻撃的カードが去り、そこからチームを攻撃的に作り直すなんてのは大変な業。

2018年=8位、2019年=15位、2020年ここまで=22位、という下降曲線がそれを物語る。
それでも、安在 和樹、村田 和哉は目を引くし、レンタルをやりくりしながら戦っている様子。

福岡戦(と山形戦)を観る限りでは……、

走力と縦への速さをベースに、迅速にパスを繋ぐ。
長短のボールを織り交ぜ、最終的にはサイドを経由して、(多くはクロスの格好で)中へボールを入れて勝負、というサッカー。

こういうのを、〈外連味(けれんみ)のない〉というのだろう、ハッタリや誤魔化しもなく、正直に立ち向かってくるのだ。

〈要は、胸の合わせ方〉
直近2試合、山口は3バックを採用していると実況が語る。失点の多さを是正するため、としていて、守備陣形を5バックにして、相手ツートップに数的優位を演出したいんだろうか?

今節も3バックで来るのならば、抑えるべきは、攻守に忙しく、かつ、サイド攻撃の起点となる山口の左右サイドバック。
前節は、左=田中パウロ、右=田中 陸だったが、ここに安在が入る可能性が大きい。

❶前節、強烈なサイド攻撃、というテーマにそれなりの活路を見い出せた山雅にとっては、引き続きここの強化を証明する絶好の機会だ。

サイドの駆け引きを、老獪さでねじ伏せられる隼磨の離脱はこういう時、本当に痛いのだが、今ピッチに立てるメンツが〈若年寄〉の工夫でやり切るってもんでしょう。

❷ワンタッチ、ダイレクトで中盤を制したい山口に対し、その連動を絶つ。
それを、2列目のファーストディフェンスとボランチによる狩りによって。
ここが焦点。
守備力の観点からすれば、セルジ―ニョ、杉本、アウグストの同時運用が好ましい。

要は、すばしこい脱兎を、どこで捕まえるのか?
サイドに押し込んでなのか?

これは恐らく、布式ゲーム総体における力点の置き処から算出されると思うが、山口というチームには、〈ためる、我慢する〉という発想が希薄。
とにかく当初からフルギャロップであるし、今節はホームという環境であるからその傾向はより顕著のはず。
ゆえに、受けて立つなんていう手間はかけず、当方も冒頭から強烈に行くべきでありましょう。

ペナルティエリアが視界に入った時点でシュート、そこから逆算したピッチとパスの使い方で良い、と思いますがね。

偽悪者とまではいかなくとも、ココロに余裕と醒めた計算を秘め、正直なサッカーと対戦しましょう。

で、みづからも秋の空気の中、こころを冷ましながらゲームを待とう。

しかし、ジャズの名盤は、秀逸なジャケットデザインがセットなのが多い。

では。

懐かしい山雅なのか? (2020.9.05山形戦レビュウ)

PKの得点によるリードを守り切って、1 – 0 の勝利。

帰り道のざわめきには、
―追加点だよね、欲しいのはさ。
……なんて声もあって、それはまさにその通りなんだが、ゲーム采配として、みるべきものがけっこうあったのは確か。

〈割り切り、の高みへ〉
先発トップとして、服部 康平。
岡山戦レビュウでそういう起用を注文したのだが、まさにそう来たか。
流れからすれば、そうなると思ってはいましたが、山雅首脳、まさかこのブログ見てないよね?
プレビュウで指摘したように、むづかしくしないやり方を採るのならば、ひとつの必然なのです。

悩んだのはおそらく、ボランチの組み合わせ。
昨夜は、攻の米原、守の息吹でしたね。
米原は守の部分で、マークにウロウロする場面もあったが、まぁ及第点か。

サイドは、後半にシフトアップを仕込んでおいて、右は吉田と杉本、左は高木 利弥とセルジ―ニョでスタート。
山形は、右サイドの松本と加藤 大樹のセットが強力なので、どうしても山雅左サイドが押し込まれる展開になったが、我慢して良く対応した。

特に光ったのは、GK村山を中心にしたDF陣の出来でした。
相手にこちらの2倍のシュートを打ち込まれながらも、ハッキリしたクリアとボールカット、徹底したボールホルダーへの寄せと、最後の部分を譲らないこと。
プレイから迷いと逡巡が消えたのが、ゴール裏からも感じられる。
途中投入の乾 大知、ラインコントロールも無難だった。

終了まで10分を過ぎた頃から早々に、相手コーナーで時間を進めようとするなんてのは、最近の山雅にはなかった意思統一。
追加点を捨ててでも、ぶざまさを怖れずにやる執着、ってやつだった。

〈先祖返りじゃなく、前へ進め〉
割りきりと、ロングボール多用のスタイルってのは、何年か前の山雅を彷彿させる。
けれど、単に元の場所に戻らないクサビを打ち込まないと、最近の積み重ねと新生山雅が、無駄になる。
❶昨夜のフィールドプレイヤー先発10人の平均年齢は、公式サイトの年齢から計算すると、25.1 歳
そこにはレンタル組をやりくりする事情があるとは言え、世代交代は着々と進んでいて、これを止めてはいけない。

❷(萬年の中では必ずしもオーライではない、前半我慢で後半勝負の思惑を仕込んだ上の) サイドの活性化。
吉田➡前 貴之、高木 彰人➡久保田、の後半開始からのチェンジ。
さらに、70分過ぎ、杉本➡鈴木 雄斗の入れ替えは、かなり効いた。
これ、昨夜のゲームやりくりの眼目だった、としておきましょう。

徳島戦のように序盤に複数失点がなければ、このテコ入れは有効でしょうが、さて、この先、攻守をどうコントロールして勝ちに持っていきましょうか。

〈クラシカルで不思議なゲーム〉
―勝ったけれど、PKなのね。

スマホで速報を追いかけていた家人が帰宅してこうおっしゃるんだが、スタジアムで観戦してはじめてわかる様相は伝えきれない部分でありまして、
例えば、あれだけ特に左サイドから侵入された山形の攻撃ではあったが、そのボールの動かし、人の入って来方が、観ていて予測可能というか、馴染み深さを感じるんですね。
あぁ、こう来るだろうな、と素人目に納得できる。

クラシカルな攻撃、とここでは表現しますが、そうなると、守る側にしっかりと胸を合わせている、守れている、といったリズム感が生じるんですね、きっと。まぁ、防戦にはかなり必死ではあったけれど。

また、自身ゾーンディフェンスを採るチームであるからこその、ショートコーナーを徹底してくるところとか。

石丸サッカーは、テクニカルなあだ花を排除した実直さが際立っていて、対戦していて妙な安堵感を憶えておりました。

ひょっとしたら、こういうスタイルは、今のディビジョン2にあっては、稀有な存在かも知れません。

もっとダーティにやるか、もっとスカして真っ向から行かないで剥がす、ってのがトレンドではないか。(千葉の苦戦も、そんなことを象徴しているのかも)

山形との対戦を、しっくりとこなせた山雅。

よりシンプルに迷いなく、の方向は良いとして、さぁ、どうやって先を見据えましょうか?

で、最後に身内を斬ってしまうんだが、昨夜の入場者は、ほぼ2,500人。
最近の戦績に影響されたことが、顕著な数字ではある。

ということはだ、山雅ファンサポーターの諸君は、他者からはどう言われようとも、これから自らを他クラブに比して格別の存在とは公言はできない、がハッキリしたということです。

コロナ感染がよっぽど怖い、のなら別ですがね。

そういう意味で、昨夜のチケット代は、それに見合う授業料でありました。

では。