
― こないだ、2部リーグでミスジャッジが、あってねぇ。
― はいはい。そうみたいね、とレスポンスするところをみると、ほぉ、丹念に情報を集めていらっしゃる。
でも、一応は、ことの重さもあるから、家人に向かい少々レクチャーに及ぶことに。
J2第8節、モンテディオ山形 vs ファジアーノ岡山 (4/3 14:00~ )。
ゲームが開始して10分で、それは起きた。
山形ディフェンスからのバックパスが、あわや無人のゴールマウスに吸い込まれそうになる。
ゴールキーパーは猛ダッシュ、ボールがゴールラインを割る直前で、右手でこれを掻き出し、オウンゴールの難を逃れる。
すると、主審清水某は、GK後藤 雅明に対して、レッドカードを提示。
直後の間接フリーキックは無失点で乗り切ったものの、残り80分間、山形は、10人で闘うハメになった……、というのがおおよそのこと。
(註 : ゲームは、90分に岡山が得点して、1 -0 で勝利)
その後、Jリークは、ゲーム帰趨に明らかに影響を及ぼすような誤審があったことを認めた。
現時点では、今後の裁定、つまり、このゲームをどう扱うのか?、の決定が待たれるところ。
さて。
ゴールキーパーは(ペナルティエリア内で)、味方のプレイヤーが意図的に蹴ったボールを、手や腕で処理することはできない。
このキックを、ふつうバックパスと呼ぶが、たとえそれが後方からであっても、とにかく意識的に、意図して蹴ったものは、これを含む。
ゆえに、GKが手や腕で処理しまうと反則が宣せられ、相手側に、間接フリーキックが与えられる。
ディフェンスとGK間で、チンタラとボールを蹴ったりキャッチングをおこなうことで時間を浪費させないこと、それが、本ルールの主意。
ところが、JFA(日本サッカー協会)の競技規則12条には、
〈間接フリーキックが与えられるが、懲戒の罰則は与えられない〉と明記してるんですね。
このゲームの主審は、この条項を知らなかったのか、あるいは知っていてそれに従わなかったのか、とにかく、懲戒のしるしとして、赤いカードをキーパーに対して呈示した……。
この程度の見識の者が、こういうゲームで笛を吹くのはいかがのものか?、はともかくとして、僕が不可解なのは、2人の副審と4番目の審判の計3人は、この時、どう考えたのか?、ってこと。
皆でヘッドセットを身につけているのは、一体何のためなのか?
誰も主審が間違ったことに疑義を唱えなかったのか、或いは、抗弁された主審がそれを無視して自分のジャッジに固執したのか。
まさかとは思うが、全員が競技規則に無知だったのかも知れん。
そこら辺を、言い訳としてでなく、事実として、知りたいところです。
サッカーで、複数人の審判員でゲームを仕切ったり、あるいは、最近ではVAR(ビデオ アシスタント レフェリー)制度が導入されているのは、そもそも、一回こっきりの、やり直しがきかない一瞬のプレイを、独りで完全には判断かつ裁定できるのは困難と考える、つまりは、誤審も在り得る、という前提であるはず。
極端な話、サッカー審判は、性善説に則るのではなく、性悪説でジャッジすべきであって、シュミレーション(被ファールを装うこと) というものを想定していることが、それの証拠。
審判団にしても、互いのジャッジを、厳しく、批評的に判断すべきでは?
しかも、今回の案件は、ジャッジ基準の一貫性以前の、初歩的な部分。
こう考えてくるとですよ、大相撲の柔軟性というか、先進性が羨ましくもなる。
いまから半世紀も前からビデオ判定を採り入れてきたし、そもそも、行司軍配(勝敗のジャッジ)に対して、複数人の審判委員から〈物言ひ〉の申し立てができる制度とか、しかも、最終的な裁定理由が、会場に審判長から告げられること。
さらに、この〈物言ひ〉は、控え力士にも、発動権があるんですよ。
なんとも、オープン、かつ、民主的なことではありませんか。
あのゲーム、レッドカードの直後、山形キャプテン(おそらくは)の 南 秀仁はなにか未練そうに主審に話しかけたのがチラと観えたけれど、果たしてそれが、
― こういう時に、カードが呈示されるって、規則でしたっけ?、とかだと嬉しいんですが。
せっかくの解説者は、こういうジャッジの不可解にも、シビアに言及してナンボだと思うんですけれど、実際は、どうだったんでしょう。
レッドカードのお蔭で、皮肉にも、今季初出場できたのが、元山雅戦士の藤島 栄介だったのが唯一の救いでは、あまりにもお寒い話ではありませんか。
では。