若き熱情を うらやむの回。

職場で、ABEちゃんが、

― 萬年さん、『君たちはどう生きるか』どうです?  観ます?

訊くと、彼は、封切日早々、シネマ館の暗闇に座った、という。

特定の監督作品をお目当てにして、公開日に銀幕へと足を向ける。

こういう情熱を失って久しいので、ただただうらやましい、に尽きます。

で、自然と、話は、宮崎 駿の作品群についてへと、進む。

(ABEちゃんの称賛に水をさすことを、いささか遠慮し)

― 作画は丹念で丁寧。いい手腕です。

思うに、宮崎さんは、アニメーションを通じて、自分なりの〈神話世界〉を創り出したいんだな。

年代、場所、文化的な細目を、それとなく示しながら、実は作品毎、一切不明な設定にしてるのが、その証拠。

だとしたら、〈風の谷のナウシカ〉があれば、
それからあとは、仕事本来の意味では、要らない。

もちろん、大所帯を食わせる、という渡世の必要は認めます。

それと、既に一定の地位を獲たタレントを声優として使う手、ってのは、どうもねえ。

もっと、違うチャレンジがあっても、いい。……、などと、僕の持論を披瀝した。

でも、もちろん、稀代の優れたアニメーターですよ、と付け加えて。

さらに、『君たちはどう生きるか』(by 芳野 源三郎 1937年刊)と、映画が、どういう関連があるのかは知りませんが、

あの小説は、一見、進歩的な顔をしているけれど、実質的には、当時の上流出身の少年を、戦時体制へと思想的に組み込んだ役割を持ったことを、チト、言っておきたいね。

ABEちゃんには、これらが、オヤジの言いがかりにしか聞こえないだろうし、

もちろん、それでいいんだが、

こういう会話が、世代を越えてできること、そのことに感謝します。

では。

肩に天使が 舞い降りた。

Engel On Our Shoulder……

映画『セイヴィング プライヴェイト ライアン 』(ライアン二等兵を救え、1998年公開、米映画) の終末。

プライヴェイトとは、米軍における、新兵の次くらい、つまりは、最下位の階級名。

ひとりの母から息子4人すべてを戦争で奪ってはならない、といった米国式信念による作戦とはいえ、

優秀な猛者ぞろいの小隊をまるまる、ライアン二等兵ひとりの発見と救出に投入することに対する、兵士間に漂う、わだかまりみたいな空気感が、

巧く伏線として描き込まれているので、それだけ最後に、カタルシスが用意されている、といったシカケ。

スピルバーグ作品ほとんどが持つ、こういうサーヴィスは、いいですよね。

さて、そのラストシーン。

ドイツのティガー戦車を前にして、壊滅寸前に追い込まれた分遣隊の頭上に、

突如、友軍のマスタングP-51 が飛来して、ティガー戦車を撃破すると、

負傷したミラー大尉(トム ハンクス) が、その機影をやっとこさ見上げて絞り出すのが、冒頭の言葉でした。

ネイティブスピーカーに確かめたわけではありませんが、

天使がそばにいてくれる、という定番的な表現なんでありましょうか、あれ。

で、萬年の場合。

去年に比べて、ニジュウボシテントウ虫による、ジャガイモの葉の侵食が極端に少なくて、まことに助かっているんですけれども、

これ、ナナツボシテントウ虫が多く発生して、それら食害虫を捕食してくれているからなんです。

葉の上、梅雨の陽光の中、くっきり鮮やかに輝く深いオレンジと、漆黒の斑点よ。

あぁ、まるで、天使のようだ……。

註 ☞ ニジュウボシは植物食、ナナツボシは動物(昆虫)食。

では。

無題。

ほぼ麦秋の候。

麦秋も近い季節。

小津 安二郎の撮った作品では、

カメラは、人の腰からすこし下の高さに、ずっと固定されていて、

役者は、そのフレームの中を、

右から左へ、あるいは、奥から手前へと動いて演技する。

封切られた当時、それを観た日本人は、作品に描かれたことを、どのくらい身近、というか自分たちの生活に近い、と実感していたんだろうか?

めったに声を張り上げもせず、極端な生活を過すこともなく、そこには劇的なドラマもない、そんな生き方を。

昔の作品に触れるたび、最近は、そういうことがヤケに気にかかってしかたがない。

では。

燕(つばくろ)と 季節の憶え。

つばくろが   フットボールの芝   掠(かす)め   by  萬年

3月16日 ふたたび、ツバメが飛来。

3月23日 辛夷(こぶし)、開花。

3月24日   春雨の中、盛んに開いたフキノトウを、いただく。

相方を失ったキジバトは、今も、一羽電線で啼いている。

季節の憶えとして。

では。

何度もここに戻って来る『ディアハンター』(1978年)


(版権帰属先: オフィスウエストウッド)

一昨日、職場で、すれ違いざま。

清掃スタッフのご婦人が、

― 今度、(たしか)シネマライツに、ディアハンターがかかるらしいですよ、と声をかけてくださった。

― ほう、それで、観にいらしゃるんで?
無垢な青年たち、特に、デニーロとメリル ストリープ、いいじゃあないですか!!

― わたし、あのロシアンルーレットの場面、もう耐えられなくって、ダメ。

きっといつだったか、この作品を、この御方と話したんでしょう。

が、覚えがない。

でも、忘れずに注意を向けてくださるなんて、実に、嬉しいこと。

ちょうど一年前、僕は、作品の末尾で歌われる、ゴッド ブレス アメリカを紹介しながらこの作品について書いているので、その頃、お話ししたのかも知れません。

今回は、サウンドトラックで、カヴァティーナを聴いて、この冬を送りましょうか。

では。