若き熱情を うらやむの回。

職場で、ABEちゃんが、

― 萬年さん、『君たちはどう生きるか』どうです?  観ます?

訊くと、彼は、封切日早々、シネマ館の暗闇に座った、という。

特定の監督作品をお目当てにして、公開日に銀幕へと足を向ける。

こういう情熱を失って久しいので、ただただうらやましい、に尽きます。

で、自然と、話は、宮崎 駿の作品群についてへと、進む。

(ABEちゃんの称賛に水をさすことを、いささか遠慮し)

― 作画は丹念で丁寧。いい手腕です。

思うに、宮崎さんは、アニメーションを通じて、自分なりの〈神話世界〉を創り出したいんだな。

年代、場所、文化的な細目を、それとなく示しながら、実は作品毎、一切不明な設定にしてるのが、その証拠。

だとしたら、〈風の谷のナウシカ〉があれば、
それからあとは、仕事本来の意味では、要らない。

もちろん、大所帯を食わせる、という渡世の必要は認めます。

それと、既に一定の地位を獲たタレントを声優として使う手、ってのは、どうもねえ。

もっと、違うチャレンジがあっても、いい。……、などと、僕の持論を披瀝した。

でも、もちろん、稀代の優れたアニメーターですよ、と付け加えて。

さらに、『君たちはどう生きるか』(by 芳野 源三郎 1937年刊)と、映画が、どういう関連があるのかは知りませんが、

あの小説は、一見、進歩的な顔をしているけれど、実質的には、当時の上流出身の少年を、戦時体制へと思想的に組み込んだ役割を持ったことを、チト、言っておきたいね。

ABEちゃんには、これらが、オヤジの言いがかりにしか聞こえないだろうし、

もちろん、それでいいんだが、

こういう会話が、世代を越えてできること、そのことに感謝します。

では。