溺愛を誇る。

シャーリー ホーン (Shirley Horn 1934 ~ 2005)は、僕が、批評を棚上げして聴く音楽家のひとり。

さっきまで家事をやっていたご婦人が、フッとピアノの前に座って、今度はジャズを歌い出した、という感じがなんともいえない。

もちろん、シャーリーの実生活を知っているわけでもなく、知りたくもないけれど、いかにもジャズやります感が、皆無。

それでいて、独創的で、逝ってしまった過去をいつくしむ感傷、そんなのが詰まっているんだから極上。

ビートルズのナンバーもいくつかカヴァーしている。

『Yesterday』も捨てがたいけれど、ここでは、『And I Love Him』(原曲は Her) を。

では。

こころ静謐に 『Blackbird/I Will』

― きのうまでの、氷雨。
これで、雪でも降れば、もっと静まっていいんだが
葉が落ちて  たたでさえ明るい、冬の森
見上げれれば  蒼穹は高く
あとすこし経てば 山脈の上 サッと朱色を引いた西の空には
宵の金星が 輝きを増すことだろう

季節に色をつけるとしたら、冬は、青。

この季節はまた清潔でもあるから好だ。

けれど、寒さに負けて安逸に過ごしがちなる。
気をつけなければ。

流行り病を口実にして先延ばしのことにも、手をつけないと。

さて、スイングル シンガーズによる、この対位法的、ポリフォニー構造のアレンジは、グループ定番のひとつ。

原曲は、ビートルズによるふたつの曲で、
通称『ホワイトアルバム』(正式タイトルは The Beatles、1968年発表)の同じ面に、5曲離れて置かれている。

オモチャ箱の中から、つつましい曲想の2曲を、選んだってことか。

今回、新しい趣向で動画がアップされたので、聴いてみる。

加藤 和彦(1947~2009.10.16) は、
無人島にたったひとり行くハメになったなら、このアルバムを持っていく!、と語っていたけれど、いまごろ天国?で、この曲たちを聴いているのかしら?

では。

だから前を向く(長崎戦レビュウ 後編)

自分で撮った画像を、改めて見ていて気づく。

ゲーム当日の北ゴール裏には、急ごしらえの横断幕が在ったことを。

ホンネを包み隠さず話してほしい、
2年で3回の監督交代、3年の急降下の検証を、
松本への熱いハートを表現できる人々と共に戦いたい……。

なるほど。
気持ちがわからないでもないな、って感じでしょうか。

プロスポーツにとって最大のファンサーヴィスは、勝つこと。

だから、勝ち抜くための構想や手順など、非公開でもかまわない。

結果は、ゲームであからさまになり、ファン&サポーターは、それをどうこう言って過ごせばいいんだから。

ただ、ひとつ。

松本への愛と執着を求めるのであれば、そう仕向けることこそが、ファン&サポーターの仕事、とは思いますね。

模範は、求めるのではなく、まづは示せ。

チーム一同がスタジアムを一周する際、メインスタンドからは怒声が数回(おそらく同一人物) が湧き起こった。

ああいうの、少なくとも僕と少年らの居るアルウィンでは、やめてもらいたい。

で、北ゴール裏の前方で掲げられた或るゲートフラッグを見たとき、その発想と姿勢には、ずいぶんと同感を覚えてしまった。

〈待ってろ J2〉……。

前をむかなきゃな。

では。

ラヴソング で行こう『Hazel』(by Bob Dylan)

『プラネット ウェイヴズ』(Planet Waves)は、

ボブ ディランによる、1974年発表のアルバム(スタジオ録音)で、僕が、唯一所持している、ディランもの。

ホンネを申せば、バックを演っているのが、ザ バンド、というだけの理由で手に入れた。

もちろん、その演奏は、抜群。
自在にして、重厚、かつ、繊細でロマンティック。

期待を裏切らない。

出過ぎず隠れず、ボーカルを入れやすい配慮が各所に施されている。

録音を、1973年11月2、5、6、9日の4日でやってのけていて、米英市場ではけっこうなセールスを上げたようだから、コストパフォーマンスに秀でた1枚なんでしょう。

ただ、惑星の波、なんていう訳のわからんタイトルはいただけない。

当初は、Love Songs が予定されていたようだ。

並んだ曲はみな、ラヴソングなんだから、そのままの題名で出しておけば、もっと売れているはず、おそらく。

世評は知らないけれど、ディランというシンガーは、あくまでラヴソング作りの名手、というのが萬年式の評価。

でもねぇ、曲自体は良いんだから、もっと素直に、作らずに歌唱すればいいものを、ディランって人は、何を真似ているのか、どう聴かせたいのか?、変にこねくって歌うんで、そこが好きになれない。

演歌歌手が、妙なコブシで魅せようとする悪癖に似ていますな。

仕方ないので、もっと肩の凝らないようなカヴァーを探す、なんてことになる。

『Hazel』は、アルバムSide1の 4番目にある曲。

― ヘイゼル、パッとしないその金髪
でも 君と一緒にいられれば 誇らしいんだ
僕の求めるものを多く与えてくれる 君
あぁ、そのチョッとした君の愛し方さえも。

ヘイゼル、君の瞳に浮かぶ星屑
君の行くところに 僕も行こう
頭上の空のすべてを 君に捧げよう
あぁ、君が愛してくれることへのお返しに……(以下、略)

個人的な格言として、

ザ バンドは、凍てつく冬に聴くに限る。

では。

降格論❶ ―存在価値から始めよ ―

かなり不満足なゲーム (単に勝てなかったからではない) だったけれど、相模原まで往復した価値は、やはり、在ったと思う。

ゴール裏の芝生席では、

ため息、ポッとこぼれる感嘆や感想、はたまた、同好の者同士の挨拶。

アウェイならではの、聞かずとも耳に入ってくる、そんな言葉には、ずいぶんと考えさせられましてね。

さて、と。

第42節を残し、仕事の仕上げをば、最後まで確かめることはもちろんだが、ここしばらくは、いろいろと喧騒が予想される。

だからこそ少々、萬年式の、来季に向けての生活と意見をば、〈降格論〉としてその都度、綴っておきましょう。

29日付けの公式サイト。
神田社長による、支援者へのメッセージが掲載された。

たかが一文に過ぎないけれど、降格がけっこう重大なことであるからには、SNS上で、それについて覚悟を発信しておくことは必要だ。

こういう事態だと、リーダーは、なにをやっても、あるいはやらなくても、なにかしらの批判を受ける、ってのは世の常。

中には、多分に悪意と発信者の無智と低能をさらしたようなものもあるが、そこは謙遜を装ってでも、上手くやり過ごすことです。

真摯で、建設的な、傾聴に値するご意見は参考にする、といった態度で。

で、メッセージの内容。
この度、降格、という大背信を犯してしまいましたが、ご支援を得られる方向で挽回を図っていきたい。ついては、引き続きご支援を願いたい……。

ま、こんなもんでしょう。

その中で、松本山雅のクラブ理念、そこへの言及があったので、かなりホッとした。

降格という、喜ばしくないことを、あくまでクラブの存在価値を見つめながら、今後の舵取りやら、舵切りをおこなう、これが相当に大切。

逆風の中でこそ、あるべき自分の姿を、まづは外さない。

そこからスタートでありましょう、ね。

地域の中、ここまで拡げてきた風呂敷をたたむ必要はないし、今さらたためやしないんだから、なにをやるにしても、そこがキモです。

ひとつの企業としてのマットウな経営/事業運営と、街に開かれたスポーツクラブ。

ふたつの要求を調和させること、その手腕に期待します。

街に開かれた、というのは、例えば、
フツーの年配ご婦人が、相模のゴール裏で、

―サッカー人生を賭けて戦っているのかね、あなた達?
こんな試合をやっていたら、どこからも声なんかかからないわよ!、
と、まるで身内に言うようにつぶやける、ってこと。

あるいは、自分らの仕事が平気で批判され、ビールをかっ喰らったじじいにヤジられる。

そういうのをひっくるめて、愛と思えるか?、客商売として。

昨日の朝、職場でバルサファンのクレ君が近寄ってきて、やおら、
― 来季は、またチャレンジですね。

単刀直入に、ソッと切り出すところが、彼の良いところ。
で、こう返しておきました。

― そう、まづは、戦力の確保。
そしてねぇ、J3では、またひと味違ったサッカーになるだろうから、その水に巧く適合することかなぁ。

ちなみに周囲には、
― しばらく前から、J3優勝をシュミレーションしてるんで―、とかなりマジメに広言しているので、いろいろとイビられますがね。

相模原戦の行き帰りの車中。
たまたまサイモン&ガーファンクルを流していたんですが、今は、エヴァ キャシディのカヴァーによるこの曲を……。

では。