美は、滅びゆく者の側に存す。
新興勢力が成熟した端正な美しさで魅せる、なんてことはあまりない。
Jリーグでやっと9年生の松本山雅は、だから、その稀有な例だ。
映画『デリンジャー』(Dillinger、1973年米)は、秋の東京で観た。
ウォーレン オーツ(Warren Oates)も ようやく主演を獲ったか……、
そんな感慨と一緒に暗闇に座った萬年。セーターを着ていた憶えがある。
1930年代の米国。
銀行強盗を繰り返す青年ギャングの群像を、その末路まで描き切った作品。
上映時間107分にまとめたのは、監督(脚本も) ジョン ミリアス(1944~ )の手腕。
ミリアスは、『ダーティハリー』『地獄の黙示録』のシナリオも手掛けている。
ギャング一味のひとりとして、ハリー ディーン スタントン(Harry Dean Stanton)が出演していたのだが、萬年の記憶からはまったく消し飛んでいた。
田舎の道端で、農民たちによって無様にトドメを刺される役柄。
そのギャングと、『パリス テキサス』(1984年)の冒頭、埃まみれで現れる髭面の中年男(主人公)とは、僕の中で、つい最近になって結びついたわけ。
(『エイリアン』(1979年米)で、機関士ブレットを演じたハリーに馴染みが多いかも知れない)
ハリーはまた、歌手としても堪能だった。
かつて沖縄戦に従軍した彼は、2017年に91歳で亡くなったが、その歌声を聴きながら偲んでいる。
では。