手段を選ばないサッカーと (サンガ戦プレビュウ)


16日間で5ゲームを消化してきた夏の連戦も、今節で一区切り。

気がつくと、リーグ戦も 3分の1 を消化する。
残りは、 3分の2 なのか……。

サンガスタジアムby京セラ への遠征は、今季いちばんの楽しみだったが、残念。
海老茶色の阪急電車も懐かしい。

〈サンガは手段を選ばない〉
さて、前節の対新潟戦をすこし観た。
そのサッカーは、ザックリいうと、
目的のためには手段を選ばないサッカー。(もちろん、良い意味で)

3 – 3 – 2 – 2 のシステムを採用。

守備の時は、5 – 4 – 1を形成し、左右サイドバックが猛然と出てきては、ボール奪取の起点を作ろうと連動する。

テクニカルかつ俊敏にパスをまわしながら、最終ラインやボランチから果敢な縦パスを通して攻撃を発動。

かといってボール支配にこだわるでなし。

前線にボールがはいると即、前を向いてゴールに向かい、どこからでもシュートを放つ。
ゲーム当りのドリブル回数は、リーグ 2位だ。

チームトップスコアラーのピーター ウタカはここまで 10得点、これは山雅の総得点と等しい。

先手先手の局面の中プレイするから、ファールが少ない。
(反則ポイントの少なさは、リーグ5位)
……、といった容貌。

つまり、手段を選ばない、の真相は、
チームとしての決め事はあるんだろうけれど、それを感じさせないほどにどこからでも、どこを使ってでも、場面場面の最適な手段を瞬時に採用して、攻め上がる、というスタイルのこと。

みずからのサッカーを、どうのこうのと定義せず、ボール長短、パス長短を窮屈に規定することもないがごとくに、ゴールに向かう。

なんと新鮮で、自在なサッカーではないか。

これを、安藤 淳のキャプテンシイ下でやっていた。


〈総力戦ができるサンガ〉

さらに、新潟戦は、前節から先発を9人変えて臨み、アルビレックスを翻弄して自分のサッカーをさせなかった。(結果は、先制したものの、1 – 1のドロー)

誰が出て来てもおんなじサッカーをやる見本で、これには驚嘆。
チームとしての意思統一がゆるぎないあかし。

〈あれもこれもでは 墓穴を掘るぞ〉
毎度のことになるが、相手の出方にあまりに対策的、かつ、ナーヴァスになったってしようがない。

我が強みの発揮に集中すべきでありましょう。

今や、山雅の強みとは、相手の力を削ぐ、相手の弱みを最大化することではなくて、いま在るタレントと連携を最大限に表現して攻撃を仕上げること、に変転しているのでは?

具体的には、京都3バックの両端のスペースに、こちらのサイドバックが何度侵入して、どれだけのクロスを浴びせられるのか。
あとは、中盤の、ボランチのところでボールの回収と奪取で先手を取れるのか。

―これくらいを徹底して、前を向いてボールをさばく時間を長くすること。

消極的なプレイはとにかく捨てて、果敢に挑む道を選ぼう。

上手くすれば、勝利の女神の前髪くらいは、つかめるかも知れない。

では。

傑作が 三つもあれば 大威張り

レオン ラッセル (1942~2016) のことを言っている。

『Superstar』(1969年)
『A Song for You』(1970年)
『This Masquerade』(1972年)

レオンが、半世紀前の当時、立て続けに紡いだ曲がみっつ。

これらは、カーペンターズ(1969~1983) が採りあげたことで、こうまで世に知られる幸運を得た。

他にも多くカヴァーされて来たし、これからも、聴かれ続けるだろう。

この3つの楽曲を創れば、ソングライターとしては十二分な仕事で、大威張りってもんでしょう。

8月12日で 66歳になったパット メセニイ (Pat Metheny、ギター) が、This Masquerade をなんとも元気に演っている。
メンバーそれぞれの持ち味が、なんとも良いね。

ヤマハは、トロンボーンも作っているのか?とか、楽しんでいる。

では。

〈コメント〉
☞つー さん より  (8/21 16:57)
三つの恐怖百まで。
三つの傑作曲から、何故か全く関係のない三つの映画の恐怖シーンが浮かんだ。
ひとつは、1954年公開の「ゴジラ」本田猪四郎監督によるゴジラ映画第一作目だ。黒白映画の効果もあり、そのゴジラは恐怖の象徴として完璧な姿をしていた。
その中に、夜行列車を襲うシーンがある。ゴジラによって宙吊りになった列車から人々が墜落していく、このシーンが異常に脳裏に焼き付いている。
次が1963年、同じく本田猪四郎による「マタンゴ」無人島に漂着した若者が、キノコを食べてキノコ人間になると言う、いたって真面目に作られた映画だ。佐原健二、土屋嘉男、水野久美らの名演技で実に怖い映画に仕上がった。二度見に行ったが二回とも余りの怖さで途中退場したという曰く付きの作品だ。
併映されたのが若大将シリーズだったので、その明るさのギャップでより怖く感じたのかも。
そして、最後が岡本喜八監督による1967年公開、「日本の一番長い日」だ。
その中で、三船敏郎演じる陸軍大臣阿南惟幾が、8月15日、敗戦の責任を取り割腹自殺をするシーンがある。子供の私にとっては余りにもショッキングなシーンであった。
子供の頃好きだった、若大将シリーズ、植木等のサラリーマンもの。2作目以降のゴジラ映画、駅前食堂シリーズ、社長シリーズ等の面白さの裏で、時折脳裏によぎる恐怖の3シーンではありました。
では、また。

☞萬年より  (8/21 19:16)
思うに、〈南海の孤島〉という設定が恐怖のベースにあるんじゃあないでしょうか。
これらの映画が作られる、ほんの20年前には旧日本軍の兵士が飢えをしのいで彷徨った、という因縁も当時は生々しかったのでは?

社長シリーズかぁ。
森繁のアドリプっぽいセリフ、三木のり平演ずる、右顧左眄の中間管理職など、ジョークのなんとも言えぬスピード感が堪りません。
好色な男たちを軽くいなす女優にも恵まれていましたね、当時。
では。

順当な敗戦 (2020.8.19ヴェルディ戦レビュウ)

後半60分過ぎになって失点が積んだ結果の、0 – 3 の負け。

―もう、スイッチ切らない?
と家人が言うも、ゲーム途中でスタジアムを抜け出すようなことはできません、と思いつつ、画面を眺めていた。


註: ヴェルディの旧エンブレム

〈予期せぬ勝利を望んだが〉
「守備に徹し、より長く耐え続ければ、ひょっとしたら勝ちが転がり込む」とプレビュウに書いたが、まるで、それをなぞったような展開。

ボール保持率は、70:30くらい、はもちろん織り込み済み。
(観ていて心地よくはないがね)

後半の後半になって、陣形がルーズとなり、守備が硬直化したところを次々と衝かれた。

前々節ヴェルディは、福岡に3 – 1で勝ち、山雅はその福岡と前節やって、やっとこさで 1 – 0 に持ち込んだ。

以降、山雅の戦力と戦略事情、そのクオリティにはそれほど変化はない。

となれば、策が実らずにヴェルディに混乱を与えられなければ、3失点は覚悟する、ってのが萬年式予想だったわけ。

 

攻撃では凡戦、力尽きて敗戦、と潔く認めてしまったらどうか、と思っている。

〈不発に終わった対策
キッチリと守備網を敷いて、粘り強く反転カウンターを狙う。
前半は、これに終始。
トップ3人、セルジ―ニョ、アウグスト、杉本、この3人が時折ポジションを変えながら守備に汗をかく。―  想定通りの進捗でした。

後半開始から、フレッシュな3枚を投入して、より攻撃的なサッカーに転換。

すると、ヴェルデイのボール保持にかげりを生じさせ、ヴェルディ陣内へ押し込んでいく場面も増加した。

こういうシフトチェンジは、山雅の力量と相手の混乱と修正力からして、だいたい15分間が有効、というのが、いままでの傾向値。

なので、この時間帯に得点を、というのが山雅陣営の目標だったはず。

要は、この策が叶わなず、攻撃が尻すぼみになったこと。☜ここが最大敗因。

あぁなれば、あぁなるわな、という順当……。

そういう意味で、現状山雅サッカーの出来不出来は、まっこと、わかりやすい。

〈カードの配置について〉
さて、このギアアップ策は認めるにしても、出し入れするカードには (準備も含めて) 疑問が残ったので、それを書きとめる。

ボランチには、塚川を残し、昨夜は米原を投入するか、あるいはアウグストを当てるべきだったと思う。
要は、攻撃的な守備ができるカードで臨まないと、ヴェルディの中盤と張り合えない。
(塚川の被カード、アウグストのフィットの問題は棚に上げたうえで言う)

サイドバックは、前半の出来からすると、前 貴之を右に持ってきて、高橋 諒を左へ投入する。
その場合は、鈴木 雄斗は右シャドウで中央寄りに使い、和音君をシャドウの左に入れる。
この時、もし杉本を残すのなら、彼をボランチへ、という策も準備しておくべきではないか。
攻撃に打って出るのなら、その前段としてボール奪取に長けたボランチは必須だ。

〈お手軽に 結果を望むな〉
力量と戦術構築の深まり度からすれば、予期された敗戦と割り切り、手をつけている部分を完成に持っていく、この作業を続ける、これしかない。

ヴェルディの永井さんにしても、昨季チームを立て直す格好で就いてから1年かけて錬成してきての今があるわけで、前職がユース監督であったことの成果を、新人投入によって味わいはじめていらっしゃる、と考えよう。

トレーニングマッチが組めない中、登録プレイヤーの試行と見極めはかなりむづかしいはずですが、選手起用に関する布サッカーの方向性は、これを支持しております。

なお、 前節のような勝利があると、〈山雅らしさ〉の言葉でやや精神論過ぎるところへと話しが向かう。

こころの件がどうでも良いとは言わないが、その根拠はあくまで、取組内容の(考えることを含めた)量と質を増すこと、これに尽きることを忘れてはなりません。

では。

ホーム観客上限5,000人 の恩恵。

さまざまな制限下のゲームに足を運んでいると、

失って 初めて悟る 劇場アルウィン、と後ろ向きなことを呟いてしまう萬年。

けれど、少しでもポジティブになりたいと、予期せぬ恩恵を考えてみた。

そのひとつ。

ベンチからの指示、プレイヤー同士の声が観客席までけっこう届くこと。

北ゴール裏に座っていると、ゴールキーパーがフィールドプレイヤにかける声が特によく通る。

それを聞いていて、内容そのものよりも、言われた側はどんなふうに思っているんだろうか、とつい忖度している。

自然、声だけではなくコミュニケーションを図ろうとする行動にも目が行く。

たとえば、前節対アビスパ戦の54分。
ボランチの塚川 孝輝がセンタバックに通そうした横パスがずれて、ファンマがそれを難なくかすめ獲ったシーン。

眼下の出来事に、あぁ、これは!、と失点を覚悟して観客席はフリーズ。

だが幸いにも、グラウンダー性のシュートは、GK圍 謙太朗の右手の先を走り抜け、わづかにポスト外に逸れた。

この直後、圍は塚川に近づくと、その肩のあたりをポンと叩く。
内心思うところが有るろうだろうけれど、ドンマイ、と励ますその仕草にはグッと来た。

あるいは、右サイドバックの吉田 将也が裏抜けしようとボールを引き出した直後は(攻撃は実らなかったが)、後方から良かったよ!、といったような声をかける。

ミスを犯せば消沈してしまうのがフツーだが、鼓舞し合って次の機会を狙う。

今夜の味スタでも、そういう一致がチームに在るように、と願う。

そうだ! 、ふたつめの救いとは、きっとこれに違いない。

自チームがミスを犯せば、すぐに落胆や失望の声をもらすアウェイサポーターがいないこと。

では。

チャレンジャーの幸福 (ヴェルディ戦プレビュウ)

〈今こそ挑戦者だ、山雅〉
クラブ創設の昔から、山雅にとって、ヴェルディ(当時は、読売クラブ)は、格別の存在だった。

チームカラーの〈緑〉だって、ヴェルディへの憧れから採用されたもの。

過去、そして現在に至るまで、経営、強化スタッフ、プレイヤーの各層に、ヴェルディのレガシィを享受してきた山雅だ。

で、今季。
現在のチームの構築進度や戦績といった状況からすると、偉大なるヴェルディに挑戦するの構図が、ますますと鮮明。

みづからをチャレンジャーと規定して闘える山雅の幸福が、ここに在る。
(まぁ、いまの順位からだと、すべてのチームに対して挑戦者となるけれども)

〈伝統回帰の道を行く ヴェルディ?〉
ボール保持率、パス数は、リーグトップ。
攻撃回数はリーグ20番目ながら、ゲーム当り8位の得点を稼いでいる。

ということは、いったん攻撃を発動したら、かなり高い得点率を誇る。

つまり、前を向かせてボールを自在に動かされたら、失点を覚悟しなければならない。

4 – 1 – 2 – 3の陣形は、超攻撃的な布陣。
ペナルティエリアに侵入する際は、5人くらいが駆けこんでくる。

〈アーティストには 自由に前を向かせない〉
前節の水戸戦(2 – 0 で勝利)の前半は、しかし、水戸の出来がかなり良くて、ヴェルディは思うようなサッカーがなかなかできない。

これは、水戸が前線から強度高くプレスをかけ続け、ヴェルディのプレイヤに前を向いてボールを配球する体勢と余裕を与えなかったことが大きな要因。

とすれば、テクニックとボール回しに長けたテクニシャン達を、〈剛なる〉球際と粘着で押し込んでしまう、これこそ今節の最大テーマ。

特に、ヴェルディの中盤、アンカーとインサイドハーフふたりで構成する逆三角形、ここに自由を与えないことと、サイドチェンジを使って駆け上がる、スリートップの左右両翼にフリーでボールを握らせないこと、これ肝心。

山雅は、前線の3人が、ねちっこくボールを奪うことから攻撃を開始する、といった考えに徹する、で良い。
だから、この3人の最大ミッションは、まづは守備と割り切る。

重要なのは、前線がボールを追いかけまわす時、ボランチと最終ラインがそれと連動してせり上がること。
3 – 4 – 2 – 1 を採るとしたら、‐ (ハイフン)の間隔を間延びさせないこと。
ここにスペースをつくると、ヴェルディの逆三角形のプレイヤーがそこを衝くからだ。

明らかに自分たちよりボール運びに長けたアーティストと真っ向勝負して、その華麗をなりふりかまわず封印してしまう。

これをできるだけ長くやり続ければ、ひょっとしたら、勝ちがこちらに転がり込む。

それくらいに割り切ってしまおう。


そして、明日の夜、だだっ広い味スタをば、山雅がモノにする……。

では。