さらなる高みの開幕 (SC相模原戦プレビュウ)

まづ、明日の予報が降水確率60%で、多少うんざりなのですが、このゲーム、今季ひとつのターニングポイントとなる予感もしています。

過去2戦、ポラロイドカメラのプリント紙、ミルク色の海から、被写体の輪郭と色彩が浮かび上がってくるみたいに、山雅の到達点がだんだんと見えてきた、そんな感が強い。

もちろん、水面下では苦しいやりくりがあるんでしょうけれど、各タレントが与えられた持ち場で、個々の力を発揮しつつあるのは嬉しいもの。

ですから、今節のテーマは、対戦相手の出方に関係なく、リーグ戦における起承転結のうち、〈承〉の部分、つまり、連携を深め、チームのクオリティを増すステージのはじまり、とも言えましょう。

周囲の方々には、快進撃のアルビレックスに土をつける最初のチームが山雅でしょう、などと傲慢な予告もしていることもあって、ここは複数得点を追求したいところ。

SC相模原については、初昇格のチーム、3バックシステムの採用、要所にヴェテランを配し、最後まで戦いを捨てずにやり抜くチーム、そんなイメージしかない。

さらに、前節ホームの対琉球戦は大敗(1 – 5)。

となれば、同類愛憐れむの情も湧いてきて、ゲーム模様のチェックさえしておらず、まったくもっての怠慢をおゆるしいただくしかありません。

まぁ、今回は、そういうゲームの楽しみもあるさ、とのノリで、アルウィンに向かうこととしましょうか。

では、アルウィンで。

ESLの挫折に 学んだこと。

日本ではそれほどのニュースにならなかった、ヨーロッパ スーパーリーグ(ESL)の、あえなき挫折を横目にみて、考えさせられたことです。

ESLとは、欧州の、〈いわゆる〉ビッグクラブ15チームが、リーグ戦(ホーム&アウェイの28試合)をたたかい、プレーオフで年間チャンピョンを決する、という構想。

各チームは、いままでどおり国内リーグに参加しながら、ESLに参戦する。

各国リーグはおおよそ週末開催なので、ESLのゲームは、週の半ばに組まれる。
リーグにおける昇降格はない。

去る4月18日、リーグ創設に参加する、オリジナルの12クラブが公表された。

2018/2019シーズンの、これら12クラブの収入(推定)を、1ユーロ=129円のレートで、日本円で示そう。(ただし、ACミランはひとつ前のシーズン)

❶FCバルセロナ             1,084億円
❷レアルマドリッド          976億円
マンチェスターU           917億円
マンチェスターC           787億円
リヴァプール                780億円
トテナムホットスパ        672億円
チェルシー                    661億円
❽ユベントス                    593億円
アーセナル                    574億円
❿アトレチコマドリッド      474億円
⓫インテルナショナル        470億円
⓬ACミラン                      267億円

各クラブがどうやって、これだけの資金を集めているかはさまざまだけれど、この原資で、優秀な指導者やタレントを集めまくれば、やっぱりそれなりの戦績を残せるだろう。

ちなみに、2018年度のJ1 クラブ18の、営業収益合計は、855億円。
その上位三つが、神戸 96億円、浦和 75億円、鹿島 73億円だった。

J1リーグの総合計よりも、マンチェスターシティの収入が多かったということ。

ところが、リーグ立ち上げが発表されると、それぞれのファンサポーターから反対の声が猛然と沸き起こる。

チームの現場、指導者やプレイヤーからも疑問の声が漏れだしてくるわ、くるわ。

なかでも、イングランドは、首相までもが、抗議する事態に。

欧州サッカー界の元締めである、UEFA(ヨーロッパサッカー協会)、さらにはFIFA(国際サッカー連盟)も 反対を表明。

参加クラブはヨーロッパチャンピョンズリーグから、所属プレイヤーはワールドカップの国家代表から締め出すぞ、とまで言い出す始末。

結果、プレミアリーグ傘下の6チーム番号赤字が、真っ先に、リーグからの離脱を表明。

その後、ドミノ式に、4クラブが追うように離反。

残ったのがふたつでは、もう無残。

このお話は、発表後、なんと48時間で、瓦解してしまったのです。

〈教 訓〉(どうでもいいこと順に)
お金は大切
でなけりゃ、きちんとしたクラブ経営は成立しないし、それなりの戦力も集まらない。
ただ、今回の稚拙なリーグ構想と公表をみていると、収入は相当ありながらも、どうやら、薄氷を踏むような危うい経営となっているフシがある。

ゆえに、UEFAにピンハネされることのないような興行(放映権など)収入を、是非とも手にしたい、という焦りを感じます。

②莫大な資金ありきのサッカーが、もしもファンサポーターをないがしろにした世界を志向すれば、かならずや、その反発と離反を招く。

今回のは、ファンサポーターに支持されないクラブ行動の、まったく良い事例。

本来、フットボールは上流階級のお楽しみでもありませんから、強欲の者が強欲の者に叛旗をひるがえすようなストーリイは、唾棄の対象。

そもそも大衆は、ヒーローの心変わりを望まないものなんです。

では。

キャプテンはここにいる(2021.5.1北九州戦レビュウ)

アウェイの地で、2 – 1の勝利。

同点には持ち込まれたが、交代したプレイヤーが関わった得点で突き放す、って展開、なかなかいいではありませんか!

【やはり中盤の制圧がポイントだった】
佐藤 和弘 (キャプテン)を欠くものの、前 貴之(副キャプテン)が、ゲームキャプテンを難なくこなして魅せたのが大きかった。
アンカーとして中盤を締め、特に、アウトサイドのプレイヤーを巧く使っていた。

中盤、というと、阪野 豊史が降りて来てボールを捌いたのが効いていたし、新しく開発した手法として、2列目を担った鈴木 国友が、やはり2列目の河合 秀人とサイドを変えるパス交換をしたのも、北九州の中盤に上手く穴を開けました。

北九州は、ボランチに、六平 光成と針谷 岳晃のふたりを並べてきた。

ヴェテラン六平を使ったところに、小林監督の、中盤が肝、との意思が観てとれましたが、山雅にしてみれば、すばしこい永野 雄大先発のほうが厄介だったかも知れない。

ついでに、前川 大河がベンチスタートであったことも幸いでありました。

あとは、#10 高橋 大悟が、要所要所で光るプレイを魅せた。
ギラヴァンツ生え抜きの3年目か……。
この活躍を続ければ、トップリーグからの誘いもあり、でしょう。

北九州の攻撃の面目は、その中盤から、ペナルティエリアに鋭い縦パスが入ってくること。
これに4人くらいの前線が瞬時反応するわけですが、予測も含めて、山雅の最終ラインが、大過なく対応できていことも素晴らしかった。

【やっとチームの骨格が】
11節目にして、台所事情はともかくも、戦うチームとして、ひとつの達成が露わになってきた、という感があります。

特に、サイドからの崩しにこなれた仕事ができるようになったのが大きい。

象徴的なのが、14分、河合のゴールが生まれた、その前のプレイ。
浜崎 拓磨から、北九州センターバックの裏へロングパスが供給される
これを、走り勝った横山 歩夢が追いついて手中にしたシーン。

こういった局面の再現性を高めることで、クロスなりカットインの起点が創れるわけですから、このゲームでいちばんの魅力的場面だったかも知れません。

では。

カクテルとブランデー (北九州戦プレビュウ)

前置きをひとつ。

ギラヴァンツは、クラブ経営面で、J3断トツの、No.1 評価(2018年、2019年)を勝ち取ったことを、指摘しておきたい。(デロイトトーマツ社による「Jリーグマネジメントカップ」より)

これには、2017年に専用スタジアム(ミクスタ)を獲たことが大きく寄与しているには違いない。
けれど、専用スタジアムを手にしてもパッとしないクラブも在ることを思えば、やはり、経営手腕があってこその躍進、とみていいだろう。

戦績的にも、J2に復帰した昨季は9連勝(第7~15節)を達成し、リーグに旋風を巻き起こす。
後半、(おそらくは対策されて) 失速したものの、年間 5位を確保。

今季は現在22位と苦しむが、監督3年目、小林イズムも浸透しているだろうから、互いの順位など、まったくアテにならない対戦、と考えるべき。

【その中盤を無力化せよ】
4 – 4 – 2 を採用する北九州。
で、その運用とは……、
基底部では、センターバックふたりとボランチふたりが四角形を作り、そこから攻撃を始動する。

ボランチは、縦関係になるというより、むしろ、並列的に位置する。

サイドバックのふたりは高い位置をとる。

残る4人、つまり、アウトサイドハーフとツートップは、ほとんど横一線に並ぶようにして、攻撃に向かう。……、といった感じ。

チャンスとみれば6人が一斉に走り込んで来る攻撃を、覚悟しなければならない。

これを極端に表すと、その陣形は、カクテルグラス(向かって右)のような格好を呈し、とにか前線へとかなりの人数(=エネルギー)を投入するスタイル。

とすれば、山雅としては、ギラバンツの後方、その左右にできるスペースを自在に使い、ビッグスイッチ(サイドを変える)やクロスの多用することで、ペナルティエリアに多く侵入したい。

前線と、ボランチあるいはセンターバックの連携を分断できれば、その攻撃力を減衰しつつ、こちらが攻撃に傾けるチャンスを大きくできるわけだ。

いわば、カクテルグラスの脚部を長く間延びさせるようなイメージでしょうか。

対し、こちらは、ブランデーグラス(左の絵) のようにですね、中盤を厚く太く、かつ、前線にも人数をかける、って感じですかね。
しかも、背丈はずんぐりと。
つまり、全体を縦にコンパクトにしてしまうことで、相手のボランチの使えるスペースを窮屈にしてしまう。

ギラバンツのボランチふたり、例えば、永野、針谷は、22~23歳と若く、山雅であれば、米原や平川に似たり寄ったりの経験値。

対し、佐藤や前らは、技量と度胸の総体で彼らを上回っているだろう。
だから、ボランチ対決では、かなりのアドヴァンテージが有る。

攻撃のキレ味は、どうも相手に分があるようだ。
とはいえ、向こうよりも多く得点しないと勝ちは決してない。

ならば、ここは単純な話。

特に中盤で上まわることで、相手よりも多くペナルティエリアに入ってシュートに持ち込む、そういった割り切りで行きましょうよ、山雅。

では。

クラブ決算、つまみ食い。

Jクラブで、昨年度の決算が公式にリリースされ始め、そのいくつかを。

清水エスパルス。
興行収入で前年比4億700万円の減少だったが、責任企業の(要は、親会社ね) 鈴与様から、特別協賛金 !という名目で救済してもらった結果、3,800万円の黒字。
強化費は過去最高の、22億300万円だった。
これ、山雅の総収入(19億2,700万円)をはるかに越える。

それでいて、昨季、勝ち点28 (16位) か。
勝ち点1を稼ぐのに使った年俸が、ざっと7,900万円とは、贅沢な世界ですな。

大分トリニータは、11年ぶりの赤字転落。
二度と、地方政府にすがることもできないだろうし、厳しいな。

また、浦和レッズは、純損失で6億円の赤字。
特に、無観客興業などによって、入場料収入が前年比約19億円ダウンしたのが効いているようだ。
この減少幅は、ほぼ山雅の総売上に等しい。
絶大な集客力が、かえってアダとなった例。

社長は、親会社(三菱)による補填ではなくて、パートナー企業(よくわからん)の支援によって赤字幅を減らしたと弁明、それが本当なら大したもの。

さて、山雅。

県内メディアによる、決算に関する報道を、その文言から引用すると、

―シーズンパス購入者が、無観客となった試合などの払い戻しを辞退して寄付した金額が、約4,800万円余りに上ったことなどから、327万円の純利益を確保~ ―とある。

これ、― 寄付金などにより―、とあるから、間違いじゃあないんだが、
その4,800万円がなかったら赤字だった、とも受け取れる。
チト乱暴な論調ではあるまいか。

こういう部分の、ファン&サポーター ヨイショは、クラブが言うならともかく、メディアが軽々にそのままをなぞるもんでもない。

むしろ、決算書を、かつかつ300万円の純利益で着地させたことを分析して報道すべきでしょう。

では、また。