臨戦 2022 ❻ (それぞれの帰還)

これは、旅の終わり、はたまた、旅の始まりか?

まぁ、どちらでもいいや。

かつて、サマーセット モーム (1874~1965) の『人間の絆』(1915年発表) のことで、ひとつの逸話がありまして、

僕の中学の担任(だったと思う)が、話してくれたんだが、

本屋でたまたま、若い女性が店員に、― あの~、〈人間のはん〉、は文庫版で在庫ありますか?、と尋ねている場面に出くわした。

どうも話が通じていないようなので、傍らから、― 失礼ですが、それ、人間のきづな、のことかな?、と口出ししてしまったよ、と。

昔は、それほど馴染みでなかったけれど、ここ10年でもっともポピュラーな単語になった言葉。

さて、モームのあの小説、原題は、『Of Human Bondage』であるから、たとえ断ちたくても、そこからは逃れられないような人間的しがらみ(因縁)、といった辛い趣き、響き。

それを〈きづな〉としたのは、けっこう巧い訳出だけれど、我が身を束縛するもの、という切実さは、邦題からは消えてしまった。

飯田 真輝氏 ! が今回、松本山雅の新役職(CB2) で働くにあたっては、〈Bond〉が持つ、切りたくても切れないような深い関係、松本と山雅には、そんな気持ちを持って進んでいただけたら、と勝手に願う。

昨季の終わりごろだったか、飯田には、守備コーチとして戻ってもらったら?、とは、チノ氏の提案だったっけ?

コメントを読むと、あれが、ついに本当のことになっちゃった。

さらに、同日、アカデミー分野についてのリリースが出た。

岸野 靖之氏が、ダイレクターとして、新加入というか、ご復帰。

栃木シティFCのほうはそれでいいの?、と心配になってしまうんだけれど、とくかくお帰りなさい !

ユースの育成によって、トップチームを下支えしてもらえるとは、なんとも朗報。

というわけで、球春の2月、そのはじまりは、こんな曲を聴きながら。

では。

臨戦 2022 ❺ (#5よ その存在感で)

新しいチームキャプテンは、やはり、ゲームキャプテンも担うんだろうか?

 松本山雅で

 ずっとやれ

 春から走れ

 勝利をめざし

 選(よ)りすぐりの精鋭たちと

 売り出せ

 過熱のサッカーで

 苦難の道を切り拓け

……つまりは、必 昇!

ところで、3箇月向こうのことなのに、しかも、北と南のホーム動員数(昨季)をそのまま当てはめたところで、十二分なキャパシティーのはずなのに。

ゴール裏だけでなく、特例として、メインとバックスタンドをアウェイ側に開放する、これはわかる。

けれど、ドサクサに紛れて、全席通常の 500円増し、とか。
しかも、通常に近い〈優待価格〉(会員限定)を設けるってことは、アウェイ観客ばかりがボラれる、ということですな。

なかなか、強欲ですなぁ。
北信流、ってそういうことを言うんだっけ?

せいぜい、それまでの 8戦を消化して、互いにいい位置につけていることを願うのみ。

では。

熱も入らず あっけらかん。

昨日の朝、職場のロッカールームで。

― いやぁ、すごいヘディングシュートだったよねぇ、とソルト氏。

代表チームの、対シナ戦のことらしい、と気づいて、

― 申し訳ない、どうも山雅以外には熱が入らず、観ていないのよ。

― でもさ、シュートゼロの相手ならば、3~4点は獲らないと……。

ナショナルチームの戦績がどうでもいい理由の95%は、会話にあるとおりで、ご贔屓のクラブチームでないこと。

感情移入できないのは、突き詰めれば、サッカー好きというより、山雅好き、ということか?

残り5%は、無理に引きだしてきた理由かも知れず、

アジアでやっていれば、ワールドカップ予選を勝ち抜くのがもはや?当たり前だろう、日本。

だから、関係者とメディアが熱くやっててもらえれば、それでよくって、いまさら画面のこちら側で、手に汗握ることもなし。

ワールドカップ出場に、日本のサッカー界全体が、命を賭けるという時代ではないという感じ。

が、それは、出場を逃した時の落胆の大きさと小ささによって、はじめて証明されることになるんでしょうね、きっと。

だから、これ萬年の持論ですが、もっと視野を広げる。

日本の地理的なポジションを、環太平洋との大義名分をつけ、政治力と資金力を総動員して、北中米、または、南米サッカー協会に入れてもらう。

そうすれば、いままでとはまったく違った、サッカーの新鮮さと、タフな経験を味わえること必定ですけれどね。

本戦では、出るとことごとく負けるグループでトップ獲ったところで、そんなに嬉しい?

アジアの中で、お山の大将はもういいよ。

では。

臨戦 2022 その❹ (怪しくてこそ山雅)

前回その❸で、失点論をしたら、
名波氏が、静岡県のローカルなスポーツ番組で、(山雅では)ディフェンスを育てて機能させなくては、と語っていたと、教えてくださる御方がありました。

機能不全だったディフェンスの立て直しには、ふたつのポイントを考えます。

❶年を追うごとに、山雅のディフェンスラインは高い位置を採るようになっていて、それは相手陣内におけるボールポゼッションの時間と量が多くなっていることと比例。
要は、陣形が、より前がかりになっている。
特に、負けているゲームだと、得点が要求されるから、ますます前へと傾斜する。
すると、ディフェンスラインの後方にはそれだけスペースが生まれるので、ここの部分を手あてしないと、裏を狙われて背走、失点となる。

❷前回のサイドのお話と関係するんですが、守備に回った時、相手を捕まえる場合、昨季、横のラインがずいぶん乱れていた。
過密と過疎がない交ぜになっていて、対人の受け渡しも巧くいかず、突破されていたように思う。

……こういった事情からすれば、もはや、〈専守〉という発想は成り立たたず、攻めるための守備を前提にして、攻守一体で改善を入れなければいけません、山雅の場合。

そこには、4バックを視野に入れた検証も含まれると思うんですが、今回の安田  理大の加入には、なんだかそんな雰囲気を感じます、感じたいです。

新体制で、背番号 #2、#6、#11、#10 が空いているのは、なんらかの結果だろうなぁ?、とは思いました。
誰れも希望しなかったとか。
でも、少々含みを持たせて、怪しいところがあってこそ、山雅らしい。

安田の加入が、とってつけたような結果に終わるのだけは、ご勘弁。

要は、彼の持ち味を使い切ってもらって、攻撃的な守備を魅せて、ということ。

では。

【改題】臨戦 2022 その❸ (御嶽海が教えてくれた)


註: 2019年7月10日対エスパルス戦

サブタイトルは、― 負け方も大事です― がよろしいかと。

今場所の、その好調ぶりはむしろ、星を落としたふたつの取り組み内容で確信された。

どこぞの誰かなど、負けが決まった途端、もう、これだから、ダメ!、とまるで場所が終了しかのように、ひどく慨嘆しているので、

― いやいや、そういったイチかバチかの評価、ではいけませんよ。
かえって、負け方の良さをみないと。……と、たしなめていた萬年。

実際、あきらかに相手の気魄が上回っていた敗戦もあったが、それでも、なんとか堪え凌ごうとする姿勢が顕著であって、決して場所を棄てていない姿勢が、据わった目つきにもうかがわれる。

逆に言えば、勝った取り組みで、相手の反攻に手こずりながらも前に出るしぶとさ、が目立った。

それこそ、イチかバチかで突進することばかりではない相撲、を手に入れたかのように。

そう、オール オア ナッシング の考え方ではリーグ戦は戦えません。
それは、サッカーもまったく同じ。

ということで、今回は、被ゴール、つまり〈失点〉からさかのぼって、今季のヒントを探り出そうという魂胆。

❶2021季、山雅の総失点数は、71。
これ、Jリーグ参戦後の、ワーストだった。
2016年(32失点)、2018年(34失点)と比べると、つまりは、倍加。

守備というのは、アイデアというより、決め事の忠実な実践に負うところが大きいと思うが、その決め事が乏しかったのか、あるいは、それを守る姿勢に乏しかったのか?
おそらくは、前者だった、と踏んでいるけれど、たとえば、誰が誰をマークする、といった単純なことも曖昧だったろうし、簡単に相手をフリーにさせる残念なシーンが、やたらと在った。

守備陣の中心であった常田なんかはその象徴で、その上背(187㎝)が売りだが、守備に関しては、その優位性が活きていない。
おそらくは、今季が彼の正念場。
特に、対人マークの甘さを克服できないと、ポジションを失いかねない。

失点の形態は、ワースト1位が、クロスを投入されたことから、で、28% (20失点)。
2位に、セットプレイからが、27% (19失点) 。
セットプレイからの失点は、2020季が 25%だったから、割合としてはそれほど増加していない。
2020年は 13失点、昨季は、19失点なので、被ゴール量として目立つだけ。

いちばん着目すべきは、第1位のクロスからの被弾、これ。

2020年は、失点中11.5% (6点)だったから、ほぼ3倍に増えてしまっているんです。

サイドを割られて、そこからのクロスを阻止できずに、ペナルティエリアでシュートを打たれている。

セットプレイのうちの、コーナーキックにしても、
おそらくは、サイドを深くえぐられてゴールラインに逃げざるを得なかったり、または、クロスをクリアしたりなどから、おおくを与えたのではないか。

ならば、今季は、相手のサイド侵攻をいかに食い止めるのか?、が鍵。

ところが、問題はそんなに簡単には、解消しない。

❶今度は、山雅によるゲーム当りクロス回数をみると、16本 (リーグ6位)。
2020季は、これが、13本 (リーグ16位)だった。
リーグ全体のクロス数の増減は知らないけれど、山雅自体は、前年に増してクロス回数をこなし、クロスを多用するチームになった。

❷クロスからの得点は、昨季は、総得点中の11%(4得点)で、これは、パターンにおける第3位 (第2位のショートパスからと同率)。

同じ数字を、2020季にみると、第2位で 21%(9得点) なんですな。

つまり、前年よりもクロスは多く蹴り込んだけれど、成立したゴールは半分だった、というわけ。

……、以上を乱暴にいうと、それなりに上げてたクロスはゴールにまで結びつかず、しかも、もう一方では、けっこうサイドを割られて失点を重ねた。

難題であるといった理由は、ここです。

サイドバックというポジションは一般的に、相手のサイドバックをいかに低い位置に抑え込んでおくと同時に、こっちはより高い位置への侵入するのがミッションになる。

山雅の昨季は、けっこうサイドを割られた、と同時に、けっこうクロスを投入しているから、このバランスをどうやってやりくりして、こちらが、より相手サイドを押し込み続けるのか?、

もちろん、クロスを投入するのはサイドバックの専担事項でない。

また、いくらクロスを入れても、それに合わせるべき中のプレイクオリティもあるので、すべてをサイドバックがどうしろこうしろ、ということでもない。

ただ、クロスによって得点機会を創り出した、というチーム内の2021ランキングの上位は、下川 陽太、外山 凌、(鈴木 国友) 田中パウロが ベスト4だったから、サイドの制圧に関しては、まづは、彼ら3名の貢献を期待しないわけにはいかないでしょう。

では。