2019年の、列島をおおったラグビー観戦熱は、一体どこへ行ってしまったのか?
…とは、ある先輩の言葉。
― 町内会の役員会ね、ラグビー中継をTV観戦するとかで、議題消化もそぞろに散開ですよ、ったく。
と、当時、近所の山雅サポーター(役員のひとり) から愚痴を聞いたことがある。
地方都市の、そのまた辺境に住むオッサンや爺さまを虜にするなんて、サッカーのナショナルチームでもなかなかできないのに。
……、そう思っていたら、どうもラグビー業界は、ここ2年を、次なる始動のアイドリングの時期に当てていた模様。
この4月には、日本代表メンバー(候補)が招集されて、6、7月には国際マッチがおこなわれた、と聞く。(いままで知りませんでした)
更に、この7月に、来年1月に開幕する2022季国内リーグは新装なってご登場、とのリリースがあった。
18年間運営してきた、ジャパンラグビートップリーグ(TL)に替えて、〈ジャパン ラグビー リーグ ワン〉(Japan Rugby League One)に再編される。
参入チームの呼称も変わり、24チームが 3つのディビジョンに分かれて、総当たりのリーグ戦をおこなう。
デビジョン1に 12チーム、ディビジョン2と3には 各6チーム、と頭でっかちの構成。
(どのチームをどのデビジョンへ編入するかの評価は非公開だったようで、ここら辺、かなり急いだ仕事の感がありあり)
いくら名前や体裁を変えてみたところで、すべてのチームが、100%企業のラグビー部である実体には変化がない。
したがって、ホーム&アウェイ方式を採用し、地元の結束(One!)と一体感の醸成、と謳ったところで、8割方のチームが、首都圏に集中している現況。
このあたりの事情を突破してリーグを盛り上げていかないと、その先にあるナショナルチームの活況も生まれない、そんなふうに診ています。
ラグビー合宿の聖地、菅平高原を近くに擁する上田市さんよ。
ここはひとつ、、この先、プロ化に進みたいであろうラグビー協会に取り入って、年間を通じた特定チームの招聘プログラム(準本拠地化)なんかを画策してみたらどんなもんでしょう?
さて、極東の某国などまだまだ及ばない伝統と実績を誇るのが、イングランド。(この競技の祖国ですから、当たり前?)
ここのナショナルチームのゲームアンセムとして歌われるのが、
『Swing Low, Sweet Chariot』(静かに揺れよ 愛しい馬車よ)
この曲はもともと、19世紀後半にブラックアメリカンのグループが広めた、ゴスペルの名曲。
イングランドのファンが採用した詳細は知らないが、1980年代から、このならわしが定着したようだ。
靜かに揺れよ 愛しい馬車※よ
故郷に戻るため 私を迎えに来ておくれ (この2行が歌詞の中繰り返される)
ヨルダン川の向こうに 何を見たかって?
それは 私に従い来る 天使の軍勢
友よ 先に たどり着いたなら
私も来ると 皆に告げておくれ
時には浮かび 時には沈むのが人の世
けれど魂は いつも 天を目指すのさ
輝かしい日が 来れば きっと
救い主が 私の罪を洗い流してくださるだろう……
旧約聖書、列王記下 2章11節。
預言者エリヤは、弟子エリシャの眼前で、火の馬が曳く戦車に乗って天に昇っていった。死を経ずして天に挙げられた、という。
※馬車(チャリオット)とは、馬に曳かせた戦車のこと。映画『ベンハー』には、この戦車によるレースが描かれている。
キリスト教の中で育った者なら、この曲の詞がこの出来事を下敷きにしていることはわかり切ったことだから、イングランドの人々は違和感なく受け入れたはず。
ところが、2年ほど前になって、イングランドラグビー協会は、同国のラグビーファンは、この曲の、由来や歴史的な背景を忘れ去って使用しているので、使用の是非について調査する、との声明を発した。
要は、奴隷としての苛酷な境遇からの救済を求めて生まれ、歌われてきたという事情に配慮もせずに使うのは、いかがなものか?、という提議か。
ここには、かつて宗主国として奴隷制度に深くかかわったという、加害者の自責心が在ることは確か。
時流に乗った提案、とは言える。
けれど、この論法でいくと、この曲を歌えるのは、アフリカなどからやって来た奴隷の子孫のみ、となってしまうし、奴隷制度糾弾の観点からしか、曲を扱えなくなりはしまいか?
曲なんてもの、一度世に出たら誰のものでもない共有な財産だろう。(著作権関係の話は別にして)
まぁ、クリスチャンでもなく、奴隷制度とは無縁と思っている東アジアの端っこに住む黄色民族は、二重の意味で、こういう事案には、いつも無頓着。
だから、某Jクラブのファンサポーターが、この曲をアンセムとして何の違和感もなく取り入れる。
無知なる者の幸福、ってことでしょう。
では。