仕事について その❷

―どうして、そんなに頑張るんだ?、と訊かれ、イチローはこう答えたらしい。

―僕が、一体いくらもらっていると思っているんです?

自分の価値を高める、という仕事の本質が、気の利いた表現で返されている言葉だ。

この発言がちっとも傲慢に聞こえないのは、ひとつの真実を衝いているからに違いない。

つまり、お金をくれるから働いてやるんだ、というのは大いなる間違い。

でなくて、働いたからこそ、お金がもらえるという原理。

ここのところを勘違いしていて、時間から時間まで働いているばかりで職場における信頼と存在感がいっこうに高まらない人々は多い。

では。

〈コメント〉
☞つーさん より  (8/25 16:22)
一人で生きていける人間はいない。
以前の職場で、いじめにあっている同僚がいた。家族のため簡単に辞めるわけにはいかないから、兎に角我慢すると言い張る。仕事の本質以外で気をつかう職場は多い。私にも突然挨拶を返さなくなった同僚がいる。何度か再生の努力はしたが、相手が変わらないので再生の努力をやめたら却って楽になった。人が一人君との交わりを断ったのだぞ、君はさびしくないのか、そう心の内で投げ掛けた時もあったが今はどうでもと言う感じ。
職場で純粋に仕事に集中している人は見れば解る。自分も見習ってと思うが、どうもなかなか…。
では、また。

今季のベストゲーム! (2020.8.23京都戦レビュウ)

逆転はしたものの、アディショナルタイムで追いつかれて、2 – 2 のドロー。


けれども、ここまで、という条件付きながら、間違いなく今季の ベストゲームでしょう。

❶メンバー編成が、ひととおり出揃うことで、チーム総力戦の仕様が整ってきた。(怪我による離脱は、やむをえず として)

❷ピッチ上に在るメンバー組み合わせごとの、攻撃の形、とくに円滑なサイド攻撃の再現性が相当に高まってきた。
前 貴之はもっと自分を押し出すべき。
久保田、セルジ―ニョ、杉本が同時にピッチに居る時間帯は必要でしょうね。

❸アタッキングサードに侵入していく連動性(とパス精度)がかなり向上。
逆に、ひと手間省いてもいいじゃん、というシーンもあって、ひとつ前でシュートを打てる決断と工夫を加えるべき。
そのくらいの個人技はあるのだから、いまや。

❹橋内の復帰も大きいが、最終ラインの安定が格段に増した。

❺#10セルジ―ニョの2得点目と、初アシスト(MVPを逸したのはむろん痛恨)。

❻ツーボランチ、塚川と米原ペアに見通しがついたこと。
……、といった部分で光った好ゲーム。

勝利した福岡戦よりもはるかに収穫があったはずで、残りリーグ戦 3分の2 に光明が射してきた感があります。

対京都という側面でいうと、スピードと強度で上まわり、サンガの良点を削ぐほどに先手を獲れたゲームを進行できたことは、高評価。

さて、DAZNのシステム予想が見事に違っていて、実際は 4 – 4 – 2 を採用。
(実況では、キチンとした訂正はなし)

ということは、右サイドバックは大野 佑哉が担ったのだ。
大野については、ゲームを重ねるごとに落ち着きをみせていて、プレイにもビビり感が消え、昨夜の出来にはちょっと驚いた。
大卒生え抜きがひとり、漸く開花しようとしているのは心強い。
同年代の吉田 将也との競争激化は願ってもないこと。

これから、シュアなゲームをこなすためには、4バックも採用すべき局面があるから、サイドバックに厚みが増したのには価値がある。
(このリーグには、3バック採用のチームはかなり多いため)

最後に、あえて難点を言いますと、
守備に入った時、ここまではやらせるが、ここは決して割らせないを、その都度、カッキリと決めて対処することでしょうか。

瞬時の判断だからこそ、日ごろの準備が必要です。

そういう意味で、昨夜のMVPには、橋内 優也を推したいのです。

では。

素直に聴く A Song for You

 

ずいぶんと昔のこと、伯父の家を訪ねたことがある

ひとつ違いの従弟の部屋に入ると、彼が アルバムをひとつ聴かせてくれた。

カーペンターズの『Now & Then』(1973年発表) だった。

従弟は盛んに、アルバムの良さを絶賛する。
(アルバムチャートで、全米 2位、日本 1位を記録したヒットである)

口には出さなかったけれど、『Yesterday Once More』など、歌詞もメロディーもありきたりの、凡庸な曲ではないか、と内心思っていたのが萬年。

今になって、アルバムの構成をみると、この曲は導入歌に過ぎず、
その後に、オールディーズの定番が続く。
ゆえに、凡庸で一向にかまわないわけだな。

(このアルバムで唯一注目するのは、トム スコット (1948~、サクソフォーン奏者)が、リコーダーで参加していること)

そんなエピソードもあってか、カーペンターズはそれほど熱心に聴きもしなかったのだけれど、レオン ラッセルの『A Song For You』のカヴァーに触れてみると、いやぁ、ちっとも凡庸なデュオではない。

こころにしみじみと迫ってくる率直な歌唱は、一世を風靡して当たり前だったと思わせる。

君のために僕は歌う

いままでいろんな処へと出かけていった
たくさん曲を歌い、たまには まずい韻を踏んで詞を書いた

10,000人もが観ているステージで  愛というやつを演じたけれど
今は  君と僕のふたりだけ

で  この曲を君のために歌う……

その日の午後。
従弟と僕のふたりは、2階の部屋の窓から、すぐ眼下に日立市のメインストリートを行きかう人々を眺めて時を過していた。

あの日をもう一度、ほどでもない記憶です。

では。

〈コメント〉
☞つー さん より (8/23 8:51)
女々しくも心地よい昔日。
だいぶ以前に触れたことがあるのだが、いろいろな事があって実家を出、独り暮らしを始めた彼女。
笹塚の6畳一間のアパートには彼女が小学生の頃から使っていた机、小さなタンス、テーブル、食器棚、そしてその部屋には不釣り合いな大きな家具調のステレオが。
ステレオの向かいの窓辺に二人寄りかかり「幻想交響曲」の第四楽章を聞いた。
夏の終わりを感じさせる涼風が、緩やかに吹き込む窓辺で、もっと雰囲気の良い曲を聴けば良いのに、やたら迫力ある演奏に包まれ二人何を思っていたのか。
残念ながら、二人一緒の未来はやって来なかったが、その音色はいつでも脳裏に呼び起こすことが出来る。
では、また。

☞萬年より (8/23 20:45)
ベルリオーズですか……。
ロマン主義も良いものです。
齢をとったら、シベリウスあたりにいってしまう萬年です。

手段を選ばないサッカーと (サンガ戦プレビュウ)


16日間で5ゲームを消化してきた夏の連戦も、今節で一区切り。

気がつくと、リーグ戦も 3分の1 を消化する。
残りは、 3分の2 なのか……。

サンガスタジアムby京セラ への遠征は、今季いちばんの楽しみだったが、残念。
海老茶色の阪急電車も懐かしい。

〈サンガは手段を選ばない〉
さて、前節の対新潟戦をすこし観た。
そのサッカーは、ザックリいうと、
目的のためには手段を選ばないサッカー。(もちろん、良い意味で)

3 – 3 – 2 – 2 のシステムを採用。

守備の時は、5 – 4 – 1を形成し、左右サイドバックが猛然と出てきては、ボール奪取の起点を作ろうと連動する。

テクニカルかつ俊敏にパスをまわしながら、最終ラインやボランチから果敢な縦パスを通して攻撃を発動。

かといってボール支配にこだわるでなし。

前線にボールがはいると即、前を向いてゴールに向かい、どこからでもシュートを放つ。
ゲーム当りのドリブル回数は、リーグ 2位だ。

チームトップスコアラーのピーター ウタカはここまで 10得点、これは山雅の総得点と等しい。

先手先手の局面の中プレイするから、ファールが少ない。
(反則ポイントの少なさは、リーグ5位)
……、といった容貌。

つまり、手段を選ばない、の真相は、
チームとしての決め事はあるんだろうけれど、それを感じさせないほどにどこからでも、どこを使ってでも、場面場面の最適な手段を瞬時に採用して、攻め上がる、というスタイルのこと。

みずからのサッカーを、どうのこうのと定義せず、ボール長短、パス長短を窮屈に規定することもないがごとくに、ゴールに向かう。

なんと新鮮で、自在なサッカーではないか。

これを、安藤 淳のキャプテンシイ下でやっていた。


〈総力戦ができるサンガ〉

さらに、新潟戦は、前節から先発を9人変えて臨み、アルビレックスを翻弄して自分のサッカーをさせなかった。(結果は、先制したものの、1 – 1のドロー)

誰が出て来てもおんなじサッカーをやる見本で、これには驚嘆。
チームとしての意思統一がゆるぎないあかし。

〈あれもこれもでは 墓穴を掘るぞ〉
毎度のことになるが、相手の出方にあまりに対策的、かつ、ナーヴァスになったってしようがない。

我が強みの発揮に集中すべきでありましょう。

今や、山雅の強みとは、相手の力を削ぐ、相手の弱みを最大化することではなくて、いま在るタレントと連携を最大限に表現して攻撃を仕上げること、に変転しているのでは?

具体的には、京都3バックの両端のスペースに、こちらのサイドバックが何度侵入して、どれだけのクロスを浴びせられるのか。
あとは、中盤の、ボランチのところでボールの回収と奪取で先手を取れるのか。

―これくらいを徹底して、前を向いてボールをさばく時間を長くすること。

消極的なプレイはとにかく捨てて、果敢に挑む道を選ぼう。

上手くすれば、勝利の女神の前髪くらいは、つかめるかも知れない。

では。

傑作が 三つもあれば 大威張り

レオン ラッセル (1942~2016) のことを言っている。

『Superstar』(1969年)
『A Song for You』(1970年)
『This Masquerade』(1972年)

レオンが、半世紀前の当時、立て続けに紡いだ曲がみっつ。

これらは、カーペンターズ(1969~1983) が採りあげたことで、こうまで世に知られる幸運を得た。

他にも多くカヴァーされて来たし、これからも、聴かれ続けるだろう。

この3つの楽曲を創れば、ソングライターとしては十二分な仕事で、大威張りってもんでしょう。

8月12日で 66歳になったパット メセニイ (Pat Metheny、ギター) が、This Masquerade をなんとも元気に演っている。
メンバーそれぞれの持ち味が、なんとも良いね。

ヤマハは、トロンボーンも作っているのか?とか、楽しんでいる。

では。

〈コメント〉
☞つー さん より  (8/21 16:57)
三つの恐怖百まで。
三つの傑作曲から、何故か全く関係のない三つの映画の恐怖シーンが浮かんだ。
ひとつは、1954年公開の「ゴジラ」本田猪四郎監督によるゴジラ映画第一作目だ。黒白映画の効果もあり、そのゴジラは恐怖の象徴として完璧な姿をしていた。
その中に、夜行列車を襲うシーンがある。ゴジラによって宙吊りになった列車から人々が墜落していく、このシーンが異常に脳裏に焼き付いている。
次が1963年、同じく本田猪四郎による「マタンゴ」無人島に漂着した若者が、キノコを食べてキノコ人間になると言う、いたって真面目に作られた映画だ。佐原健二、土屋嘉男、水野久美らの名演技で実に怖い映画に仕上がった。二度見に行ったが二回とも余りの怖さで途中退場したという曰く付きの作品だ。
併映されたのが若大将シリーズだったので、その明るさのギャップでより怖く感じたのかも。
そして、最後が岡本喜八監督による1967年公開、「日本の一番長い日」だ。
その中で、三船敏郎演じる陸軍大臣阿南惟幾が、8月15日、敗戦の責任を取り割腹自殺をするシーンがある。子供の私にとっては余りにもショッキングなシーンであった。
子供の頃好きだった、若大将シリーズ、植木等のサラリーマンもの。2作目以降のゴジラ映画、駅前食堂シリーズ、社長シリーズ等の面白さの裏で、時折脳裏によぎる恐怖の3シーンではありました。
では、また。

☞萬年より  (8/21 19:16)
思うに、〈南海の孤島〉という設定が恐怖のベースにあるんじゃあないでしょうか。
これらの映画が作られる、ほんの20年前には旧日本軍の兵士が飢えをしのいで彷徨った、という因縁も当時は生々しかったのでは?

社長シリーズかぁ。
森繁のアドリプっぽいセリフ、三木のり平演ずる、右顧左眄の中間管理職など、ジョークのなんとも言えぬスピード感が堪りません。
好色な男たちを軽くいなす女優にも恵まれていましたね、当時。
では。