『Who’ll Stop the Rain?』

天候だけを言うんだったら、サッカーという競技の特質上、ゲームをおこなわないといけなかった。

ただし、密着をうたっている、その地域に、警報が発令されたり、避難指示が出た日には、アルウィンだけが愉しみに浸っているわけにもいかないし、交通も遮断されていれば、出入りする人々の足許も危ういし。

―まぁ、セルジ―ニョとか、万全の態勢でサンガとやれる、って考えればいいことで。

―あらま、ツイッターなんかでそう言ってる人がけっこういたりするのよ。

さすが、山雅ファミリー、考えることは同じ、ってことでしょうか。

では。

山雅 決意の河を渡れ。


京子さんから、煽りのメールが家人宛てに入る。

―もろもろなこと、今朝ジャンプの新聞で確かめて、と。

そこで、隣家に頼み込んで、読み終わったニュースペーパーをもらい下げて来た。

ふむふむ。

首位京都との対戦の厳しさ、新戦力に関する内輪話等々、話題には事欠かない。

どうやら本日のゲーム、注目のひとつは、昨秋に大怪我を負った 山口 一真がメンバー登録されるかどうか、であるらしい。

秋田戦で途中投入された伊藤 翔(移籍加入)に続き、新しい戦力がいよいよアルウインのピッチで、あからさまになるのか。

で、その次は、コンディションを100%にまで高めた、セルジ―ニョと御目文字、という流れ。
(選手登録の手続きは、8/13に完了したので出場はいつでも可能)

まるで、ホップ ステップ ジャンプ の、FWの揃い踏みストーリー。

2021初秋のプレゼント、とでも名づけてしまおう。

阪野、鈴木、ルカオらにしたって、当然、黙っちゃあいないだろうから、なんとも熾烈な、前線の定位置競争、になるわけだ。

もちろん、新戦力のピッチ投入によって、すべてがオーライ、と思うほど能天気でもない僕なんだけれど、切れるカードや、引き出しが増えるという報せは、嬉しいもの。

お客さん商売は、とにかく話題性が大切。

チームがこれから飛び込んでいく、リーグ戦のクライマックス。

期待の高まりとドキドキを、この曲に託しているんです。

Many Rivers to Cross  (渡るべき河の多さよ)
written by Jimmy Cliff ,
recorded in 1969

渡るべき多くの河を眼前に
はるか自分の道を  見とおせない私
まるでドーバーの白い絶壁に沿って航行するかのよう
迷い、そして、自分を見失いそうなんだ

生きているのは  自分の意思のたまもの
何年も試され続け、疲れ切ってしまったけれど
ただただ、プライドってやつのおかげで 生き延びている

孤独は 私を 解き放ってくれそうにないが
独力でやってみよ、という試しなのか
恋人は何も言わずに去っていったけれど
そうだ、チャレンジしよう、と 自分に言い聞かせる……

今回は、トニ チャイルズ(Toni Childs 1957~ ) によるカヴァーで。

では。

一点の曇りもなき (サンガFC戦プレビュウ)


京都と戦ったのは、約5箇月前(3/7) の、第2節。

たしか、じりじりと痺れるような内容の、スコアレスドローだった、のは憶えているが……、はて、サンガって、どんなサッカーだったっけ?

そこからいろいろと変化変転があった僕らにとって、なかば記憶のかなたに茫洋としてしまっているのではないか?、実際のところ。

それではいかんと、前節の、ホーム町田戦(2 – 1で勝利) をDAZNで観たのであります。

〈遊びも、余分もないサンガ〉
結論から言うと、ゲーム冒頭のたった5分間もすると、京都のやってるサッカーは、歴然と理解される。

そこには、様子見もなく、秘密や秘策など微塵もなく、直截で、あからさま。

ただただ剛直に、ひたすら相手ゴールに迫るサッカー。

現監督、ベルマーレでもそういうサッカーを志向していたような。

初期布陣4 – 3 – 3 が、2 – 5 – 3に変容すると、攻撃圧を強めて侵攻する。

センターバックの#23ヨルデバイス、または、両サイドプレイヤー、いづれの起点からも、鋭いボールが切り裂くようにして、ペナルティエリアあたりに走り込んできた#9ピーター ウタカに入ってくる、という方程式。

脅威なのは、飛び道具(=ロングボールやクロス) ばかりではない。

サイドバックの、#2飯田や、#17萩原が、勇猛果敢なドリブルで地上戦を仕掛けると、ボールをペナルティエリアに持ち込んでくるのだ。

ボールが一旦ウタカに収まってしまえば、今季、ここまで12得点7アシストの個人技が存分に発揮され、シュートまで持ち込んでしまう、という寸法。

町田戦の、2得点。
これは、ウタカとイスマイラの両FWによるもの。
それがキックであっても、ヘディングであっても、最前線のプレイヤーが仕事をキチンとする図式は、やはり、サッカーの王道だろう。

24ゲームを、ぶれずに戦い続けた結果の、リーグトップ。

― 恐れ入りました、と素直にその強さを認めるしかありませんわ。

〈ディフェンス網の真価と、よってたかる攻撃の深化〉
でも、当方にしたって、それに平伏するわけにもいかぬ。

❶守 備
飛び道具、地上戦のどちらにしたところで、最終的には、ウタカやイスマイルと身体を張った勝負になることは必定。

星キョーワァンは、ウタカとの真っ向勝負を制することに専心だ。

ただし、できるならば、最終局面となる前に、バイス、あるいは、サイドプレイヤーからのボール供給を絶ちたい。

前線とボランチによる京都センターバックの追い込み、それと、両サイドバックが京都のサイドバックを自由にさせない、これがポイントか。

❷攻 撃
京都はセンターバックの二人が最基底に居残るような格好になる。

ゆえに、この両脇のスペースを速く侵すような反転攻撃が必要。

ロングボールであっても、ショートカウンターであっても、秋田戦で魅せたように、サイドから逆サイドへとボールを動かし続け、そして、シュートで仕上げる、がいったい何回できるか、が鍵。

その中で、守備にかなり疲弊するとは思うけれど、センターバックが相手陣内の深いところまでボールを持って駆け上がるぐらいをしないと、京都の中盤にはなかなか穴は開かない、と思います。

攻撃は、寄って集ってコレクティブに、これがひとつ。

ふたつめは、セットプレイを狡猾に緻密に。

……、こんなことを手を抜かずにやり通せば、果報がこちらに転がり込んで来る。

そう思って、悲観的に準備して、楽観的に戦うしかありません。

とにかく、首位のチームとやるのですから。

では。

基本スタイルと修正と (秋田戦レビュウ 後篇)


4得点のうち三つは、こちら側、つまりは、アウェイゴールでの出来事だった。

すべてが秀逸のシュートだったためか、一瞬のことで、その詳細も見極められず。

しかたなく、その都度、前方に出て行って振り返っては、オーロラビジョンに映されるリプレイを見上げて納得している、そんな山雅ファンサポーターの皆様でありました。


要はですね、ホーム&アウェイのゴール裏は、ほとんどフラットなコンクリートの階段状。
それなりの地上高もないから、トラックの彼方でおこなわれているゲームの臨場感にかなり欠けて、視認性も良くない。

しかも、アウェイゴール裏からはゲームの時間進行がまるっきりわからない。

……、とまぁ、今後、修正するお気持ちがあるのかないのかは不明ですけれど。

苦言は以上、さてと、後編は、主に、ゲームマネジメントについて。

先の五輪日本U24チームについて、いちばん面白くなかったのは、ゲーム内の修正や、相手の虚を衝くような策の繰り出し、を感じなかったこと。

監督采配のほとんどは、先発のメンツに尽きてしまい、交代カードによって戦い方が変わるマジックは、期待薄だった。

対秋田戦は、それよりかは、かなりわかりやすい。

❶秋田のスタイルは、ひたすら不変。
守から攻への切り換えの瞬間、ボールを遠くへ蹴り出すと、前線プレイヤーが既に落下点めがけ走っている、というオートマティカリーを身上とする。

この時の、手数と時間のかけ方をいかに素早くおこなうか?、に賭けるわけだ。

前半の中盤、山雅はこれにずいぶんと手こずっていたが、後半に入ると、相手を真似するかのように、ロングボールの蹴り出しを敢行。

たまたま、後半開始早々に追加点が入って、ゲーム進行に余裕が生じた事情もあって、これが奏功。
セカンドボールが拾えるようになる。

加えて、競り合いの部分では、リフレクションを怖れずにボールを叩くことで、競合そのものの負荷を減らした。

ただし、ゴール前30mに侵入すると、トライアングルのワンタッチパスを織り交ぜ、人がスペースにどんどん入ってくるようにボールを動かすことで、秋田守備の目線を左右に振り続けて、シュートチャンスを創出。

スタイル遵守の相手に対しては、みづからが変わりながら、しかし、追求するボール支配は押し通す、それが今回の勝因だっかのかも知れません。

ここらのさじ加減、かなりむづかしいチャレンジかも知れぬ。

最後に、蛇足です。

主審清水なにがし、との場内アナウンスがあった時、あぁ、あの御方か……、と不安になったものの、なんと、カードが1枚も出なかった。

クリーンなファイトに徹した両チームのやり方にも、山雅がのびのびと闘えた要因があった、と考えています。

では。

変貌の一里塚を楽しめ (秋田戦レビュウ 中篇)


名波山雅となって、10週間が過ぎて。

基軸はぶらさずに変容してゆく一里塚の中身、それが、秋田戦の価値だった。

4 – 1 という勝利は、ほとんど出来過ぎのご褒美、と考えることにして、そこからもらった愉しみのいくつかを、挙げておきましょう。

❶センターバックの安定
昨季から取り組んできた守備陣の若手登用。
これにはけっこうな授業料も払った (DFのミスによって落としたゲームもチラホラだ)が、ひとつの達成をみつつある、と思う。

右から宮部、星、常田と並んだセットは、平均年齢23歳のトリオ。(バックアップが、そして橋内とは)

4得点のうちふたつは彼らによるもので、攻守への貢献は大きかった。

❷ダブルボランチの選択
今回は、佐藤と平川。
相手攻撃の摘み取りにおける佐藤の貢献が大きいのは相変わらずなんだが、そうであれば、平川には、もっと攻撃参加を望みたいですね。
自己主張をかなり強くしても、いい。

❸サイドバックの運用
今回は、右が下川で、左は前。
え?、と思いましたが、これ、結構効いた。
右にこだわりをみせておいてから、一線に並んだ秋田守備の頭上を越えてサイドチェンジすると、ズドン、というやり方は、3度目の正直で、先制点として実りましたし。

前のサイドバック起用は、ゲーム中のサイド活性化への布石として有用。

彼をボランチへ転用しながら、新たなサイド要員を投入できるわけで、この日は、外山というカードを投入できて、それが4点目の伏線となった。

ゲーム前練習では、下川は左、前が右にあってクロスを入れていたので、これ、秋田陣営の目を眩ます意図だとしたら、なかなか細かいところまで気配りがあった、というべきでしょう。

しかし、田中パウロを温存するなんてのは、なんとも贅沢な陣容です。

❹前線の、タレント組み合わせ
この夜は、阪野がワントップ気味にプレイしていたけれど、今後も、3人の並びを自在に使いながらの起用となりそう。

特に、小手川先発は、萬年の切望であったし、ボールの動かしにおいてかなり貢献していたように思う。

彼の場合、ボランチ的に最終ラインでボールを捌くこともできるので、自在に動く駒として重用すべきだ。

―これにさぁ、セルジ―ニョも入ってくれば、一体どうなるのよ!

とは家人の嬉しい悲鳴ってやつなんですが、伊藤 翔、ルカオ、そして山口、セルジ―ニョか。

前線の構成は、首脳陣の、手腕発揮の魅せどころですな。

次節以降、ワクワクがさらに高まるではありませんか。

では。