グ~の音も出ない正論。 (或る人種差別)

あまりにも明快な、差別への切り返しだったので、論議さえ起こらなかった、というお話。
内容は、審判団によるお粗末な顛末なんですけれど……。

2020年12月9日。
場所は、フランスのパリ。
パルク デ プランス(原意:王子たちの公園)の、スタジアム。

当夜、パリサンジェルマンFC vs イスタンブール バシャクシェヒル が、
UEFAチャンピオンズリーグ予選リーグのゲームとして開催された。

試合は、ネイマールのハットトリックを含め、5 – 1 でPSGが圧倒したが、
このゲーム、前半の20分から始められた。

というのは、前夜のゲーム途中で、両チームのプレイヤー全員がゲーム続行を拒否、ピッチから去ってしまい、中断やむなきとなった再開戦だったから。

ここで、前日に起こったことを簡単にたどってみよう。

ゲームが13分を経過した頃……、
❶バシャクシェヒルのアシスタントコーチのウェボ(元カメルーン代表FW)が、相手DFキンベンパの厳しいチャージに激昂した。

❷第4審判であるコルテスク(ルーマニア人)はこの様子を見て、無線マイクで、主審に(おそらくルーマニア語で)「あそこの黒人だ……あんな振る舞いはない……見に行って特定してくれ……あの男、あの黒人です」(AFP記者の翻訳) と発信する。

❸その発言をマイクで聞いたウェボはさらに怒りを募らせると、英語で抗議しながらピッチに出て来て、結局は、レッドカードによる退場処分を受けた
……という流れ。

抗議に対し、この第4審判は「ルーマニア語では、ネグルは、ただの黒いという意味だ。差別的な意味はない」と釈明した。

当夜の審判団は、ルーマニア人のセット。

もちろん、英語では〈ネグロ、二グロ〉は第一級の差別用語だ。

で、この出来事のポイントは、この次だった。

バシャクシェヒルのベンチメンバーだったデンバ バ(元セネガル代表)は、こう弁明した審判に向かって、猛然と問い詰める。

「あなたは白人プレイヤーに向かって、〈この白人〉とは言わないだろう?!
ふつうに〈this guy〉と言うはずだ。なぜ,、黒人プレイヤーに向かっては〈この黒人〉と呼ぶんだ!」

事態紛糾の中、こう切り返せるのは、かなり機敏な頭脳です。

約10分後、「みんな来い。もう、うんざりだ。これがフットボールなんだな。俺たちはフットボールがしたいのに」と言うデンバ バを先頭に、同チームのプレイヤーは全員がロッカールームへと引き揚げてしまう。

さらに、PSGのプレイヤーもこれに同調、あとには無人のピッチが残るのみ。

事態を受けて、仏スポーツ大臣は会見で、「誰かを肌の色で指すのは受け入れられない」と語ったとか。

再開ゲームとなった9日、審判団はオランダ人セットに差し替えられ、ゲーム開始前には、人種差別に反対する儀礼がおこなわれたようだ。

この報に接し、現実の差別に遭遇したら、かように毅然と対応できるのかを自問しながら、
『あそこの白人が!』といった発言が差別となる日が、はたして来るのかな?、と夢想している。

では。

アルウィン凱旋の日は近し。

2020天皇杯がらみの話は続きます。

準決勝のひとつは、フロンターレ vs ブラウブリッツ秋田 だった。

ハイライト動画を観ただけだが、まったく予想通りの展開。

力の差を前に、相手の攻撃を凌ぎ切ってから反転の攻め、という立場を採らざるを得ない秋田であったけれど、守備網を衝かれて、ゴールネットを2回揺らされる。0 – 2。

けれど、被シュートが14本、こちらが放ったのが 7本、というのはそれなりに喰い下がった結果だ。

秋田イレブンにとっては、2021シーズンに向けて、上出来なトレーニングマッチとなった、と割り切れば良い。

で、あと2箇月もしないうちに、山雅にとっては、秋田と対戦するスケジュールが確定してくる。
J3の戦場を、圧倒的な戦績(21勝10分3負)で席巻した、その秋田と。

中村 亮太、谷奥 健四郎はともに、契約を更新(12/31)。
久富 賢にも、そう願いたいところ。

そして、彼らが何年かの時を隔てて、アルウィンのピッチに踏み出す姿を眼にしたいものだ。

まるで、リユニオン(同窓会)のように再会を喜びながら。

(オフコース臭のしないオフコースの曲を聴きたいものだが、なかなか探せなくて苦労します)

では。

どっちも本当 の説 (2020 トップリーグのこと)

天皇杯決勝が魅せ場なしだった、というのはチト表現が違うかも知れない。

シュートを27本放ったフロンターレと、同7本のガンバ。
さらに、ペナルティエリア侵入のあかしであるコーナーキックは、川崎10本、に対しG大阪は、1本。

このスタッツだけみても、ゲーム観戦の興味がどこら辺にあったのかが、推量できよう。(萬年は、ハイライト映像で済ませた)

要は、ガンバは相手の引き立て役に過ぎず、ゴールキーパーはやたら多忙。
フロンターレからすると、あれだけシュートを放ってたった1得点は、スイマセンだろうか。

いやいや、これだけのパフォーマンスしかのガンバが、やはり御免なさい、のはず。

結論。
エンペラーズカップ決勝は、単に、トップリーグツートップの力関係を証明するゲームであって、フロンターレファンからすると、歓喜のゲームだった!

昨日職場で、ソネさんに会うと、
―昨年のJ1って、川崎が強かったと言われますが、他チームが不甲斐なかったのかも知れませんよ、との論評。

2位のガンバに、20点近い勝ち点差をつけてペナントを獲った川崎かぁ。

天皇杯の決勝結果からすれば、やはり、フロンターレは断トツだった、と思えてくるのです。

けれど、他方、下位3チームをみると、その勝ち点が、28、28、27。
その上の、15位 横浜FCにしても、33。

一昨年の山雅(17位) でさえ 31点だったことを思うと、これらは、一体なにをやっていたのか!、ということにはなるでしょうね。

ということは、トップと最底辺のチームとの序列格差は、マスマス強まった、ということでしょうか?

お金の多寡はもちろん、対外トレーニングマッチもできないのでは、クオリティの高いチームがますます有利か。

ところで、志知 孝明は今回、横浜FCからアビスパに完全移籍のもよう。

できれば、来年トップリーグでまみえたいものです。

では。

高校サッカーにリアリズムを (松本国際vs京都橘)

高校生によるスポーツはこうあるべき、という決めつけを、どこかに隠し持った実況/解説が、鼻持ちならなかった、というお話。

大晦日に行なわれたこの一戦。

挨拶がてらやって来た息子たちと、画面に背を向けてゲームに興じながら、ただTVをつけていた、という熱のなさを、まづはお詫びしたうえで、すこし書いておきます。

端緒は息子が指摘したことなんですが、
この大会、各出場チームが日ごろ、どこのリーグで戦っているのか、という視点がほとんどない。
ゆえに、実況や解説に、そういった説明や切り込みが皆無。

〈大人〉チームの大会ならば、参加ディビジョンは明確に提示される。

JFLとか、J3、といった所属リーグがわかっているがゆえに、その区別を裏切るようなプレイや勝敗に、おおく興味が湧くのだ。

県(あるいは地区)代表による、横一線、よーい!どんの、ノックダウントーナメント、という形式であっても、サッカーであるかぎりは、そういった視点は当たり前だろう、と思う。

サッカーを楽しむには、チーム力量をあらかじめ含んでおかなければ、とても浅薄な観方になってしまう。

特定のプレイヤーに対しては、某Jリーグチームに来季加入内定、とかうるさいほど言うのにネ。
ならば、同様に、大学なり社会人チームへの入部内定もわかる限り調べておけよ、ってんだ。

すべての高校チームは、最上位に東西のプレミアリーグ(各10チーム)、次に、全国9つの地域プリンスリーグ、その下に、各都道府県リーグ、といったピラミッド型に組み込まれていて、その階層の中、しのぎを削っている。

(リーグ成績によって、その間に昇降格がある)

たとえば、京都橘高は、〈スーパープリンスリーグ関西〉に在って、今季の成績は、第6位。

このリーグには、14チームが属し、JリーグU-18が3つ、高校11つの編成。

上位からたどると、セレッソ大阪U-18、東海大付属大阪仰星、履正社、ヴィッセルU-18、阪南、そして京都橘、次には、興国、大阪桐蔭……、と続く。
まぁ、聞いた覚えある錚々たるメンバー。

他方、松本国際は、長野県リーグの1部に在って、今季は8チーム中の第8位。
このリーグには他に、成績上位より、都市大塩尻、松本第1、上田西、長野パルセイロU-18、松商学園、東海大諏訪、長野日大が所属。
(ちなみに、県リーグは、1~4部で構成される)

リアルな話、松本国際の諸君は、相当な力量と経験差を前提にしてゲームに立ち向かった。

ゲームを3分も観ていれば、彼我の出発点は、明白ではあった。

国際は、どうだろうか、パスを3回を超えて続けることができず、ことごとく橘のディフェンス網にボールが回収される。

こうなったら、果敢に橘最終ライン(おそらく3バック)の裏を突けば?、とは思うが、戦術として錬成していないのか、あるいは、向こうの攻撃圧の前に屈してしまったのか、なんとも。

結局、多彩なフィニッシュで、0 – 6 の敗戦だったのであるが、もしも、他流試合を申し込んだなら、相手は、セカンドかサードチームで対応してくるような世界なんだから、この結果に下を向くほどのことでもない。

まぁ、こういっている大人より、当事者たる高校諸君生のほうが、ずっとリアリストであって、力量さをキチンと受け止めて明日に向かっているんでしょうね、きっと。

高校サッカーに、ウエットなまなこではなく、乾いたリアリズムで接す。

見どころに欠けた天皇杯決勝に対するのと、同じ視点で。

では。

ひめくりを また一枚の 春来たり

いつの頃からか、年賀状のようなモノは別にして、正月の決まり事やらを、出来る限り生活に取り込まなくなった。

晴れの日を否定はせぬが、祭りのあとの引き潮みたいなムードを感じることが嫌なんだろうな、と自分のココロを推しはかっている。

あるいは、日常生活にまた戻るエネルギーをあらかじめ惜しんでいる、のかも知れない。

そう言えば、もう、帰省する処もなくなった。

年末にささやかな馳走が並ぶのはよいが、正月に餅など食さなくとも一向に平気。
思うに、できたての餅を美味しくいただいた経験がないのも大きな理由か。

ご幼少の頃、母が、餅に出来た青かびを包丁でそぎ落としていたのを想い出す。

昨日から今日にかけて、ただ日めくりを一枚……、そんなのが理想です。

コロナ禍で苦しむ方々には誠に申し訳ないのだが、余儀なくされたルーチンを素直に受け入れてしまえば、それはそれで、静かで、落ち着いた内省的な生活が実現した。

結局、世の中は他人にゼニを使わせてナンボ、といったカラクリと限界があからさまになっただけ。
で、この環境下、お金の使わせ方があらたに考案され続けている。

ここ一年の変化は、決して非日常でもなく、これからしばらく先のスタンダードと考えよう。

同名曲は、ルイ アームストロングの歌ったやつが有名だろうが、萬年はどうしても、サム クックのほうに肩入れしてしまう。

『What A Wonderful World』を、こういう顔ぶれで演っているのは嬉しいね。

では。