臨戦 2022 その❹ (怪しくてこそ山雅)

前回その❸で、失点論をしたら、
名波氏が、静岡県のローカルなスポーツ番組で、(山雅では)ディフェンスを育てて機能させなくては、と語っていたと、教えてくださる御方がありました。

機能不全だったディフェンスの立て直しには、ふたつのポイントを考えます。

❶年を追うごとに、山雅のディフェンスラインは高い位置を採るようになっていて、それは相手陣内におけるボールポゼッションの時間と量が多くなっていることと比例。
要は、陣形が、より前がかりになっている。
特に、負けているゲームだと、得点が要求されるから、ますます前へと傾斜する。
すると、ディフェンスラインの後方にはそれだけスペースが生まれるので、ここの部分を手あてしないと、裏を狙われて背走、失点となる。

❷前回のサイドのお話と関係するんですが、守備に回った時、相手を捕まえる場合、昨季、横のラインがずいぶん乱れていた。
過密と過疎がない交ぜになっていて、対人の受け渡しも巧くいかず、突破されていたように思う。

……こういった事情からすれば、もはや、〈専守〉という発想は成り立たたず、攻めるための守備を前提にして、攻守一体で改善を入れなければいけません、山雅の場合。

そこには、4バックを視野に入れた検証も含まれると思うんですが、今回の安田  理大の加入には、なんだかそんな雰囲気を感じます、感じたいです。

新体制で、背番号 #2、#6、#11、#10 が空いているのは、なんらかの結果だろうなぁ?、とは思いました。
誰れも希望しなかったとか。
でも、少々含みを持たせて、怪しいところがあってこそ、山雅らしい。

安田の加入が、とってつけたような結果に終わるのだけは、ご勘弁。

要は、彼の持ち味を使い切ってもらって、攻撃的な守備を魅せて、ということ。

では。

【改題】臨戦 2022 その❸ (御嶽海が教えてくれた)


註: 2019年7月10日対エスパルス戦

サブタイトルは、― 負け方も大事です― がよろしいかと。

今場所の、その好調ぶりはむしろ、星を落としたふたつの取り組み内容で確信された。

どこぞの誰かなど、負けが決まった途端、もう、これだから、ダメ!、とまるで場所が終了しかのように、ひどく慨嘆しているので、

― いやいや、そういったイチかバチかの評価、ではいけませんよ。
かえって、負け方の良さをみないと。……と、たしなめていた萬年。

実際、あきらかに相手の気魄が上回っていた敗戦もあったが、それでも、なんとか堪え凌ごうとする姿勢が顕著であって、決して場所を棄てていない姿勢が、据わった目つきにもうかがわれる。

逆に言えば、勝った取り組みで、相手の反攻に手こずりながらも前に出るしぶとさ、が目立った。

それこそ、イチかバチかで突進することばかりではない相撲、を手に入れたかのように。

そう、オール オア ナッシング の考え方ではリーグ戦は戦えません。
それは、サッカーもまったく同じ。

ということで、今回は、被ゴール、つまり〈失点〉からさかのぼって、今季のヒントを探り出そうという魂胆。

❶2021季、山雅の総失点数は、71。
これ、Jリーグ参戦後の、ワーストだった。
2016年(32失点)、2018年(34失点)と比べると、つまりは、倍加。

守備というのは、アイデアというより、決め事の忠実な実践に負うところが大きいと思うが、その決め事が乏しかったのか、あるいは、それを守る姿勢に乏しかったのか?
おそらくは、前者だった、と踏んでいるけれど、たとえば、誰が誰をマークする、といった単純なことも曖昧だったろうし、簡単に相手をフリーにさせる残念なシーンが、やたらと在った。

守備陣の中心であった常田なんかはその象徴で、その上背(187㎝)が売りだが、守備に関しては、その優位性が活きていない。
おそらくは、今季が彼の正念場。
特に、対人マークの甘さを克服できないと、ポジションを失いかねない。

失点の形態は、ワースト1位が、クロスを投入されたことから、で、28% (20失点)。
2位に、セットプレイからが、27% (19失点) 。
セットプレイからの失点は、2020季が 25%だったから、割合としてはそれほど増加していない。
2020年は 13失点、昨季は、19失点なので、被ゴール量として目立つだけ。

いちばん着目すべきは、第1位のクロスからの被弾、これ。

2020年は、失点中11.5% (6点)だったから、ほぼ3倍に増えてしまっているんです。

サイドを割られて、そこからのクロスを阻止できずに、ペナルティエリアでシュートを打たれている。

セットプレイのうちの、コーナーキックにしても、
おそらくは、サイドを深くえぐられてゴールラインに逃げざるを得なかったり、または、クロスをクリアしたりなどから、おおくを与えたのではないか。

ならば、今季は、相手のサイド侵攻をいかに食い止めるのか?、が鍵。

ところが、問題はそんなに簡単には、解消しない。

❶今度は、山雅によるゲーム当りクロス回数をみると、16本 (リーグ6位)。
2020季は、これが、13本 (リーグ16位)だった。
リーグ全体のクロス数の増減は知らないけれど、山雅自体は、前年に増してクロス回数をこなし、クロスを多用するチームになった。

❷クロスからの得点は、昨季は、総得点中の11%(4得点)で、これは、パターンにおける第3位 (第2位のショートパスからと同率)。

同じ数字を、2020季にみると、第2位で 21%(9得点) なんですな。

つまり、前年よりもクロスは多く蹴り込んだけれど、成立したゴールは半分だった、というわけ。

……、以上を乱暴にいうと、それなりに上げてたクロスはゴールにまで結びつかず、しかも、もう一方では、けっこうサイドを割られて失点を重ねた。

難題であるといった理由は、ここです。

サイドバックというポジションは一般的に、相手のサイドバックをいかに低い位置に抑え込んでおくと同時に、こっちはより高い位置への侵入するのがミッションになる。

山雅の昨季は、けっこうサイドを割られた、と同時に、けっこうクロスを投入しているから、このバランスをどうやってやりくりして、こちらが、より相手サイドを押し込み続けるのか?、

もちろん、クロスを投入するのはサイドバックの専担事項でない。

また、いくらクロスを入れても、それに合わせるべき中のプレイクオリティもあるので、すべてをサイドバックがどうしろこうしろ、ということでもない。

ただ、クロスによって得点機会を創り出した、というチーム内の2021ランキングの上位は、下川 陽太、外山 凌、(鈴木 国友) 田中パウロが ベスト4だったから、サイドの制圧に関しては、まづは、彼ら3名の貢献を期待しないわけにはいかないでしょう。

では。

賢治 , 部下, 勝利の女神

先日、半日をかけて生活習慣病予防健診を受けた。

半日人間ドック、と呼んだほうがわかりやすいか。

そして、その午前中、佳いことが、なんとみっつもあったのだ。

❶宮澤 賢治の詩集『春と修羅』(1924年4月刊行、第一集)
作者が生前に、世に問うた唯一の詩集。
23の詩篇から成っていて、序の日付は、同年1月20日なので、約100年前の冬に、賢治は、出版準備にとりかかっていたのだ。

これを、検査の順番を待つあいだあいだに、ひととおり読むことができたこと。

❷会場で、偶然(だろう)、約6年ぶりに、かつての部下と遭う機会に恵まれた。

向こうから声をかけてくれ、お互い現役でやっている、って感じが嬉しかった。
在職中の、僕による〈13番目の男たらん〉という教えについて語ってくれて、あぁ、そんなことを言ってたんだ、と少々居心地が悪い。

❸胃の内視鏡検査。
まぁ、これがいちばん憂鬱なやつでして。

ところが、今回は、僕がもっともその腕を信頼しているドクター(女性)に当ったのだ。
少々敏腕すぎるきらいはあるが、被検査者にたいする指示が的確、仕事が迅速。
あれ、もう終了?、なんて思うほどの手際。

前回など、よっぽど悪い所見があったので、検査中断なのか、と焦った焦った。

今回は、ナイキのスニーカーを召していらっしゃっていて、僕にとっては、まさに勝利の女神(ギリシア神話のニケ) でありました。

検査終了時には、「また、お願いします」とかおっしゃる。
家に帰って、家人に、あれってどういう意味なんだろう?、と訊いてみたら、
― リピーターを創るといった営業努力じゃあないかしら、との返事。

そうだとしたら、なかなかたいしたものです。
こういうのを、技魂商才、というんですかね。

なにごとも感謝しておこない、出来たことを感謝する、といった感じの一日ではありました。

では。

Look Toward 2022 その❷ (陣容いよいよ定まれり)

本日の始動、というゴールから遡って、時間をかけてチーム編成をした感がありますね。

外山 凌、浜崎 琢磨との契約更新。

圍 謙太郎とは、ライバルとして対峙、そのゴールネットを揺らしてみせる楽しみが増えた。

僕が騒いでいた、フィジカルコーチも選任されて、チームの腰が定まった、ということ。

あとは、外国籍プレイヤーの合流が上手くいくように祈る。

昨季の陣容をひどく壊すことなく新シーズンのスタート。

この編成が、吉と出るか凶と出るかは、すべて自分たちの取り組み次第でね。

きっと、J2を闘った戦力をほぼ保持、昇格候補の一角に、なんて見出しがメディアには流れるんだろうが、それは、明らかに盛り過ぎ。

2部リーグのドン尻で終わったチームであるんだから、今さら、それ相当の戦力とか言った日には、それこそ、サッカーの神様に叱られる。

これから11月の下旬までの間、我らは、2部リーグにふさわしいチームであること。
それを証明する旅が続く、とファン&サポーター自身も思わなくては。

ところで、第4節は、久方ぶりの三ツ沢競技場。
YScc横浜とやるってのは、萬年が予想したとおりでありました。(消去法でいくと推定可、それも3択でしたけどね)

果たして、隼磨は、松井 大輔とピッチでやり合えるんだろうか?

そして、シーズン日程の終末は、ホーム相模原戦。

これもひとつの因縁、ひとつのモチベーション。

さてさて、その日をば、どんな状況で迎えているんでしょう?

シーズン直前の今は、なんでも言える、まことにいい時季、楽しき時。

では。

明るい面をみて生きる『野のユリ』(1963年)

ご逝去も知らないで、10日も過ぎてしまったことを、心苦しく思っている。

シドニー ポワチエ (1927~2022) が、今月6日、94歳で亡くなった。

ポワチエと言えば、僕にとっては、なんといっても『In the Heat of the Night』(1967年) の、フィラデルフィア市警殺人課、ティップス刑事。

この作品は、オスカーの作品賞と主演男優賞を獲っているが、男優賞は、共演のロッド スタイガー (1925~2002) に与えられた。

頑なな人種差別主義者であった田舎町のシェリフ。
その彼が、都会のエリート刑事(ブラックアメリカン)の才能にすこしづつ惹かれていく演技はみせる。
ちなみに、スタイガーでは、『夕陽のギャングたち』(1971年 伊西米合作) が良かった。

で、ポワチエは?

というと『野のユリ』(1963年) で一足早く、オスカー(主演男優賞)をもらっている。

アリゾナの砂漠をひとり(車で)放浪していた黒人青年が、ひょんなことから、修道女たちの熱意にほだされて、教会建築にのめり込んでいく、という物語。

ラストシーンは、最後の魅せ場なんでそれを観て、弔意をあらわそう。

歌唱されている曲『Amen』はトラディショナルなゴスペル。

僕は始め、この曲をインプレッションズが歌っているのを聴き、

その後、この映画で使用されて有名になったことを知った。

ポワチエという役者と演技から発散される、人間への信頼みたいなものが、しっかりとこっちに伝わってくる、佳いシーン。

では。