スタイルを全うするには (FC大阪戦レビュウ❷)

第9節を、強く印象づける光景のひとつ。

前半39分、前線で奪ったボールを、菊井が、絶妙に横へと供給して村越に打たせたシーン。
なんと凱光は、むづかしくもないシュートを、枠外に外してしまうんだけれど、この時、詰めていた菊井、小松、榎本の、我が事のように悔しさを表す落胆ぶりのアクション、といったらなかった。

これ、ゲーム前後の円陣も含めて、今季、チームが、かなりの結束感を持って臨戦できている象徴的な場面だった。

ここを底流にして、

個の技量と、戦術への親和性、というフィルターを通過したプレイヤを使うことをハッキリと打ち出しているのが、いまの山雅だと診ています。

ただし、今後、こういう原理をまっとうしてリーグを制するには、ここへ来て課題が露わになっていることもたしかで、

前に指摘したとおり、アスルクラロ戦が、山雅攻略法を、他チームに提示したことは間違いない。

以降、山雅対策がかなり徹底されてきていて、相当に苦しいゲームを強いられていて、今後、長野、鹿児島戦も、それを克服しなければ、良い戦果は期待薄。

特に、ボールポゼッションにこだわらないスタイルの相手とやる際には。

〈突き抜けるべき課題〉
❶山雅センターバック(ふたり)、さらに、そこからサイドバックへのボール供給の部分で、相手フォワードと、ボランチによる追い込みが、より強度を増していて、ここをはがして前方へボールを運ぶことをクリアできないと、攻撃が停滞する。
大阪は、こっちのセンターバックへフォワードが猛追をし、山雅サイドバックには、かならずふたりでアプローチをかけてきて、プレイを窮屈に、そして、前へのパスコースにフタをしてきた。

これに対しては、こっちの2列目、ボランチが、サイドバックと連携を保ってボールをやりとりする、あるいは、ボランチ経由で逆サイドへ振るなどして相手守備をはがすことが必至で、

☞この点、安東 輝の復帰は、かなり大きいのと、菊井の自由度は、そのまま保つべき。

☞下川については、左で活かすべきで、そのためには、右サイドバックにもう一枚カードを持つ必要があって、それには、宮部 大己が適役だと思うが。

❷前線からのボール追い込みは続けるとして、これに連携して2列目、ボランチが連動していかないと、中盤がポッカリと空き、ここを自由に使われている。
今一度、連動を強化して、〈守功一体性〉を保持しよう。

相手の狙いは、山雅の陣形を寸断することにあって、それによって、ロングボール戦法だったり、カウンター攻撃を発動したいのだ。

以上❶❷、あくまで志向するスタイルを、一本筋として通すなかで、

大坂戦、終盤でやったように、3バックも辞さないといった、なりふり構わずの姿勢、それと効果的な交代枠運用で、とにかく、前へ。

(註 北ゴール裏の同志チノ氏より、おおくの示唆をいただきながら)

では。

割り切りの勝利 (2023.5.3 FC大阪戦レビュウ❶)

ゲーム後。

アルウィンに流れる〈中央線〉(by ブーム)を聴きながら、

― サッカーはどうだった?、と初観戦の男児に訊くと、

― (東京ドームは5分で飽いたけれど)、20分くらいは面白かったよ。

そうなのだ、ゲーム開始からの、まさに、その20分間。

山雅がよりマトモなサッカーをやっていたならば、彼の関心は、もっと長く保たれたに違いなかった。

というのは、後半の後半になって、山雅のギヤがようやく回り始めると、スタジアムの高揚は増して、その熱気は自然と、おさな児にも伝染してしまったからだ。

強風の中、風下のピッチを採らされたこともあって、

ロングボールでスペースを獲りに来る大阪に対し、ある意味、割り切って対応した山雅という構図が、そこには在って、

とにかく、ボールが落ち着かない、バタバタ劇。

前半は、無失点で過ごせればいい、というのが、こっちの思わくだったろうが、

大坂にとっては、山雅のサッカーを封じる、ほぼしてやったりの経過であったと思う。

ゲームがそのままで終わっていれば、

もちろん、正真正銘、今季最低なクオリティ、との評価だったが、

そこを持ち堪えて、こっちに勝ちを手繰り寄せた山雅。

10節を目前にして、ここまで課題が露呈したのは、かえって良いこと、とポジティブに、

〈割り切り〉とは、やってるチームと、観る僕ら、双方にとっての合言葉、と考えましょう。

では。

午後3時の開眼。

― 午後の3時、なにかを終えるには早く、なにかを始めるには遅い時間。

おぼつかない記憶だが、サルトルの小説の中にあった一節のような気がする。

本日、対FC大阪戦は、そんな頃に、キックオフ。

晴れていれば、陽光の位置が、コーナーキックの攻守に、(文字通り)影を落とすかも知れないな。

ところで、今日の観戦は少々大所帯の予定で、その中には、サッカー初観戦の 少年(7歳) もいて、

その子が、昨夜、

― 僕ね、5分で飽きちゃったんだよ。

なんのことかと思ったら、彼、最近、プロ野球のゲームを観戦したらしく、その時の感想。

サッカーもそんなかな、どうなんだろう? と思案している。

45分を2回やって、その中間に 15分の休憩がはさまるから、だいたい2時間くらいはかかる、と教えると、

90分間なのね、と足し算している。

野球は攻撃と守ることがハッキリ分かれているけれど、サッカーは攻守の入れ替わりが激しいから、時間の流れが全然違うよ、とはこたえておいたけれど、

さて、あと数時間後の午後3時。

この子が、サッカーの面白さ、アルウィンの美しさに、開眼できるんだろうか、否か?

本日、格別のお楽しみ。

では。

原点に戻れ (FC大阪戦プレビュウ)

おいしいのは、やっぱり老舗山屋さんの飴だから(あやみどりに文句は言っていない)。

そのハイライト映像を、いくつか拾って観てみたけれど、

FC大阪に関して、正直、キチンとした像が、僕のアタマの中に結ばれない。

情報が少なすぎるのと、それを増す努力がおっくうで、といった、怠惰なお話しに過ぎないんです、実は。

たしか、中村 亮太や浜崎 拓磨が、かつて在籍してたよなぁ、

JFLで 8年かけてクラブとチームの基盤をこしらえて、今季Jリーグへ昇格かぁ、きっと取り巻く人々は、新鮮な空気に囲まれているんだろう、とか。

それくらいなんでありますから、わかった風を装って、プレビュウを書くのも不遜な気分。

となれば、連休中のアルウィンという格別の舞台装置のことは、ひとまづ置いて、

山雅よ、そのめざすサッカーを強く求め、ピッチで熱く躍動しておくれ、が言いたいことのほとんど。

❶フツーにやれば、ボール保持のシーソーは、こっちにかなり傾くだろう。

でも、ボールを握っていること、イコール、当方の優位性、という式が成立しないのも、サッカー(の皮肉)でありまして、

なんのためにボールをこちらが動かすのか?、の原点に戻って、シンプルにやりましょう。

いっそ、4 – 3 – 3 のボランチひとり態勢にしてしまい、その分、前線と2列目が活発に上下動するほうが、相手は嫌だと思いますがね。

❷要心すべきは、一旦ボールが止まって、プレイが、相手によって再スタートする時の対処。
セットプレイ、すなわち、フリーキックやコーナーキックの対応に手を抜くな。

……、言いたいことは、これくらい。

観たくないのは、焦点の定まらない(=何をやりたいかが不明瞭な)サッカー。

それだけは、御免蒙ります。

明日は、仕事を切り上げてから参戦。

では、では、アルウィンで。

未来から見たら,不足は? (富山戦レビュウ❷)

最初に、第12節で、リーグ戦初勝利の徳島ヴォルティスにおめでとう、と申し上げます(4/29 3 – 2 でジュビロ磐田を下す)

さて、山雅。

ヴィクトリーを求めてやってるんだから、勝負事の評価基準は、その結果こそ、には違いない。

けれど、同時に。

仕上げたい仕事(サッカーの完成形) の、その先の方から見てゲームを評価しないと、明日以降の、残り30試合に向かっていけない。

無得点、かつ、シュート数も伸びなければ、最低、最悪と切り捨てられるのもわかる。

けれど、それでもやはり、こうやる手はないのか?、と考えてみたくなるわけです。

〈失点について〉
1点目、3点目はともに超美技なんで、あれは相手を褒めるしかない。

2点リードしてからの富山は、ツートップが山雅センターバックを追い詰めることで、ひたすらカウンター攻撃に専念していたから、ああいう被弾になる。

強いて言うと、GK村山の立ち位置の中途半端さが気になるところ。

2点目のPKは、それまでサイドで削りあっていた下川と柳下の確執が伏線にあった。
たとえ接触があったとしても、あれだけハデにひっくり返って、ジャッジ(イエローカード) を引き出した柳下の名演技にやられた、というしかない。

☞ ということで、ゲームの進め方にあっては、富山がしたたかさにおいて優っていた。

ただし、追求するサッカースタイルからして、そういった老獪さを、今の山雅に求めるのが至当かどうか?、は疑問符です。

〈守備だけを修正するな〉
直近3試合で失点が計9点と積まれれば、やれ守備が、守備が、とはなりそうだが、根本は、持ち込まれたボールをクリアして、かつ、前へ向かうボール繫ぎの、ズレやミスにつけ込まれているので、〈攻守一体〉に不足している部分を是正しなければならないはずだ。

〈指摘したい2点について〉
つまり、どれだけ前へ迫力のある連携ができているか?、という観点から。

❶不活性なサイド
後半に入ると改善された、とは言え、左サイドの山本 龍平のところで、攻撃が停滞してしまう。

ゆえに、同サイドの村越 凱光に活きたボールが渡らず、不活性だった。

これは、右サイドの、下川 陽太と榎本 樹の連動性がチャンスを多く創り出していたのとは対照的。

なので、下川を下げて(後半冒頭から)、単に同じポジションに藤谷 壮を投入するのではなくて、山本(左)のところに下川を回し、藤谷を右に入れるべきだった、と思う。

❷ボランチのチョイス
住田 将を下げ(58分)、鈴木 国友を入れ、より攻撃的にするのは良しとするが、その際、ダブルボランチを続けるために、菊井 悠介をボランチに、つまり、より低い位置に配したのが大いに疑問。

ここは、アンカーひとりの態勢で持ち堪えて、前線を厚くすべき。

パウリ―ニョの体力に不安があるのなら、喜山 康平に代え、榎本 樹は、その好調さから、90分間フル稼働でいい。

センターバックとボランチ、センターバックとサイドバックのボールのやり取りから、相手をはがして攻撃スイッチを入れるやり方を貫くならば、習熟した同士の連携に水を差すようなメンツ変更が適切かどうか?

また、前線で自由度を与えて菊井を活かすポリシーは、これを貫徹すべきではありませんか?

……で、サイドから崩す、の本質は、

そこから、いかに中央にボールを入れるか、あるいは運んでくるかであって、対富山戦のフラストレーションは、活きたボールが、ゴール正面へと到達しなかったこと。

富山が、あれだけ人数を割いてボールホルダーを追っているんだから、

もっと広い視野に立って、サイドチェンジをかませば、スペースは取り放題だった、とは思いますが、そこら辺も未熟でした……。

では。