一点の曇りもなき (サンガFC戦プレビュウ)


京都と戦ったのは、約5箇月前(3/7) の、第2節。

たしか、じりじりと痺れるような内容の、スコアレスドローだった、のは憶えているが……、はて、サンガって、どんなサッカーだったっけ?

そこからいろいろと変化変転があった僕らにとって、なかば記憶のかなたに茫洋としてしまっているのではないか?、実際のところ。

それではいかんと、前節の、ホーム町田戦(2 – 1で勝利) をDAZNで観たのであります。

〈遊びも、余分もないサンガ〉
結論から言うと、ゲーム冒頭のたった5分間もすると、京都のやってるサッカーは、歴然と理解される。

そこには、様子見もなく、秘密や秘策など微塵もなく、直截で、あからさま。

ただただ剛直に、ひたすら相手ゴールに迫るサッカー。

現監督、ベルマーレでもそういうサッカーを志向していたような。

初期布陣4 – 3 – 3 が、2 – 5 – 3に変容すると、攻撃圧を強めて侵攻する。

センターバックの#23ヨルデバイス、または、両サイドプレイヤー、いづれの起点からも、鋭いボールが切り裂くようにして、ペナルティエリアあたりに走り込んできた#9ピーター ウタカに入ってくる、という方程式。

脅威なのは、飛び道具(=ロングボールやクロス) ばかりではない。

サイドバックの、#2飯田や、#17萩原が、勇猛果敢なドリブルで地上戦を仕掛けると、ボールをペナルティエリアに持ち込んでくるのだ。

ボールが一旦ウタカに収まってしまえば、今季、ここまで12得点7アシストの個人技が存分に発揮され、シュートまで持ち込んでしまう、という寸法。

町田戦の、2得点。
これは、ウタカとイスマイラの両FWによるもの。
それがキックであっても、ヘディングであっても、最前線のプレイヤーが仕事をキチンとする図式は、やはり、サッカーの王道だろう。

24ゲームを、ぶれずに戦い続けた結果の、リーグトップ。

― 恐れ入りました、と素直にその強さを認めるしかありませんわ。

〈ディフェンス網の真価と、よってたかる攻撃の深化〉
でも、当方にしたって、それに平伏するわけにもいかぬ。

❶守 備
飛び道具、地上戦のどちらにしたところで、最終的には、ウタカやイスマイルと身体を張った勝負になることは必定。

星キョーワァンは、ウタカとの真っ向勝負を制することに専心だ。

ただし、できるならば、最終局面となる前に、バイス、あるいは、サイドプレイヤーからのボール供給を絶ちたい。

前線とボランチによる京都センターバックの追い込み、それと、両サイドバックが京都のサイドバックを自由にさせない、これがポイントか。

❷攻 撃
京都はセンターバックの二人が最基底に居残るような格好になる。

ゆえに、この両脇のスペースを速く侵すような反転攻撃が必要。

ロングボールであっても、ショートカウンターであっても、秋田戦で魅せたように、サイドから逆サイドへとボールを動かし続け、そして、シュートで仕上げる、がいったい何回できるか、が鍵。

その中で、守備にかなり疲弊するとは思うけれど、センターバックが相手陣内の深いところまでボールを持って駆け上がるぐらいをしないと、京都の中盤にはなかなか穴は開かない、と思います。

攻撃は、寄って集ってコレクティブに、これがひとつ。

ふたつめは、セットプレイを狡猾に緻密に。

……、こんなことを手を抜かずにやり通せば、果報がこちらに転がり込んで来る。

そう思って、悲観的に準備して、楽観的に戦うしかありません。

とにかく、首位のチームとやるのですから。

では。

基本スタイルと修正と (秋田戦レビュウ 後篇)


4得点のうち三つは、こちら側、つまりは、アウェイゴールでの出来事だった。

すべてが秀逸のシュートだったためか、一瞬のことで、その詳細も見極められず。

しかたなく、その都度、前方に出て行って振り返っては、オーロラビジョンに映されるリプレイを見上げて納得している、そんな山雅ファンサポーターの皆様でありました。


要はですね、ホーム&アウェイのゴール裏は、ほとんどフラットなコンクリートの階段状。
それなりの地上高もないから、トラックの彼方でおこなわれているゲームの臨場感にかなり欠けて、視認性も良くない。

しかも、アウェイゴール裏からはゲームの時間進行がまるっきりわからない。

……、とまぁ、今後、修正するお気持ちがあるのかないのかは不明ですけれど。

苦言は以上、さてと、後編は、主に、ゲームマネジメントについて。

先の五輪日本U24チームについて、いちばん面白くなかったのは、ゲーム内の修正や、相手の虚を衝くような策の繰り出し、を感じなかったこと。

監督采配のほとんどは、先発のメンツに尽きてしまい、交代カードによって戦い方が変わるマジックは、期待薄だった。

対秋田戦は、それよりかは、かなりわかりやすい。

❶秋田のスタイルは、ひたすら不変。
守から攻への切り換えの瞬間、ボールを遠くへ蹴り出すと、前線プレイヤーが既に落下点めがけ走っている、というオートマティカリーを身上とする。

この時の、手数と時間のかけ方をいかに素早くおこなうか?、に賭けるわけだ。

前半の中盤、山雅はこれにずいぶんと手こずっていたが、後半に入ると、相手を真似するかのように、ロングボールの蹴り出しを敢行。

たまたま、後半開始早々に追加点が入って、ゲーム進行に余裕が生じた事情もあって、これが奏功。
セカンドボールが拾えるようになる。

加えて、競り合いの部分では、リフレクションを怖れずにボールを叩くことで、競合そのものの負荷を減らした。

ただし、ゴール前30mに侵入すると、トライアングルのワンタッチパスを織り交ぜ、人がスペースにどんどん入ってくるようにボールを動かすことで、秋田守備の目線を左右に振り続けて、シュートチャンスを創出。

スタイル遵守の相手に対しては、みづからが変わりながら、しかし、追求するボール支配は押し通す、それが今回の勝因だっかのかも知れません。

ここらのさじ加減、かなりむづかしいチャレンジかも知れぬ。

最後に、蛇足です。

主審清水なにがし、との場内アナウンスがあった時、あぁ、あの御方か……、と不安になったものの、なんと、カードが1枚も出なかった。

クリーンなファイトに徹した両チームのやり方にも、山雅がのびのびと闘えた要因があった、と考えています。

では。

変貌の一里塚を楽しめ (秋田戦レビュウ 中篇)


名波山雅となって、10週間が過ぎて。

基軸はぶらさずに変容してゆく一里塚の中身、それが、秋田戦の価値だった。

4 – 1 という勝利は、ほとんど出来過ぎのご褒美、と考えることにして、そこからもらった愉しみのいくつかを、挙げておきましょう。

❶センターバックの安定
昨季から取り組んできた守備陣の若手登用。
これにはけっこうな授業料も払った (DFのミスによって落としたゲームもチラホラだ)が、ひとつの達成をみつつある、と思う。

右から宮部、星、常田と並んだセットは、平均年齢23歳のトリオ。(バックアップが、そして橋内とは)

4得点のうちふたつは彼らによるもので、攻守への貢献は大きかった。

❷ダブルボランチの選択
今回は、佐藤と平川。
相手攻撃の摘み取りにおける佐藤の貢献が大きいのは相変わらずなんだが、そうであれば、平川には、もっと攻撃参加を望みたいですね。
自己主張をかなり強くしても、いい。

❸サイドバックの運用
今回は、右が下川で、左は前。
え?、と思いましたが、これ、結構効いた。
右にこだわりをみせておいてから、一線に並んだ秋田守備の頭上を越えてサイドチェンジすると、ズドン、というやり方は、3度目の正直で、先制点として実りましたし。

前のサイドバック起用は、ゲーム中のサイド活性化への布石として有用。

彼をボランチへ転用しながら、新たなサイド要員を投入できるわけで、この日は、外山というカードを投入できて、それが4点目の伏線となった。

ゲーム前練習では、下川は左、前が右にあってクロスを入れていたので、これ、秋田陣営の目を眩ます意図だとしたら、なかなか細かいところまで気配りがあった、というべきでしょう。

しかし、田中パウロを温存するなんてのは、なんとも贅沢な陣容です。

❹前線の、タレント組み合わせ
この夜は、阪野がワントップ気味にプレイしていたけれど、今後も、3人の並びを自在に使いながらの起用となりそう。

特に、小手川先発は、萬年の切望であったし、ボールの動かしにおいてかなり貢献していたように思う。

彼の場合、ボランチ的に最終ラインでボールを捌くこともできるので、自在に動く駒として重用すべきだ。

―これにさぁ、セルジ―ニョも入ってくれば、一体どうなるのよ!

とは家人の嬉しい悲鳴ってやつなんですが、伊藤 翔、ルカオ、そして山口、セルジ―ニョか。

前線の構成は、首脳陣の、手腕発揮の魅せどころですな。

次節以降、ワクワクがさらに高まるではありませんか。

では。

秋田よ 秋田。(2021.8.09 秋田戦レビュウ 前篇)

註: ブラウブリッツ戦レビュウは、3回に分けて掲載の予定


ゲーム後の帰途、立ち寄ったコンビニ。

ブラウブリッツサポーターのご家族と遭遇。

― (勝ち点3だけでなく)花火もプレゼントしちゃいましたね。
秋田の美味しい酒をお土産にして、祝杯をどうぞ。(とくやしそう)

―いやいや、今夜は、たまたま勝てただけですよ。うちは、これからが勝負です。

ファンサポーターの交歓は良きもの。

無念さも喜びも、かようにオブラートに包んでやりあいたい。

左党でない僕は、残念ながら秋田の銘酒は味わえないけれど、秋田駅前のスーパーで購った、ハタハタの干物といぶりがっこで明日の朝食を楽しむんだ、と自分に言って、一路、山形/新潟をめざした次第。

ブラウブリッツ秋田の、2021スローガンは、秋田一体

また、竜太朗が大きくフューチャーされたマッチデイプログラム表紙には、
AKITA  STYLE 【誠実・献身】【躍動】【粘り強さ】【挑戦】、とある。

ゲーム前のアンセムとして、スタジアムには『秋田県民歌』が流れ、

さらに、ゲーム後監督インタビュウは、戦術的な事がらは極力簡略化しておいて、ファンサポーターの支援に報おうとする姿勢を強調する。

要は、この球団は、その存在価値を地域への還元に見い出そうとする理念に徹底していて、地方におけるクラブの生き残りを、地元の民との密着に求めている。


この点は、まったく我がクラブと軌を一にしているわけで、ゲーム云々を超えたところでも、互いに健闘しようではないか。

もちろん、クラブ存在価値の溌剌と拡散とは、仕事で成果を出し続けること、つまりは、上質で熱いゲームの遂行に多く負っている。

〈チームが本来いるべき位置で戦っていること〉が、決め手と言えるだろう。

昨夜の観客は、(アウェイ側330人を含め) 3,700人で、これは、今季2番目の多さだった。(1位は、第13節ジュビロ戦の3,900人)

中断期間の渇望感を満たそうとするファンサポーターの熱気が大きな後押しとなった数字だと思うが、このチャンスに、1 – 4 の惨敗はたしかに痛かろう。

けれど、地域に根差すクラブを目指すには、これも乗り越えるべき試練、と我がチームの足跡を振り返りながら思う。

では、山雅は?

たといアウェイの地にあっても、ホームアウェイを問わずに、観る者すべてを魅了するゲームをやり続けなくては、と感じた夜でありました。

では。

変えざるべきこと (秋田戦プレビュウ)

スペインU24について、いまだに、考えています。

あのチームの容貌は、24歳以下の俊英を集めてつくった、ではなく、A代表のなかから24歳以下のプレイヤーをチョイスした、そういったもの。

だから強くて当たり前とも、日本代表に比して格が違った、とか言いたいわけでもない。

このチームが目指したものは、相手との比較の中にはなく、自分たちの技量をベースに、自尊するスタイル、やり方をひたすら追求することにあった、それを言いたいのです。

年齢構成とはまったく無縁の、彼らが自認するスペインサッカー、がそこにはあった。

たとえばそれは、ボールを、彼我でイーヴンにするような状況を徹底的に排除するサッカーだ。
繰り出すボールの長短におかまいなく、常にボールを我が支配下に置きながら攻撃を組みたてる。
だから、サイドに展開して深くえぐっても、簡単にはクロスを投じて来ない。

単純なクロス投入は、敵味方が半々に競り合うシーンを作るだけで、ゴールへの確実性を低下させるから。

こういうのを、人によっては、ボール支配を追求したサッカー、と言うんだろうけれど、そういったこだわりに忠実な分だけ、わかりやすくて、ある意味、予測可能だった。

日本がつけ込むとしたら、予測に基づいて、スペインの定常性を乱すことで、リズムをこっちに持ってくるしかなかったように思うけれど、ボールホルダーに寄せる際の連動性、それと、相手を !!!っと、混乱させるような技量にいまだ不足していたのだろうか。

あるいは、まづはボールを持ってもらうところからスタート、という手順に忠実過ぎたのだろうか?

……、わけもわからんことを長々、と思われる向きもあるかも知れない。

長い中断、新監督の思想/戦術浸透、復調者、移籍加入などをそっくりほうり込んで、さぁ、となった時、先のスペイン代表にみられたような、新山雅としてこれだけは決して手放さないという〈スタイル〉とは何か?

それが立ち現れるのが、ここ(秋田戦) から 2~3ゲームだろうな、と踏んでいて、
それへの期待と選手起用の謎解きとが、ブラウブリッツ戦プレビュウのすべて、というのが、もったいぶっておきながら、最後は、まことにプアな結論なんであります。

久富、中村、飯尾、谷奥といった、かつて山雅でメシを喰ったプレイヤーに目がいきがちですが、
僕は、コーチ 臼井 弘貴氏(元山雅U18監督/コーチ)、サポートコーチ 熊林 親吾氏(元ザスパ、秋田)、の手腕に興味津々、一体、どういう策をチームに落とし込んでくるんでしょうかね?

では。