熱を持てない 背信感 (ワールドカップ予選大詰め)

〈こんな観戦 まづかろう〉
夕食後のうとうとから、ふと目覚めると、もう9時に近い。

水でも飲もうとして、居間に入っていくと、
TV画面だけが白く光って、日本 vs 豪州 のゲームが映っていた。

なんだよ。
点けっぱなしで、家人もソファーで、ご就寝っぽい。

― なになに?、ほう、1 – 1 の同点なんだ。

画面に見入って10秒もしたら、ペナルティエリア付近でFW浅野が、巧くボールを収めてからシュートを放つ。
これを、相手ディフェンダーがクリアしそこねてゴール、勝ち越しに成功した。

こっちは齢を重ねているが、ピッチで戦う日本戦士は、つねに30歳前後。

だから、年を追うごと、得点した後の騒ぎが、どうしても幼稚に見えてしまう。

もっと、ハニカミと、入れて当たり前の矜持を、チームの風貌として感じたいとは僕も老いた、ってものだ。

このステージ、1勝2敗。
崖っぷちに立たされ、背水の陣、との報道だったから、のべつまくなしに狂喜するほど、チームが渇望していた勝ちだった、と思うことにする。

そう言えば、指揮官解任、という文字がなにかとセットで語られていたもんな。

後でハイライト映像を観たら、2得点ともに、相手ディフェンスのミスがらみであったから、攻めてたんだろうが、絶賛級の勝利でもない。

ただし、この結果、日本は強いわ!、とグループの対戦相手に思わせることができれば、今後、相当のアドヴァンテージにはなりそう。

というのは、相手はかなり守備的に来るだろうから、こちらは作戦も立案しやすいだろうし、やることがハッキリする。

〈代表チーム 唯一の楽しみとは〉
……、とまぁ、たらたら書いているんですが、僕のサッカー事情では、いの一番に入れ込むような分野でもないので、熱の入らないことおびただしいのを、申し訳なく思うばかり。

ナショナルチームの出来不出来が、この国のサッカーの質を写しているわけでもなく、萬年にとって、代表戦を観るとしたら、その楽しみは、ひとつしかない。

それは、クラブチームと違い、指揮官が好きなようにプレイヤーを招集できる点。

なんという醍醐味、贅沢。

おそらくは、ここまでくる過程で、100人近くが集められ試された。
だから、いまのメンツは、その中で絞り込まれた、5分の1の精鋭のはず。

ところが、すこし前の報道だと、このチームを管轄するJFA技術委員会が、戦績の検証結果を発表していて、その内容が「選手選考と起用法に偏りあり」だったとか。

監督のアドヴァイザーであるはずの技術委員会が、こんな結果を発表するとは、まるで自己否定。

いままでやって来たバックアップを、みづから良くなかった、と自己批判するようなもので、にわかに信じ難いのだが、

誰を呼んで、どう起用するか?、ってのは、代表監督としてのとしての根本的な指揮理論。

とすれば、これ、監督の手腕評価として、けっこう致命的な話じゃんか。

〈あえて試練も 飲み下せ〉
ナショナルチームにとっては、本大会出場は、たしかに至上命題だろう。

けれど、そこのところに、日本サッカー全体の目標を置く時代は、とうに過ぎているんではありませんかねぇ。

1998自国開催の大会を前にして、フランス代表は、1994年アメリカ大会の出場を逃すという失態を犯す。(この時、イングランドも、同様な失敗をした)

ふたつの強豪国にとって、それはそれは、屈辱と試練だっただろうが、それがあったからこそ、得られた報いもあったに違いない、と思う。

2022カタール大会(来年11月開催)では、アジアからは、開催国のカタールを含めると、最大6か国が出場できる可能性がある。

けれどね、アジアサッカーの過去戦績からすれば、本大会への出場枠は、どう見たって、3つくらいが妥当。

3つを必死で確保する努力の中にこそ、切磋琢磨のチャンスが潜んでいる、と思うのだ。

さらに、1994年までは参加24か国であったものが、現在は32か国、これをやがては、48か国に増やすらしい。

けれど、そんな拡張は大会の質を落とすのがオチだから、もちろん、反対の萬年です。

では。

ボランチの贅沢さこそ【栃木戦レビュウ追記その❷】

補足の後半です。

武器としてのクロス、これを否定はしない。

人間にとって、対象物をば、真正面に視界にとらえるのが自然なこと。

左右、つまり視野の端から入って来る物体は、首振りという動作を余儀なくされるし、捕捉するに難儀。

クロス戦術を採る理由はそこにあって、ディフェンダーの視野や動作に揺さぶりをかけ、進入してくるボールや人への対応を難しくさせる。

だから、クロスのボールの質、そのクロスを受けるプレイヤーとの連携、それはそれで挙げていただきたいんだが、
最近の山雅にあって、不足しているのは、ゴール正面(幅)のスペースの活用と、そこへの走り込み、だと思っていて、それが、ボランチがそのスペースに入ってくる回数と迫力を増してくれ、という注文になるんです。

これがベストの具体例どうかは別にして、

例えば、2017シーズン第41節アウェイアビスパ戦(11/11)には、そんなシーンがあった。

振り返ると、このシーズンはずいぶんと苦闘した山雅、最終的にプレイオフを逃す。
鈴木 武蔵を夏場に補強するなどしたものの、そのタレントを使いこなせなかった苦い思い出もよみがえる。

その縮図として、このアビスパ戦も、土壇場にやっと同点に追いつくような展開。
なにせ放ったシュートは、たったの4本で、アビスパの3分の1だったような。

でも、それなりのシーンは作っていて、最上のやつが、パウリ―ニョの同点弾。

ここに、ハイライト映像を引用しますので、ご覧あれ。(1分29秒あたり)

ゴール正面のエリアで、ボランチ武井とシャドウのセルジ―ニョのふたりが、相手ディフェンスの注目を引き連れておいてから、ボールを、駆けこんできたボランチのパウリ―ニョに渡す。
スペースを確保しながら、シュートのお膳立てをしているわけ。

さらに、パウリ―ニョが蹴る瞬間、ペナルティエリアには、山雅の4人くらいが駆けこんでいて、ゴールに向かいながら、ボールが出てくる瞬間を狙う。

今のように、狭いエリアにワンツーでパスを通そうとすること自体はノーではないが、密集に突っかけることばかりではなく、ハイライトにあるような、相手ディフェンスに対し、こちらは時間的、スペース的な余裕を生みだしながら、フィニッシュするシーン。

こいういうの、最近、ほとんど観ませんよ。

チノ氏の指摘のとおり、ペナルティエリア付近への侵入時、センター付近がスカスカでプレイヤーがいなさ過ぎる、あるいは、そこにまでボールが到達しないで終わってしまう。

この方法、まさに、ボランチがヒーローになれる場面だと思うんですが、いかが?

これだけ優秀なボランチ陣を擁するんだから、敢えて言うんです。

萬年は、山口 一真をボランチ起用するのもあり、と思っていて、フォワードの並びの選択肢が窮屈ならば、それを拡張できる手段ではありませんか?

……などと、平川 怜をこれだけ活かせる、(現役時は自身ボランチであった) 指揮官に提言したいですわ。ホント。

では。

魅せるべきもの【栃木戦レビュウ 追記その❶】

月曜日、会社に行くと、
ビートル氏は、― いやぁ、辛い負けだったねぇ。
モモ氏は、― 次、頑張りましょう!

ありがたきは、そっと山雅を見守ってくださる方々。

さて、舌足らずであった昨日のレビュウを、2回に分けて補足します。

娘は、山雅ファン歴においては萬年より古いんですが、現在は子育ての真っ最中ということもあって、栃木戦が、今季初の現地観戦でありました。

そこで、ゲームが押し迫った頃を見はからって、現在のチームの感想を訊いてみた。

― 皆、そつの無いプレイをしているとは思う。
けれど、サイドをひたすら前後に走り続けていた玉ちゃん(玉林 睦実) が発散していた、あの鮮烈さは感じないわね。

これを聞いて、そうだ、萬年が最初に名を憶えたのは、あの#14 だったんだ、と今更に気づかされた。

娘が現所属のプレイヤーの特長に疎い、という事情はあるにせよ、山雅愛の湧き出てくる秘密が、玉ちゃんのプレイには在った。

それは、単に気持ちとか、精神論云々ではなくて、あくまで、培われた、強みのプレイとして表現された何かによって、であったはず。

これ以上巧く言えませんけれど、これ、昔のようにやれ(先祖返り)、ということでは、もちろんありません。

田中パウロ、榎本 樹、村越 凱旋、このあたりから匂ってくるもの。

彼等が、我一流の強みを前面に出そうとプレイする姿勢。

言い換えると、プロとして、何によって他人に憶えられるのか?、の追求。

個のプレイが、チームへの貢献という責任感によってひとつに結集されていくこと、そこのところを見守りたい。

では。

見透かされた得点力 (2021.10.10栃木戦レビュウ)

PK被弾による、0 – 1 の敗戦。

〈軋みの中で考えた…… 〉
ゲーム進行を観ながら、感傷的な自問自答をしていたことも事実なんでありまして、
それは、(負傷/不調による離脱はべつとして) 眼前の光景は、 来季もこのチームでやることを覚悟した戦士に絞り込んだ結果かもしれないな、との、ほとんど妄想。

きっと、事実はもっとドライなんでしょうが、それはファン&サポーターの側にも言えること。

苦戦苦悩の中、8,000人が集まるといった底に流れる山雅愛。

他方、1点差で70分に差しかかった頃には、かなりの観客がアルウィンから立ち去ったという現実。
この方々は、冷静な読みと、妥当なゲーム観の所有者。

この様子じゃあ、とても得点できそうにもないな、という感覚はごくマットウでありましたし、それは、栃木指揮官田坂氏の発想と、ほぼ同じものであったはず。

ただここで、光明として見逃せないのは、ゲーム後、当方の指揮官インタビュウに〈チームへの貢献〉というキーワードが登場したことか。

この視点が在る限りは、現指揮官の方向性を信頼すべきであって、この緊迫した状況下、プレイヤーの自己実現とその評価の根っこはそこにしかない。

〈不足しているものとは……〉
ゲームの入りからの、ハイボールが落ち着かずに行ったり来たり。

相手が栃木であれば、これ、予想できた展開であって、当方として、同様にしてそれと遣りあうのか?、あるいは、ボールを足許に落ち着かせて持ち込むのか?、ここを、もっとはっきりさせるべきでした。

ゲーム後インタビュウからすると、後者の策を採りたかったようです。

乱暴に言ってしまえば、こちらが先手でボールを動かせれば、どっちでもいい。

今のチームに不足しているのは、こういう戦術の選択を、ピッチ内で誰が率先しているのか、ほとんどわからないこと。

違う言葉でいうと、蹴り出すボールには、まだまだチームメイトへのメッセージが不足している。
これを感じるのは、外山 凌くらいですよ。

だから、結局はハーフタイムや飲水の機会を経ないと、戦い方に変化が生まれない。

先制した栃木は後半、豊田と矢野を、得点源ではなくてファーストディフェンダーに見限るほどの徹底度で、守備陣形を堅くする。

後半、栃木のシュートはたしか、やぶれかぶれのが 1本だけでした。

それもあって、驚異的なボール保持下、こちらは攻撃に専念。
ボランチが、開いたスペースに入って来てはボールを捌くシーンが増えて、ボールはかなり潤滑に回るようになった。

予定調和的、お決まりのボール回しには、だんだん工夫が仕込まれてきているのはわかるんですが、あれだけ栃木が自由にやれせてくれたんですから、ボールを持っていないプレイヤーが、もっと一見ムダな動きを活発にしてもらいたかった。

そうすることで、ディフェンスをおびきだして、守備網に穴を開ける、あるいは、網の目を粗くできる。

ボールに行っている2~3人のプレイヤーの必死はたしかに伝わってくる。

が、その他の者が、次の動作に入る、次にボールをもらうスペースを獲る、といった連携が感じられない。
だから、ボールの行く先へ向かう動作が、どうしても遅くなる。

得点が生まれないことに対し、〈精度〉を求める、これはわかるんですが、その精度をもたらすための、時間的な、スペース的な余裕。

そこに手をつけない限り、このリーグ特有の、素早く寄り集まってくる守備の突破は、なかなか困難。

昨日のゲームを観たかぎりでは、センターバックが高く上がって引きつけ、そこを起点に、いったん中継してボールを(サイドなどに)散らしたボランチがペナルティエリアに入って行く、そういう一連のパターンの再現性を上げていくのが、いちばん確実なやり方だと思います。

クロスを上げさせるのは、ディフェンスに高さを多数擁する栃木の思うツボでもあったでしょうから、クロスの高さ低さ、長短、これに工夫がもっと要ったのかも知れない。

リーグ戦の最後に進むほど、こういった堅い守備を崩すべき局面がますます予想されるわけで、そこが原点ならば、避けずにチャレンジしてもらおう。

あと附言すると、時間を区切って、ファーストディフェンスのエリアと高低を変化させた栃木の綿密さ、あれは見習いところ。

〈さて、今週の暮し方は……〉
せめてもの救いは、下位集団の中で栃木がスルっと順位を上げたくらい、残りは、ほぼ停滞した今節であったこと。(その分、上位10チームが遠くなった)

ここまで勝率2割のチームに、のこり9試合に、4~5割の勝ちを求める萬年式胸算用。
まぁ、これが、きわめて虫のいいご説であることは承知です。
が、決意表明の旗を畳むわけにもいきますまい。

前 貴之が戻ってきたこと、それを喜びます。

では。

大宮に学びつつ (栃木SC戦プレビュウ 後編)

学ぶ、とは言うものの、アルディージャとやって、0 – 4 で敗退した山雅にそれができるのか?、はこの際、棚上げにして、まぁ、聞いて下さい。

〈ともに下位に沈む者の明暗〉
前節、大宮はアウェイで栃木と対戦して、3 – 1 でこれを退けている。

開始早々4分に先制したのがかなりおおきな要因、ですが、

被シュート22本、与えたコーナーキック10本、打たれたクロス39回。
ボール支配は、栃木が53%

対し、大宮のシュート 5本、コーナーキック 1本、クロス 7本。

ペナルティエリア侵入回数は、栃木 27、対し、大宮 3回。

これ、同時刻に行なわれた千葉 vs 山雅のスタッツと寸分違わないので、びっくり。

【シュート】千葉 22本、山雅 5本。【コーナーキック 】千葉 13本、山雅 0本。
【クロス】千葉 39本、山雅 7本。 【ぺナ侵入回数】千葉 21、山雅 3。

同じようにスタッツで圧倒的に劣勢でありながら、片方は快勝(結果として)を得、他方は、0 – 0の引き分けに持ち込むのがやっとだったのだ。

やった相手が違う、というのは確かなんだけれど、実は、栃木と千葉は、相似なサッカースタイルを持っていて、特長を一言でいうと、

ボールを手中にしたら、とにかく速く敵陣へ入るショートカウンター、これに尽きる。(ただし、守備に回った際の帰陣は、千葉のほうがすこし優る)

ならば、ゲームを有利に遂行した巧者アルディージャに、やはり学ぶべきでありましょう。

〈プランを、いくつか持つべし〉
下位に低迷しているだけあって、苦しみながらも大宮のやったことは、
先制した強みを背景にして、
栃木にボールを持たせることによって、その速く強度ある攻撃を封じた、こと。

栃木にしてみると、相手の守備陣形が整うまえにショートカウンターで侵入するという武器を、みづから手放す格好になった。

大宮ほどの狡猾な手際を持ち合わせてはいない我がチームは、ゆえに、いくつかのプランを考えておいて、臨戦することになる。

その際、栃木と秋田のスタイルの類似性に着目して、8月の対ブラウブリッツ戦の勝因を紐解きながら、それを行なうことが大切。

❶中盤飛ばし策
栃木のショートカウンターに対抗するため、こちらが先手で相手ディフェンスの裏を、ロングな、あるいはラインをひとつ飛ばすくらいのボールを多用して、狙う。
できれば、この場合は、ツートップ(のような態勢)にして、ヨーイドンで走り込むのが好ましい。
で、陣形を縦に間延びしないように、コンパクトにして連動しながら押し上げる。
当方は相手の中盤をスカしてその頭を超えるけれど、相手にはこちらの中盤を使わせない、これが重要。

❷持ちたくないが、持たざるを得ない局面でも
サイドを突破口にするしかありません。
両サイドで優位に立つことによって、ひとつは、たとえ、クロスが制止されても、コーナーキックを獲られるチャンスがある。
ふたつめには、栃木にサイドを譲ってしまうと、こちらが苦し紛れでタッチラインに逃れた場合、ロングスローの洗礼を浴びる。

栃木のゲーム当りスローイン回数は、リーグトップ。
どのチームも、そのカウンター攻撃をサイドに回避する傾向がわかります。

いまや、豊田、矢野といった百戦錬磨のフォワードを擁する栃木には、深い位置でのスローインを与えると致命傷になり得る。

❸セットプレイを狡猾に
栃木のトップスコアラーは、センターバックの柳。

実際、アウェイでは彼のヘディング2発に沈んだ山雅。

ですから、上で指摘したように、スローイン、それとサイドを割られた結果としてのコーナーキックは極力避ける。

と同時に、こちらがプレイスキックをできる限りゴールに繋げるように持っていかないと。

繰り返しになりますが、サイドで克つことが第一。

さらに、こちらから前へと先手で仕掛けることで、相手のファールを誘うこと、これでしょうね。

千葉戦では存在感を消していた、外山、下川らサイドアタッカーが仕事をしないと始まりませんよ、このゲーム。

正直言って、勝機はそれほど多くはないでしょうけれど、相手がわかりやすいサッカーであることを救いと考えたうえで、そのお株を上まわるのか、あるいは、徹底的に押し込むのか、方法論についてのチーム内意思統一をはっきりさせること、これを期待します。

では、アルウィンで。