部屋に入ってくるなり、ソファーでまどろんでいた萬年に向かい、家人。
― ねぇねぇ、1億円もらっている柏木に声をかけられるクラブがあるんかしら?
―そりゃあ、おまいさん、値切るっ、て手もあるわけだし……。
昨季はたしか、10試合そこそこの出場だったから、契約のテーブルではダンピングの交渉があるに決まっている。
ひょっとしたら、いまやトップリーグ中位に甘んずる浦和が、今回の騒動を、人件費削減の好機のひとつ、ととらえても不思議ではない。
無名なサッカーファンがひとり、こういった無責任なうがちに走るのはカワイイもんだが、しかし、マスメディアの論調は、今回もヒドかった。
たとえば、指揮官ロドリゲスは〈とても受け入れられない〉と柏木を論断、といった見出しで煽るわ、煽る。
読んでみれば、監督は、柏木の今回の行動は受け入れられない、と発言しているのであって、彼をチームの一員として受け入れない、つまり、その人格を否定しているわけでもなければ、戦略的な要員(カード)から排除する、とも言ってはいない。
それをあたかも、現場トップが追い出しにかかっているような印象を植え付けようとする。
チーム規律への違反は、浦和というクラブが淡々と処分をおこなえばよい話。
尾ひれをたんとつけて印象を操作、しかも、他人(チーム関係者)の口を借りる形で柏木を糾弾するメディアには、不快感がつのるばかり。
さらに気に喰わないのは、キャンプで同宿していたチームメイトが、規律違反の行動を、チーム上層部に通報したらしい、ということ。
願わくば、それが事実でないことを祈る。
友人であれば、まづは当の本人のところに行って、おい、あれはまづいんじゃあないのか?、きちんとクラブに報告すべきだろう、くらいの忠告ができないかい?
それなりの知名度があるとは言え、所詮は20、30歳代の若僧の発想なのか。
級友の行為を、すぐに教師に言いつけるような幼児性まる出し。
まぁ、柏木のことを友人と思っていなければ、仕方がないけどね。
では。