ロミオとジュリエットを聴く 『Incident on 57th Street』(1973年)

ブルース スプリングスティーン(1949~ ) というロックンローラーの名が、

一躍、世に知れることになったは、

アルバム『Born to Run』(1975年) が契機だったのは間違いない。

が、ブルースは、それ以前に、2枚のアルバムを 1973年にたて続け発表していて、

リリカルな詩を、積もった感情を吐き出すようなヴォーカルで綴る、これら2作のほうに、より魅力を感じるのは、僕だけじゃあないだろう。

そういう御方は、おそらく、このシンガーソングライターとは、長いつきあいで、いつもじゃあないが、時に触れて聴く、みたいな感じではあるまいか。

僕の場合、彼の音楽と出逢った(友人から紹介された) のは、夏休みだったので、

この時季に、思い入れは深い。

さて、楽曲のこと。

57th street、とあるから、マンハッタン島の、セントラルパークの南を横切るように走る通り。

そこで、incident (出来事)が、スパニッシュ ジョニーと、プエルトリカン ジェインの カップル(恋人)を軸にして語られる。

……とくれば。

古い!! 映画ファンには、下流階級の白人と、プエルトリコ移民の、ふたつの不良グループが反目、抗争する『ウエストサイドストーリー』(1961年)が想い出されるわけでして。

これは、

〈ロミオとジュリエット〉 (by シェイクスピア,1597年初演)を、現代ニューヨークを舞台に、翻案した作品。

で、ブルースのこの曲にも、ロミオとジュリエットという名が登場する。

……てな、お題目はもういいや。

ブルースが、ピアノ独演で唄っている動画を聴きましょうか。

あぁ、シェイクスピアとは偉大なり。

400年を超えて、そのラブストーリーが、語り継がれる。

では。

Don’t Think Twice , It’s All Right (1963年)

ボブ ディランが、61年前に発表した曲。

日本発売では、タイトル(英語)を、〈くよくよするなよ〉と変えてある。

二度思案するな、それでいいさ、って感じか。

破局した恋人に向かい、未練、皮肉を込めて、けれど、まぁ、自分は自分で生きていくよ、と見栄を切るような内容の歌詞。

その曲を、

半世紀を超えて今、20代の才能が、飾り気もなく、素直に歌って魅せると、こうなる。

ビリー ストリングス(1992~ )というのは、ずいぶんと人を喰った芸名ですけどね。

では。

Stella Blue Eyes, in the Summer of 1962…….


季節の憶え ☞ このところ、夏椿の落花を、朝夕で、100個は拾っている……。

柳 ジョージ&レイニーウッドが、

1980年に、シングル盤で発表した曲。

日本語の曲名は、『青い瞳のステラ、 1962年 夏……』。

それを、それらしく、英語にしたのが、当記事のタイトルであります。

(取り立てて、他意もない、お遊びで)

ところで。

僕は、いままでずっと、

青い瞳(め)のステラ、と当たり前のように読み、そして、発音してきた。

ところが!!

どうも、青い瞳(ひとみ)、と読ませるらしい(当たり前か) ことに、今更ながら、気づいた次第。

だが、しかし、待ってもらいたい。

すくなくとも、100年このかた、宮沢 賢治の詩作を持っている日本語と日本人であるならですよ、

やはり、〈あおいめ〉と読むのが、自然、かつ、歌詞における品格だと思うんですよね。

おそらくは。

クロスビー スティルス & ナッシュに、

名曲〈組曲; 青い眼のジュディ〉(1969年) があるから、これとの区別をはかりたいネーミングだったのかも知れず、僕の語感も、それを、そのまま踏襲したのかも知れず。

でも、もういいや。

この季節になれば、1962年の夏って、一体どんなだったんだろう?

……そう想いながら、これを聴いていることに、変わりもないのだから。

では。

近ごろの大収穫 『Your Song』(by Nils Landgren)。

エルトン ジョンが、1970年に発表した。

あぁ、既に、54年前か。

時を経るにつれて、その良さが評価されているような曲。

むかし、中田 英寿がゲーム前に聴いていた、と聞いたことがあるが、

その人柄を感じさせるエピソードだ。

もともとが、ジャズ風味の曲だから、

存命ならば、フィービ スノウ(1950 ~ 2011年)に歌ってもらいたいなぁ、とか思っていたが、

最近、二ルス ラングレン(1956~、トロンボーン奏者、ヴォーカリスト) が、ジャズクヮルテットで、この曲を演っているのを見つけ、

その出来には、少々参ってしまった。

淡々と、なんら奇異を衒わない演奏。

けれど、ムダな音を削り落としたうえで、気の効いた音で攻めてくる、そんな感じ。

久々に、新作の(この曲が収録された)アルバムを購いたくなった。

既に、評価を確立しているラングレンではあるが、これから、目を離せない。

では。

変わることなく聴いてやる〈Back in The U.S.S.R〉

Back in The U.S.S.R

ビートルズ、1968年発表の 2枚組アルバム『The Beatles』の冒頭に収まっている曲。

〈ソ連邦に帰国して〉

マイアミ(米国)から、BOAC(今は亡き英国の航空会社)機で出発すると、

機上、膝に紙袋を抱えて、それはひどいフライト。

昨夜は一睡もできなかったけれど、

こうして、やっとこさ、祖国ソ連に帰国して、なんとラッキー……、

と、ソ連のビジネスマンが、自国を讃える。

歌詞の中で、各地の女性を採りあげてあって、

そこでは、ウクライナは ユークレン、グルジアを ジョージア、モスクワは モスカウ、と英語読みで押し通すのは、興味深い。

かの時代、世界は、冷戦中。

東西陣営が対立し、ソ連は東の親玉。

そんな状況を、リアルタイムで見聞きしているのは、現在、アラウンド50歳以上の皆々様に限る?

カーテンの西側に居て、東を礼賛風につづった皮肉、あるいは、まったくの無思想。

歌詞には、新味はないけれど、

チャック ベリーの、Back in The USAのパロディをやっちゃえ、だけで、これだけの作品を創れるところが、出色の才能です。

人気の絶頂にあったビートルズであったからこそ、俺たちにはなんでも歌えるぜ、という自負もあったのでしょう。

これを、軽快なロックンロールに、彼ららしいコーラスを乗っけた曲、というんだろうが、

僕など、通ってた高校の音楽の授業が、なぜか自習の時間となった日、

クラス委員みたいな級友が、じゃあ、今日はこれ流します、といってクラスで聴かされたのが、

このアルバム〈The Beatles〉だった。(僕は初聴でした)

天候のためだろうか、なんだか陰鬱な曲調に思えてしょうがなかった記憶がある。

たとえ、その後に、オブラディ オブラダが続いても、です。

たしかに、たしかに、優れたバンドには違いないが、

このアルバムに到達してみてはじめて、

このグループの力量は、

ポール マッカートニーの音楽的素養とセンス、

それと、プロデューサーのジョージ マーティンの、クラシック音楽の造詣、

これらふたつに大きく依存していたことがわかる。

でなけりゃあ、これほど多く、出来の良い楽曲は生み出せなかったことが。

なにも無理して、ここ2年あまりやってる戦争を引っ張りだす必要もないけれど、

かつての我が祖国ソ連は、いまもあまり変わらない?

では。