この際、お皿も食べてしまふ。

バート バカラックの訃報に接して、マレーネ デートリッヒを讃えたのが、前回。

バカラックの作品では、もちろん、

『Baby It’s You』(1961年発表 by シェリルズ) が、僕の一番気に入っている曲。

以前、アデルの歌唱で、これを採り上げた憶えがあります。

でも、ここでは、せっかくだから、オスカー音楽賞を獲った
『Raindrops Keep Fallin’ on My Head』(1969年) を聴いてしまおう。

映画『明日に向かって撃て!』(1969年米国) の挿入歌として使用されて、世に出た。

色恋とは一線を画した、こんな歌もあっていい。

雨は降り続くけれど

僕の上に 雨は降り続く。
まるで、ベッドが小さすぎて足がはみでしまう奴のように、
なにもかもがしっくりこない
僕に 雨が降り続いてるんだ。

だから 太陽に 言ってやった。
寝ていないで 仕事をしなよ、って。
いつまで僕の上に 雨を降らし続けるんだ、って。

でも、ひとつわかっていること、それは
やって来た悲しみになんか 僕は負けない、ってこと。
せいぜい 僕が 幸せに挨拶できるまではね。

僕の上に 雨は降り続く。
けれど 僕は 自分をみじめに思って泣きはしまい
不平を言って 雨を止まそうなんて思わない
なぜって、僕は なんだって自分で決められるんだから。
心配は 無用なのさ……。

曲を唄った B.J.トーマスは、2021年5月29日、78歳で没した。

彼にも思いを馳せながら、レイ スティーブンス(1939~)と一緒に演ってる動画で。

では。

そこは, デートリッヒでしょう。

あれは、金曜日の朝だったか、公共放送のニュースで、バート バカラックの逝去を聞いた。

1928年生れの、享年 94歳。

バカラックの経歴を交えながら、『雨に濡れても』でオスカー音楽賞を獲るなど、その業績を語る。

洒落た上品で、ポップな作品を多く生んだ才能。

だが、その報じ方には、やはり、落ち度があって残念。

バカラックがブレイクしたのは 1960年代だったけれど、当時、彼は、すでに30代半ば。

音楽的にはかなりの遅咲きであって、そこまで、ある意味、持ち堪えられたのは、

彼の才能に惚れ込んで、自分のステージの、常任のピアニスト、ディレクターとして使い続けた、マレーネ デートリッヒ (1901~1992年) の絶大なる支えが在ったからに違いない。

バカラック(英語読み)、というラストネームからわかるように、(ユダヤ系)ドイツの出身。

デートリッヒもまた、ドイツ人であった。

バカラックの後ろには、デートリッヒ在り。

そこのあたりをキチンと添えてこそ、天下のNHKではありませんかねぇ。
……、と苦言。

 

凛とした雪の朝は、デートリッヒの演歌を聴くにふさわしい。

では。

スローバラッド を聴きたい (エタ ジェイムズ讃歌)

最近の〇〇は~っ、といって、批判を始めることを、できる限り止めにしたい。

最近だって、よく探せば、いい仕事は、たくさん在るのだから、年寄りの回顧趣味はいかん、とみづからを戒める。

結局は、時間が過ぎて、時代の虚飾や喧騒が剥がれ落ちないと、仕事の良し悪しは見えてこない、と考えることにしているが、

自分が、いつも時間の後からついていく、ってのもなぁ。

そんなことをつぶやいている中、

柳ジョージのソローバラッドに浸りたい、と思いながら、なぜか、エタ ジェイムズ (1938~2012年) に行きついてしまう、といった仕儀でありまして。

要は、ソウルフルな歌唱にうっとりしたいわけです。

『I’d Rather Go Blind』(1968年発表) は、もともと友人の作で、エタがそれを聞き取ってカヴァーすることで世に出た、というのが経緯のようだ。

 この恋は終わり、ってピンと来たんだ

 あなたが 彼女と話し込んでいるのを見た時

 ココロの奥で〈泣きなよ、お前〉っていう声が聞こえたんだ

 そう、あなたが 彼女と歩き回っているのを見た時さ

 いっそのこと 盲目になりたいくらいなんだ、わたし…

破局の、ほとんど確実な予感の唄、というキャチコピーはいかが?

泣きなよ、お前は、英語の歌詞では、Cry Girl

girl は、boy の反対語、とだけ思っていると、この歌をティーンエイジャーの失恋、ととらえてしまうけれど、それは間違い。

girl は、幼子からご高齢までの女性について使うコトバであるから、歌い手の年齢次第で、大人の恋心を表現できるんです。

では。

訃報、またひとつ。

ひとつの詩の一節を、想い出している……。

野のなかに小鳥の死骸があるように わたしの頭のなかは死でいっぱいだ

わたしの頭のなかに死があるように 世界中の窓という窓には誰もいない

(『幻を見る人』(1946年 田村 隆一  より)

 

デヴィッド クロスビー(David Crosby)が、1月18日に亡くなった。

1941年生れの、享年 81歳。

彼の、高音のヴォーカルが好きだ。

バーズ(The Byrds)時代の、『ミスター タンブリン マン』(1965年発表)を聴く。

もともとボブ ディランが書いた曲だが、バーズの演奏のほうがポピュラーではあるまいか。

タンブリンマン氏よ、何か一曲演ってくれないか?、で始まる、なんとも他愛のない歌詞。

それを、なんだか突き放したように醒めて歌うところに、60年代を感じてしまう。

というのも、かなり牽強付会な解釈だとは、思いつつ。

(註;マントを羽織って、リズムギターを演奏するのが、クロスビーです)

では。

ひたすら音を楽しむ、それだけ。

『You Are So Beautiful』は、

ジョー コッカ― (1944 ~ 2014) の歌唱が、定番扱いになっていて、カヴァーヴァージョンも、多くはそれをトレースしている。

けれど。

もともとは、ビリー プレストン(1946 ~ 2006) が、ブルース フィッシャー(1954 ~)との共作として、彼のスタジオアルバム (『The Kids & Me』(1974年))で発表した曲。

その歌詞の一節。

You are so beautiful to me、の〈to me〉がいやに効いております。

今回は、Lucky Chops で。

優雅、かつ、洒落たアイディアに溢れた演奏には、実にウキウキします。

では。