格言が生まれる日。

10歳の小学五年生が、

神田神保町あたりを一緒に歩いている時、

萬年と、その友人を前にして、

会話の途中に、

― 僕は賢いから。

とはさんだものだから、

後で、ふたりだけになった帰りの電車の中、

人生の先達として、穏やかに、かつ、毅然と、

― あの発言はまづいな。しかも、目上の人間の前では。

― ただ、笑いを獲るためだったんだよ。

― なるほど。そのユーモア、わからなくはないが。

けどね、こういう言葉があるよ、

〈できれば、他人より賢くなりなさい。しかし、それを、他人に知らせてはいけない〉(チェスターフィールド伯爵)

内心。

それと真逆な失敗を重ねてきた者が、よく言うよ、と思いながらも、ここは、見守る者の義務として、その子に助言したのである。

数日後。

停めた車を降りる折に、その小学五年生が、

賢い、とは、優しいことなんだよ。

と、ふと言う。

― …………。

それには、敢えて答えず、

こういうのが、人生のゴールデンタイムなんだろうか、と感慨に浸っていた。

10歳に教えられることは、多い。

では。