光あるところに陰は生ず (金沢戦レビュウ 本論おしまい)

❶スタッツにだまされるな。
ゲームスタッツをみると、

シュートは、山雅 5 (枠内4)、金沢 15 (同2)。

クロスは山雅 7本、金沢 25本と、アウェイチームが圧倒していて、

これは、金沢が一敗地にまみれた八戸戦における、金沢vs八戸との数値と、真逆で相似。

けれど、今節、勝ちは、スタッツだと、いたって貧相な山雅のほうに転がった。

……さて、すると、ですよ。

この対戦は、山雅の辛勝、金沢の〈内容は悲観するには及ばない〉ゲームであったのか?

確かに。

ラスト 40分間にわたる金沢の波状的な攻撃をみている限りは。

でもね。

一見、内容と結果が乖離しているようにみえるけれど、

勝敗を導いたそれなりの〈仕込み〉が、山雅の側にはあった、と思います。

簡単に言ってしまえば、パトリックという強力フォワードを押し立てるツエ―ゲンサッカーの光と陰を、我がチームがうまく利用した。

金沢は、サイドアタッカーに、西谷 和希、石原(大谷)という俊敏なドリブラーを要するので、彼らの突貫によってサイドに侵入し、そこから、中央に構えるパトリックにボールを(クロスで) 供給したい。

そして。

サイドへは、ロングなボールが、(3バックの)センターバックから蹴り込まれることが多い。

今節、サイド攻防は金沢に優位であって、それがクロスの量産となった。

……ここまでは良し。

として、すると、金沢ダブルボランチは、

前方(サイドの)へのフィードを担うセンターバックへ、その前段としてボールを供給する〈お膳立て役〉、または、相手の陣形をいなすバランサー、みたいな役割を多く果たす傾向となる。

#8大山のプレイに象徴的でしたが、直接に攻撃参加の印象に薄く、比較的おとなしい感じ (プレイスキッカーとしてのタレントはともかく)。

で。

こんな金沢サッカーに報いるために、山雅がやったのは、

ひとつ。後ろ向きにボールを処理しがちな金沢ボランチを、その瞬間に後方からチャージすることで押し下げ、中盤にスペースを生みだすこと。

ふたつ。
できるだけ前からボールを供給したいがために、高い位置まで上がる、金沢センターバックの後方を狙うこと……だった。

田中 想来の1点目は、そういう狙いが、巧く実現した。

サイドは渡すが、中盤はもらう、ってことで。

❷山雅ボランチの縦横無尽よ。
前記事で、山本 康浩を、準MVPとしたのがそれで、
山本は、このゲームにおいて、攻撃局面でもキーパーソンだった。

1点目の際、アシストのスルーパスを入れた菊井に、ボールを供給したのが、山本☜ 訂正、小川でした、失礼。

2点目のクロス投入は、山本(アシスト)自身。

2点目については、それまで、山本、小川、佐相が巧く絡んで左サイド右サイドから侵入を試みていて、その流れがあってこそのゴールだった。
これにしたって、高い位置を採る金沢センターバックの裏を侵す狙い。

さらにさらに。

75分、村越のシュート(惜しくも枠外)を生んだクロスは、今度は、に回った山本が入れている。

(つまり、ほとんどのシュートに多く、山本が絡んでいるわけだ)☜訂正

好位置を保ち、ボール配球と繋ぎに、渋い仕事を魅せる大橋とともに、

山雅のボランチの攻守全般へのかかわりは、ツエ―ゲンを遙かに上回っていて、

ここの部分で、ゲームのシーソーがこっちに大きく傾いたことは間違いない。

❸チノ氏のココロをとらえたのは、

#36松村 厳、なんですよね。

執拗な守りは、当たり前。

加えて、ボールを持ち出し駆け上がって、クロスを入れる果敢さ(たしか 35分あたり)。

樋口にも、魅力的な軌道でボールを送るシーンもあった。

その全身から発散される、鼓舞する雰囲気、いわば、キャプテンシィとでも言おうか。

将来、山雅で、キャプテンマークを巻くんじゃあないのか?

二ノ宮、松村、彼らの抬頭には、根底に、熾烈なポジション争いがあるわけで、すべてのポジションにおいてその中に在って、うかうかできない集団であること

テクニカルなスキルの向上とともに、今の山雅の、最大の強みのように思われます。

では。