急に思い立って。

と言うより、直感が、今やっておかないと、と湧いて来て、

善光寺にごく近い、なじみの古書店へと出かけた。

僕が職業人として始めた時の先輩の弟さんが、その先輩(物故)の跡を継ぐ格好で、やっているお店なんです。

たしか、午後のみ営業だったはずだから、勤務を終えると、高速を使って。

駐車場に車をおいて2分ほど歩き、

店をのぞいたら電気が点いていて、入り口のドアも開けられたので、

奥に進むと、数年前とほとんどかわらないご様子で、

椅子に深く座る店主の姿が、そこにあった。

― 善光寺に参って来たの?、と問われ、

― いや、僕にはそういう信心もないし、本日は、こちら一択の長野行です。

……から始まって、

あとは、お決まりの取りとめもない話を、

こちらは、店内に積まれた本を見回しては引っ張り出しながら、やりとりする。

 

― 悪役ができる役者で、生きてるのは、石橋 蓮司、柄本 明くらいかな。蟹江 敬三は死んじゃったし。
生きていても、みんな年寄りになっちゃったね。

― 拠り所なくボーっとしているようで、巧い味わいの役者がいませんね。

……と悪役論に流れると、小沢 栄太郎とか佐分利 信に及んで、原田 芳雄にたどり着く。

― 彼、〈さすらい〉、小林 旭の持ち歌ね。
あれを、唄ってるんだけど、なんだか頑張り過ぎていて、ちょっとね。

あとは、だらだらと、ジェームス コバーンとか、ロバート デュパルとか……。

結局。

パブロ カザルスが、バッハの無伴奏チェロ組曲(6曲)を演っているCDと、

〈ポップス三人娘 ゴールデンアルバム〉の2枚を購入して、計1,000円也。

アルバム(LPレコード)のほうは、全12曲。

弘田 三枝子、千賀 かほる、ちあき なおみが4曲つづ歌っている。

これはもう、ジャケットの、ちあき なおみの良さに一目惚れして入手。

で、お店に再来する口実の意味を込めて、

望月 三起也の作品を注文しておく。

店主からは、半端で揃っていないから(オマケ)と、山上 たつひこの〈光る風(上)〉(ちくま文庫)をもらう。

帰途は、国道19号を。

もちろん、無伴奏チェロを大きい音量で聴きながら……。

☞ 若い読者諸氏には、さぞかしチンプンカンプンの名前ばかりで、まことに恐縮な記事でありましたが、

お詫びに、1曲あげておきます。

では。