ゲームを支配するために耐える (沼津戦レビュウ 本編)

勝因❶ 地道な仕事を続けたからこそ。

鳥取戦のレビュウで指摘したとおり、 4 – 1 – 2 – 3の陣形は、いままでやってきたことをベースにまとめあげた、現段階の最適解に過ぎない。

ゲーム状況によっては、4 – 4 – 2にしたり、締めくくる際は、5 – 3 – 2に変容する。

サッカーは、万事をシステムでやるわけではない。

が、このシステム運用が、効果をあげていることはたしか。

攻撃面では、やることが整理されてきたこと (by チノ氏)。

パス 2本 (米原☞菊井、菊井☞山口)で決めた3点目なんかは、その象徴的な結実だった。

が、より注目すべきは守備面。

この並びは、縦にラインを揃えやすく、

相手からするとハードルが多重になって攻めにくく、

そこへ加えて、山本 康裕(2列目アウトサイド)が、適時サイドに張り出しては、沼津左サイドからの侵入を挫折させた。

前線からの守備も、3つの横ラインが連動しながら、サボらずに我慢して継続した。

特に魅せ場は、2点を先行してからの、前半の中盤 20分近く。

沼津にボール保持がかなり高まったけれど、(おそらくはゲーム全体で70%近いはず)

中盤をタイトに保って、次々と守備要員が湧き出ては、できるだけ自由にやらせない。

一緒に戦っていて、ヒリヒリしている、あの感じが続く……。

そこを凌いで、流れを向こうに渡さなかったのは、勝敗以上の成果でした。

また、クリアについても、遠くへボールを捨てる、という割り切りと落ち着きが増したことも、守備における仕事の整理、でありましょう。

勝因❷  中山氏の指揮は、どう山雅を利したのか?

a) 先制点は、立て続けてのコーナーキックで調子に乗れたことから生まれた。

山本なり菊井があの位置に立てば、ショートコーナーで変化をつけてくる匂いプンプン。

ところが、ゾーンディフェンスで守る沼津は、誰ひとりデザインを企図しているであろうプレイヤーを牽制しに出て来ることはなかった。

高身長を並べる自信からなんだろうか、10人全員が、ゴールマウス前に林立。

山雅のことスカウティングしたのかいな?

こっちは、その分自由にやれて、リズムをつかめたんです。

b) 前半、その右サイドが機能しないのをみるや、後半頭から、スリートップ右を、#23 ☞ #21へチェンジ。

こういうのは中山さん、素早く果敢だった。

#21に替ると、サイドを奥までえぐられて、あやわ失点の折り返しを投入されたりで、その策は効果を生んだ。

で。

c) 次は、65分の2枚替え。

ここでは、#7 ☞ 齋藤 、#27 ☞ 川又と、セットで投入。

沼津の、定型的な交代カードの執行に思えたけれど、

これは、山雅にとって、脅威であると同時に、守備のターゲットが絞れたから,

助かった要素。

特に、齋藤に、左タッチライン沿いでプレイしてもらえたのは、彼を外側で抑え込めたし、

これが、中央で動かれ日には、もっと危険な局面を多く創られたに違いない。

後半が進むと、山雅の、中盤での圧迫と絞りにも緩みが生じ、アスルクラロのパスワークがより活発になっていたが、

沼津のボールの出し手と受け手が、ハッキリした、という意味で、

山雅にとっては、守備において目標がハッキリした、と言える。

やはり、多失点(ビハインド)は重く、

60分を過ぎると、沼津の4バックの動きも精彩を欠いていたし、ラインは形成されているが、並んでいるだけ、という格好にみえた。

沼津の交代策が、案外、山雅を利することになった点は、

これこそゲームの妙みたいなもので、中山監督の失敗、とまでは言えないだろう。

自分たちの仕事を、徹底してやり切ることで、

相手の修正をも、こっちに有利に誘導していく。

そんな美点で、見応えあるゲームをありがとう、山雅。

では。