心に喪章を。

― 八代 亜紀さんも、死んじゃったわね……。

すれ違いざま、家人が、ふと口にするものだから、

― 僕なぞ、ここ一週間、心に喪章を巻いているんですよ。

と言いかけて、その言葉を飲み込んでしまった。

八代 亜紀 (1950年~2023年12月30日)。

個人的にご一緒したこともないから、本当のところはわかりませぬが、

伴侶にするにはチト濃すぎるけれど、あんな姉貴がいたら面白い、といった感じを上手く演出していたように思う。

ここ10年、へぇ、この人ジャズにチャレンジしているんだ、とは知っていた。

You’d Be So Nice To Come Home To はヘレン メリル (1930~ ) の、ねちっこい歌唱が、大定番の曲。

亜紀さんが、それを採りあげているのを聴いたことがあって、これもいいけど、もっとサラリとやれば?、とか思ったりしたが、

タイトルの You’d は、You would の略で、〈あなたがわたしの処に来てくれたら〉と、

仮定の助動詞を使って、切望、哀願ともいえる伴侶への思ひを吐露するから、サラリと歌うのは、チト違うか。

ヘレンよりも、(少なくとも) 20歳若くして逝った彼女を、セロニアス・モンク作のバラッド〈Round Midnight〉で送ろう。

ご冥福をお祈りします。

では。