高齢化社会であるから、訃報は身のまわりに満ち満ちて、そのひとつひとつに思い入れしている暇もないくらい。
けれど、
ノッポさん (高見 映) の死は、こころにグッ、と来るものがある。
享年 88。
教育テレビの、工作番組で、無言で演技していたのを、なんとはなしに観たおぼえしかないんだが、
家人に、
氏が、爪に(透明の)マニキュアをしている、と聞かされ、なかなか配慮ある御仁と思ったことがある。
観る者の視線は、彼の手もとに集中するんだもんな。
逝去が判明したのは先日だが、実は、昨年の 9月10日に亡くなっていた。
死はすべての人間に訪れる自明のものであるから、自分の死で周囲を騒がせることはしたくない。
自分はひっそりと逝くので、半年以上の時が流れるまで死は伏せるように、が故人の意思であった。
そこで、ご遺族は、誕生日5月10日のタイミングを見計らって公表した。
最後まで、配慮をつらぬいた人生……。
では。