早口言葉の極意。

娘が、その息子の、ああ言えばこう言うに、おおいに手を焼いている。

そこで、彼をやりこめようと、早口言葉をチャレンジした。

〈ナマムギ、ナマゴメ、ナマタマゴ〉。

案の定、彼、舌が回らずに、なかなかの悪戦苦闘だ。

そうしている間は、母親は、息子に絡まれないからひと息入れられる、というわけか。

で、おもむろに助け舟を出す。

― あのね、コツはね、頭の中に、ひとつひとつの語句を強く思い浮かべること。

要は、〈生米、生麦、生卵〉という言葉を続けて発音すればいい、と教えている。

隣で聞いていた僕、この極意を採り入れてひそかにやってみたんですが、これがホントウにその通り。

〈隣の客はよく柿食う客だ〉という文章を早めに読む気持ちでやってみると、案外、これが上手くいく。

早口言葉の落とし穴は、似た音の羅列にこだわってしまうこと、ということを悟らされた日になった。

しかし、チャレンジされている息子は、まだ漢字を知らず、ゆえに、その象徴力、イメージの造形力を使いこなせないから、ちょっとかわいそうなんであります。

では。