『成し遂げたのは長野』(パルセイロ戦レビュウ その❸)

……と、はっきり断言しなくてはならない。

― 外れるのは、カズ。三浦カズ。
1998年6月、当時の代表監督岡田 武史が言い放ったのと、同じ口調で。

それは、ゲーム内容においても然り、かつ、興行的な成果においても然り。

❶ゲームそのものは……。
どこかで、山雅の監督が、
― 0 – 0 のドローが妥当なゲームだった。
と言っていたような憶えがあるけれど、これが、最も的確なゲーム総括だろう。

つまり、両者間には歴然と力量差は横たわるものの、特に後半は攻めあぐねた山雅、対して、彼らにとっては非日常な環境下、ファールも厭わずに120%の気概でぶつかって来た長野。

こんな両者がやったんだから、自然とこういう結果にもなるだろう、と監督は評定しているのだ。

ゲームの7~8割方は山雅が握っていたから、勝ち点2を落とし、かつ、奪首を逃がした、と考えるべき。

山雅にとっての達成は、無失点であったことぐらいか。

他方、パルセイロにしてみれば、そこそこ攻撃シーンも披歴できたし、とにかく、2週続けての敗戦を回避できたことは、大きな成果だった。

❷百聞は一見に如かず……は真理。
昇格が懸かったゲームには、6,000人余を動員した実績がもともとあって、そこへ持て来て、今回は、山雅蹴球団及びそのファン&サポーターの力を上手く使いながら、(地元側で)従来の5割増しくらいな動員を達成してみせた。

観衆の側にしてみれば、スタジアムがほぼ満杯になると、一体どういう〈画〉になるのか?、がハッキリと可視化できた。

サッカー熱がもたらす、長蛇の入場列、人混みと、そして、感動とが。

5/15に起きた、ひとつの価値ある達成には、惜しみない賛辞を贈ろう。

ゲーム前、オーロラビジョンにパルセイロの小史が紹介され、それが終わると盛大な拍手が沸き起こったのは、ホームゴール裏くらいのように見受けられた。

やがていつの日にか、バックスタンうド全体にも、チーム歴史などの煽り動画に、自然と拍手が波及することを願ってやまない。

今季、外からザッと観ると、熱心な青年監督をフューチャーしつつ、積年の願い(2部昇格)を果たさんとする情報発信が顕著な長野。

技量の差を、強いキモチで埋めようとするサッカースタイルも含め、これって、よく考えてみるとですね、我らが〈いつか来た道〉とも重なってくるではないか。

お互いが、近くのライバルとして切磋琢磨し合って高みを目指す、それは大いに結構。

ただし、かなり昔の、地域的な対立や確執を持ち出してきて、両者の競争に絡ませるのは、ご先祖の頃からの因習を脱却できない、後ろ向きな連中に任せておこう。

長野駅のコンコースを歩いていたら、山雅ファン&サポーターから2度ほど声をかけていただいた。

そのうちのおひとり(若い女性)は、さっきまでパルセイロサポーターと会食していて、彼らはこれからスタジアム観戦、けれど、自分はチケットが獲れなかったので、家に帰ってDAZN観戦です、とのこと。

サッカーを縁とした、こういう歓談は、実に嬉しいもの。

それが、おとといの長野駅であっても、また、4年前の京都駅であっても。

(時候の憶え: 5/16 アヤメ(白)が開花する)

では。