アンフェアな物語をどうする?

宗教とか信仰について、キチンと教えられる教師が中高にはほとんどいないこともあって、
「目には目、歯には歯」というハムラビ法典の字句を、復讐に関する掟と理解してしまったのが、大半の日本人。

バビロニア帝国を興した王と官僚たちが、そんな浅薄なことをやるはずもなく、
これは、賠償についての法文であった。

つまり、他人の身体や財産を損ねてしまったら、同等な内容で償うこと、と言っている。

これ、現在、世界や日本の賠償法の根本的な思想であって、たとえば、交通事故では(互いの過失割合で差っ引くにせよ)、相手車両を原状復帰するための費用を保険でまかなう。

元どおりにして落着、だ。

それは、ユダヤの律法でもまったく同じだから、ヘブライとイスラムの宗教観は双子みたいな部分が多い。

この論法によれば、民話『かちかち山』は、現在の語り口ではアンフェアなところが多い。

図書館で童話集を手にとってみると、
お婆さんを転倒させて怪我をさせたぐらいで、タヌキは、ウサギの計略にハマり、浸水する泥船とともに最期を迎えることになっている。

でも、たかが人に怪我をさせたぐらいで命をとられるなんてのは、あんまりだ、と子供に問われたら、親は、はたして、どうやって返答したらよいのか。

そうね、お婆さんはね、これで寝たきりになってずっと介護を受ける身になったから、死んだも同じことでしょ、と逃げるのも一案だが、

もともとは、たぬきがお婆さんを撲殺後、その遺体を煮込んで、これをタヌキ汁と偽って、お爺さんに食させたという非道をおこなったというお話。

それを、残虐な描写を避けたから、ウサギの敵討ちがアンフェアに映るに過ぎないのです。

他人の生命を損ねたら、みづからの生命で償う、やはり、苛酷であっても幼い者に、キチンと伝えないといけないんじゃあないか。

では。