不器用な男たちへ (甲府戦プレビュウ)

不器用ですから……、たしか、生命保険会社のCMだった、かと。

健さんを思い出しながらの、今回のプレビュウです。

〈相手にやらせる器量 無し〉
磐田戦のレビュウでも述べたけれど、山雅は、なぜか負け試合のスタッツがかえって優位、という事実を見逃せない。

これ、失点してスコアを追いかけるような敗戦にあっては、挽回しようとヤッキになって攻めにかかる、あるいは、先制した相手が守りに入って出て来ない、と言う事情に多く負うのかも知れない。

けれど、山雅の場合、最初から力を温存することなく全力で飛ばすのが常なんで、自らの戦い方から導かれる、いわば皮肉な現象のように思えて仕方がない。

たとえば、負けた千葉戦、水戸戦は、それぞれクロスを、28本、25本と量産。
また、シュートは、9本(千葉5本)、14本(水戸8本)だった。

前節、磐田戦は、シュート21本(ジュビロ10本)。

ところが、勝利した秋田戦は、クロス5本、シュート9本。
対し、秋田は、クロス29本、シュート22本だ。

…… で、決めつけの結論。

いままでの7戦のスタッツから、肉を切らせて骨を断つ、といった相手の出方を逆手にとるような戦略的なゲームを選択したようにみえるのは、唯一、秋田戦だけ。

ただし、秋田戦は、強風の向かい風下でゲームに入らざるを得なかった。

だから、策として秋田スタイルを封じ込めた、というよりも、風対策を慎重にやったら、結果として、あのようなゲーム進行になった、というのが正確なところに思える。

山雅の現在は、指揮官から始まりチーム全体が、自分たちの技量と連携を実直に前面に押し出すことに終始している、とみてよい。

つまり、策略をこらし相手を陥れるようなバトルは選択されない。

相手にやらしておいてから、さぁ、次は……という器量がなく、プレイヤーにもそういう器用さは求められていないのだろう。
※ここでの器量とは、意思的なものを指す、技量(テクニック)面ではなく。

違う言い方をすると、いったん先制されると、テコ入れのために切るカードは、かなり硬直化したものとなり、変更後の布陣と組み合わせには、現状突破の新味をあまり感じない。

この戦い方の是非の議論は、いまは棚上げだ。

ただ、リーグ戦が4分の1くらいまで進んた時点で、勝ち負けが最低タイ(12位目安)になっていないと、今のやり方が厳しい批判を浴びるだろうことは、覚悟しなくては、と思う。

〈剛よく剛を制するか〉
前節北九州戦を、前半の前半、およびハイライト動画を観た限りの、ヴァンフォーレの印象。

試合は、シュート27本、クロス31本を打ちながら、後半70分に同点にされた。

甲府にとっては、ほとんど負けに等しいゲーム内容。

甲府のサッカーは、無駄な遊びを排した、剛直さ、シンプルさが顕著。
派手さは、ほとんど皆無、合理的な実利主義、って感じ。

常に秀逸な外国籍フォワードを活用しながら闘うのが甲府の戦略的なDNA、と思ってきたが、いまは、三平(大分から加入)が前線で躍動して存在感を示す。

3バックにはヴェテランが登用されて、最終ラインは落ち着きをみせる。
攻撃面では、特に、左サイドからの侵入が脅威。
左サイドバック荒木、加えて、左に張ることの多い泉澤(シャドウ)は自由にさせると厄介だ。

ちなみに、リーグ7戦して、甲府のシュート総数は 103。総得点は 8。
ゴール成功率は、7.8%。

他方、山雅のシュート総数は 88本。総得点 5。成功率は、5.7%。

まぁ、団栗の背比べみたいな数字であって、得点力不足は、両者共通の悩みだろう。

次に、クロス総数。
甲府は 107本、山雅は 115本。
甲府は、北九州戦で31本を積み上げているから、ゲーム当りの本数でみると、山雅のほうに分が有る。

ともに、3バックを採用し、硬派なサッカーを身上とするのだから、チームとして個として山雅がやるべきことは、ひたすら真正面から、相手を上まわる剛直さをむき出しにして戦うこと。

ヴェテラン、そして、腰高の甲府最終ラインに対しては、鈴木 国友、横山 歩夢、河合 秀人、そして田中パウロといった、突っかけるドリブラーで引っ掻き回す、ってのが有効だと思うんですがね。

くれぐれも、柔よく剛を制す、などに色気を出してはなりません。

では。