『捲土雷鳥』の体現 (2020シーズン振り返り)

 

リーグ戦の幕が下りてから、10日が経った。

〈捲土雷鳥を求め続けたシーズン〉
今は、年初に定めた合言葉を、なんとか示してくれた我が山雅であった、と総括している。

トップリーグへの返り咲きという目標が、たまたま途中で、指導陣交代と前期の苦境からの挽回、というように再設定されたんだが、〈捲土雷鳥〉のこころは、それなりに全うできた、のではないか。

失敗や事故をいかに切り抜けてみせるかこそがプロの仕事、と思っている萬年からすれば、現指導陣とプレイヤーは、プロフェッショナルであることを証明してくれた。

そのことを、誇りに思う。

〈捲土重来のあかし〉
たとえば、リーグ後期だけの戦績をみると、山雅は、第5位だった。

前期が19位であったから、その改善度を、19 − 5 で、〈14〉で示す。
これは、リーグ22チーム中のトップ。
以下、山形〈13〉、群馬〈12〉、琉球〈7〉、水戸〈5〉と続き、これらが挽回度におけるベスト5。

参考までに、失速度のワースト3は、北九州〈▲18〉、京都〈▲12〉、町田〈▲10〉。

(もちろん、徳島〈0〉、福岡〈3〉、長崎〈0〉の変動の少なさは立派。
これは、年間を通じて安定してトップ競争をしていたことの証拠)

〈挽回の手法とは?〉
柴田氏は、布さんが打った碁盤上の布石を、ご破算にすることなく修正をかけていく方法を選択した。
(過密日程では、スクラップ&ビルトの余裕もなかったはず)

❶相当なクオリティーを有するプレイヤーを集めた、ということを大前提にして、各個の強みを引き出すような布陣と戦術を採用した。
つまり、個を組織戦略の中へと縛り込まないような、やり方。

❷テクニカルな人材を有する中で、攻撃は、ショートカウンターにフォーカスして、人とボールの動かしを、出来る限りシンプルなものへ整理した。

❸そのために、守備面で、より前線からのディフェンスを構築。
ボールホルダーへの圧力のかけ方のルールと意思統一を徹底したことが、ひとつ。
ふたつめとして、ボランチ(相手攻撃の狩人)的資質と経験を持つプレイヤー(杉本、塚川、前) を高い(2列目)位置に置く布陣を採用。

❹最終ラインは、若手を使い続けるとともに、経験とスピード(橋内)を加味して強固なものに。同時に、守備時の決まり事を明確にした。

❺前と後ろを結ぶボランチに佐藤を配することで、攻守切替えの鋭さと、活発なボールの動きを導入した。

……ゲームを観続けた者としては、これぐらいが目についた内容であるけれど、これらがさいわい巧くチーム内で機能したのだと思う。

さらに、久保田本人の努力があったとは思うが、長期間ゲームから遠ざかったプレイヤーを抜擢して使い、その彼がアシストの仕事をしてみせる、という采配の見事さを特記しておこう。

〈変わるべき 山雅らしさ〉
このカイゼンを、山雅らしさが戻った、というような感想を聞くことがあったが、もともと〈らしさ〉も定義されていないし、さらに、プレイヤーのクオリティーがここへ来て格段に向上しているから、〈らしさ〉さえも変わらなきゃならないはず。

ゆえに、回帰うんうんの意見には、同調できないし、したくもないのがホンネ。

さてと、ここまで挽回してみせたところから、来季の模索が始まっていくという前提、つまりは、〈捲土雷鳥 第2章〉が続くという覚悟で、プレイヤーの出入りを楽しみながら、暮らしましょうか。

では。