魂の 赴く先の。

一昨日、職場に居た時のこと。

突然に、すこし前に亡くなった同僚の容貌が、ハッキリと想い出された。

あぁ、あの彼女だったのか……、と。

若くして逝去したその女性、訃報を聞いた時、はて、どういうお方だったっけ?、と一向に人物が像として結んで来ない。

数箇月間の入院治療の甲斐なく、逝かれたようだ。

部署も違い、会話をすることもなく、すれ違いに会釈するぐらいであったか、と思う。

目の前からいなくなって何箇月も隔たってしまえば、致し方もあるまい。
とは思ったが、それでも、なんだか胸の中のトゲのように残り、釈然としないでいた。

その日、ひとりの同僚が或るブラウスを着ていたんだが、そのチェック柄が、萬年の脳裡に、故人の面影を喚起したに違いない。

そういえばその人も、格子柄のブラウスを着ていた、そうだった、あの彼女だったのか!、といった具合に……。

脳に刻まれた記憶は消失することはなく、単に埋もれてしまうに過ぎない?

     風 尽きる 萩の野に落つ 西日かな     萬年

では。