アル パチーノ物語。

つきあいがこれほど長くなると、出演作ひとつひとつを〈点〉で語るよりも、
キャリアの巻物を紐解くような語り口になってしまうのは、あたり前とも言えようか。

アル パチーノ(1940~)は、当年80歳。

年齢的に決して早くもない映画デビュウが、1969年『ナタリーの朝』。
以来ずっと現役で走り続けてきた。

パチーノとのつきあいも、多くのファンにとっては半世紀になる。

だから、喋りはじめるとキリもないだろう。

一度もあったことのない子を求めて旅する元船員、正義にとらわれた熱血の弁護士、ゲイの銀行強盗、自死の場を求める盲目の退役軍人、などなど。

でも、〈線〉で眺めると、ひとつのタイプの人間が浮かび上がってくる。

生きる時間のほとんどを仕事に投入してしまうようなアンバランスと、疲れ切ったプライベート。
居心地のよい趣味性とは、無縁な生活。
クリーニング屋との往復。
擦り減った靴底……。

どうだろう、今日、大方の者は敬遠したくなるような人生ではないか?、これって。

僕がパチーノを好むのは、銀幕の中、しゃにむに動き回っては、いわば人生の破綻者や、安住できない者を強烈に演じてくれるから、のように思われる。

よって、出演作品はそれぞれ、『アル パチーノ物語』中の、若き放浪者篇、腐敗摘発警官篇、といった各章のようなものだ。

こんなことに思い当たったのは、最近のこと。

では。