〈初っ端から冷徹なお話〉
トップリーグで戦った2018シーズン。
長崎のチーム人件費は、8億1,400万円だったが、昨季は、14億円にもう少しと迫っている。
対し、2019年トップリーグにいた山雅のそれは、14億3,000万円。
昨季は、11億円弱へと降下した。
つまり、2020年に、山雅と長崎のチーム年俸は逆転していたわけで、その状況下で、2戦2分けは、山雅がよく持ち堪えて戦ったよ、と言える。
人件費からみた両者のチーム規模の差は、今季になってさらに開いているだろう。
かたや膨張、かたや緊縮。
まづはこの点で、腹をくくってゲームに臨まざるを得ない山雅。
サッカーとは、年俸でやるものでもないことを証明してやる覚悟で。
〈長崎がシンプルにやれる理由〉
チーム強化によって、常に外国人枠上限の4人を登録できて、結果、FWにはエジカルジュニオ、都倉 賢、2列目にウェリントン ハット、ボランチにカイオ セザールを並べる屋台骨は、図太くて屈強。
そこへ、仕上げに玉田 圭司を投入できるってのは、J2では余裕の陣容。
これだけのメンツならば、カウンター攻撃、アーリークロス、セットプレイ、どれをとってみても、個の力に任せておけば、相当なことをやり遂げられるわけ。
要は、小難しいことで仕掛けなくとも、ひたすらシンプルな攻撃を続ければいいVファーレン、ということ。
長崎直近の好調は、このあたりを意識して余計な手数をかけなくなったことに有り、とみています。
〈スキを逃がさず、スキを見せず〉
といっても、所詮はJ2に居るだけのことはあって、長崎サッカーには、スキや緩慢、ミスがけっこう散見される。
冷静に、そういった部分を衝く、ってのが今節のテーマでありましょう。
❶ボール保持はフツーに長崎に傾くけれど、それをどこまで許すのか、どこまで無理して、どこで奪取に行くのかの決め事の、意思統一。
❷割りあいと急がない、長崎ディフェンスラインの挙動に対し、空中戦を多用するにせよ、そのセカンドボールの回収を、競う相手を潰しながら、誰がどこでやるか。
腹をくくれ、とは方法論で徹底せよ、ということでして、❶❷のこだわりをベースにした上に、サイドの運用やセットプレイの工夫を表現していくしかないでしょう。
〈6/9のような綿密さで〉
その意味で、天皇杯の戦いぶりは大いに示唆に富んでいた。
サイドへの展開、サイドバックと2列目(アウトサイドハーフ)との縦関係はかなり効いてきたから、今節もこれを発動してくるのか。
また、ゲーム開始早々のコーナーキック。
全員がニアに走り出して相手ディフェンスをその方向に引っ張り出しながら、遠くでフリーに構える小手川 宏基にボールを出したやつ。
ああいう仕掛けですよ。
次節出場停止の常田採用、浜崎 琢磨のフル出場感触の確認、小手川と米原 秀亮の共存、村越 凱光の先発投入、戸島 章の活用など、過密日程を利用した、けっこう盛り沢山の成果がありました。
同じようなしたたかさを持って、このゲームも乗り切ろうではありませんか、柴田監督。
ただ、痛い材料はディフェンス陣の手薄さ。
常田(出場停止)、あるいは橋内を欠くならば、大野 佑哉らが、それこそ腹をくくって奮起するしかない。
その中、下川 陽太のセンターバック起用が濃厚なのか。
ならば、サイドバックは、左外山 凌、右表原 玄太あるいは、田中パウロで。
インサイドハーフは、佐藤 和弘と前 貴之の定番で、ということになりましょうかね。
で、ルカオの戦術的なフィットを願います。
では。