
― お医者さんからね、肺がんのステージ4、と言われても、その大変さがわからないから、こっちがすこしも落ち込んでなくて、かえって、びっくりされたの。
進行の程度が、10段階の 4つめ、くらい、と思ったらしい。
いやいや、ステージ4 とは、もはや他の臓器にも転移していて、外科的な手術ができない最終的な段階です。
― そうだってね。
一般健診で見つかるまで、自覚症状が、ぜんぜんなかった。
いまも痛みはなし。ただ、お薬を飲んでいる。最近は、いい薬があるみたいで、いままで言われてきた生存率にも変化が出ているとか。
― 薬の副作用でね、手指の皮膚が、あかぎれのように割れて大変。
いまさら、指の中で、親指の働きが大きいことを実感したわ。
私も、中指骨折してはじめて、親指と人差し指が、8割方重要、ってわかりました。
― 大きな救いはね。一昨年に、〇〇さん(ご主人の名)が逝ったこと。
これが、逆だったら、〇〇さんを看る人がいなくなっちゃたから。
脳血管障害で倒れて以来ベッドで、9年間、奧さんが自宅で介護していたのは、
かつての僕の中学時代の担任。
折をみて、自宅に見舞っていた。
さぁ、春になったことだし、
彼岸だから、ご霊前に花でもと、あらかじめ連絡した時に、
病気になったことを、ご本人から知らされた。
電話の向こうが、案外明るい声で、かえってこっちが救われた気分になったんだが、
この日もやはり、明るく応対していただき、上がり込んで1時間ほど話した。
帰り際に、お庭の檀香梅から切り取った小枝を、いただく。
また、うかがいます、と辞したが、
一期一会、という言葉が、胸に去来した。
では。

