
ジョージ ロイ ヒル (1921~2002年)監督の作品といえば、
『明日に向かって撃て』(1969年、原題は、強盗ふたりの名前を並べている)
『スティング』(1973年)、
この2作品が、(日本にあっては)
ポール ニューマンとロバート レッドフォードの取り合わせもあり、もっとも馴染み深いのかも知れない。
萬年的には、『スラップショット』(1977年)も忘れてもらっては困る、という評価。
だが、だが、しかし。
ロイ ヒルにあっては、
『スローターハウス5』(1972年)こそ、最も敬意が払われるべき作品と、今回観て思う。
そもそも、
カート ヴィネガット Jrによる原作(1969年発表)が、想像力豊饒な、SFコメディ文学である分だけ、
それを踏襲した映画のほうが、その評価を落としているのではないか?、と僕は邪推するんですが、
これが、かなりな見ごたえがある。
タイトルは、(独語で)〈第5屠畜場〉のこと。
これは、主人公ビリー ピルグリムが、第二次世界大戦中、ドレスデンの街でドイツ軍捕虜であった際の、代用収容所の名そのもの。
異星人の力によって時を超越して移動してしまう彼は、戦場と未来、あるいは終末までをいったり来たりして、物語は進行する。
映像もいいが、
グレン グールドによるバッハ演奏曲を随所に用いているあたりが、この監督の趣味の良さ!であります。
令和キネマ座の、準ベストテンにいれなくちゃあ。
もっとも僕が感心するのは、
明日に向かって~と、スティングの間で、
この作品を撮っていた、という仕事の旺盛ぶり。
さらに、主人公を演じたマイケル サックス(1948~)は、
〈ザ シュガーランド エキスプレス〉(1974年 スピルバーグ監督)で、
監獄破りの若い夫婦の、人質となって連れ回される巡査役で出ていましたね。
では。

