〈毒〉について。

夕方になって、急に、

前夜(比較的に早朝)に見ていた夢の断片を想い出すことがしばしばある。

あぁ、彼が登場してたよな、と脳裡に浮かんでくる……。

それとよく似た風にして、ふと、

萩本 欽一が思い出された、今日の午後なのであった。

なぜか?など、皆目、分かりません。

あぁ、

70年代に売り出していた頃の、コント55号は、面白かった。

そのコントの妙味は、

萩本が〈毒〉を発散することで、相方の坂上 二郎の、心胆をゆさぶり、なじり、愚弄し、ひきずり回すところにあった。

この事はこうやるんだよ、やってみな、と、萩本が坂上を試すことが続く。

で、巧くできないことを、責めに責めて、ついに〈バカモノ〉と決めつける。

この言葉は、相手に対し、敢然として上位に立つ者の宣言なんだが、

萩本の、〈バカモノ〉の口調とタイミングは、とても秀逸だった。

時として、坂上が、それなりの抵抗を示すことがあって、

観ていて、あぁ、これは舞台を降りた日常で、かなりな葛藤もあって、その中、コンビをやってるな、と思わせた。

観客は、コンビの絆におけるスリリングさをも、楽しんでいたように思う。

ふたりが、それを使って笑いを獲った、というのが精確か。

なぁなぁの仮面を剝ぎ取って、どうでもいいことに偏執すること。

僕は、それを〈毒〉と呼びたいのだけれど、

マジメにおかしく、しかも、暴力的にやったのが、コント55号の価値に違いない。

ゆえに、平和愛好者の家人は、その芸風にトコトン否定的なわけ。

やがて、

萩本は、司会業に転じたけれど、

そうなると、聴き役にまわり、相手をそれなりに立てなければならない。

だから。

〈毒〉の発散は禁じ手、とせざるを得なくなった。

いわば、無害化した、萩本 欽一というコメディアンを否定はしないが、

僕の興味はない。

では。