
惰弱(だじゃく)。
辞書をひくと、
〈意気地がないこと〉〈決心がつかず意思が弱いこと〉〈体力が弱いこと〉。
ま、好印象の文脈中では、決して使われないけれど、
一般的に流通している価値や評価について、うじうじと
まづは疑ってかかる僕にとっては、それほど嫌な言葉でもない。
80数年前、日本人全体が惰弱であったならば、あのように大風呂敷をひろげた戦いには没入しなかったろう。
その民に、敵への投降を禁じ、死ぬ決意を強要するような国家は、百害あって一利なしであるから、
いっそ滅びてしまうほうがよい。
事実、1945年8月15日に、それまでの日本は、ある部分で滅びた。
けれど、その滅び方が、他者、すなわち、主に米国都合だったがゆえに、
その滅亡をキチンと評価できず、いまもその後遺症で悩んでいる。
いや、その悩みを感じていないことのほうが、たちが悪い。
……横道に逸れた。
ジョー氏に、ポール ニューマンの出演作で、お薦めはある?、と訊かれた。
彼、〈ハスラー〉を観て、この男優に開眼したらしい。
― そうねぇ、〈評決〉〈明日に向かって撃て〉あたりかな、と応えたが、
翌日になって、〈スラップショット〉を追加した。
ほんらいならば、〈スティング〉を推すべきだったか。
どれを観ても、それほどハズレはないだろう。
彼は、逞しさ、と同時に、〈惰弱〉を、いとも自然に、スマートに演じられる役者なので、僕は好きだ。
秋(あるいは冬?)の陽光が差し込む法廷で、
陪審員に向かっておこなう、弁護士としての最終弁論の場面は、秀逸。(評決)
そうだ。
あの作品は、やはり、この季節に観ないといけない。
と、我ながら、わけのわからんことを言っている。
では。

