サイドは、終始、奈良のほうが優位に使えていた。
結果、コーナーキックは、山雅は1本のみ。
ボール保持は、常にむこうにあって、時間帯によっては、70%くらいだったと思う。
要は、どっちに転んでもおかしくないゲームだったが、
攻撃の、最後の部分だけを切り取れば、
山雅が放ったシュートはどれも、奈良ゴールキーパーの手が届かないところに突き刺さり、
奈良のそれはみな、大内 一生の真正面か、そのリーチ内に飛んだ、それだけのことなんだけれど、
でも、やはり、勝敗を分けた底流があったはず。
〈ボランチに託されたもの〉
僕が、プレビュウで、1996年生れ対決としたは、
このゲームが、中盤(ボランチ)の出来映えで決まると読んで、
ただ、山本 康裕の不在を決めつけ、安永 玲央と大橋 尚志のセットを予想したからでありまして、
実際は、安永と,復帰した山本が、当夜のスタメンで並んだ。
開始早々。
奈良は、岡田 優希が左サイドから鋭いクロスを蹴り込む。
これを、(あわやオウンゴールで)クリアしたのが、安永。
このシーンこそが象徴だった。
ボランチふたりは、奈良の攻撃の芽を摘むこと、ボールを奪うことに奔走し、
やがては、
加入したての川上 航立を投入してまでも、〈狩人〉のミッションを遂行させ、
彼等はそれにミゴトに応えた。
2得点目は、安永が、相手ボランチからボールを奪取したのが起点。
☜これが、山雅が、中盤に与えた継続的なミッション。
対し。
奈良の中島 賢星は、オフェンシブハーフ(2列目)をやるようになって、今節が、4ゲーム目。
これは、新監督の肝煎りの戦術であり、過去3ゲームは、2勝1分けで結果を残している。
ゲーム前半。
彼は、岡田 優希への決定的スルーパスをとおして魅せたり、幾度となく裏抜けダッシュをかけて、山雅ディフェンダーと駆け引きしている。
で、みづからも2度オフサイドを冒すほどに、攻撃的で、こちらには危険なプレイを繰り出した。
ところが。
後半になると、ふたりの田村(#7と#17)が投入されて、もっぱら岡田と彼らに攻撃の基軸が移ったせいかどうか、中島は、ずっと後方に落ちてプレイするようになった。
僕は、これを、奈良ベンチによる戦術的〈変節〉、つまりは変更、と診ていますが、山雅にとっては、多少とも、相手の攻撃圧が減じたはず。
〈スロウインに落し穴があるとは〉
奈良の、このゲームを決めた、もうひとつの〈変節〉が、スロウイン。
それまで、奈良のスロウインは、投げ入れたボールの取得率が、100%。
サイドバックは、後方のセンターバックめがけて投げるんだから、そうなるのはアタリ前で、
そこからボール保持して、基底からビルドアップを始めるならわし。
ところが、その禁を解いたのか、解かされたのか。
68分頃の、奈良右サイドにおけるスロウインは、はじめて前方に投ぜられたのです。
つまりは、山雅プレイヤーと、ボールを競合する格好で。
この時、飛び込んだ選手同士の接触が、奈良にファールの判定。
71分のダメ押しとなった、村越 凱光のシュートは、このファールによるフリーキックからの一連の流れの中で生れた。
ゆえに、あの時、上がっていた高橋 祥平がボール奪取にかかわり、杉田 隼がアシストを記録したのでした。
ホンのひとつのスローイン……。
……ゲームを決めた、奈良の目立たぬ〈変節〉と、山雅が〈継続して〉最後までボランチに課したタスクについての、対照でした。
では。