なにかにつけて、
お気に入りのものに囲まれて暮らせ、とまるで強制するような風潮を、いたるところに感じている。
趣味性も、それにあまりにこだわると、窒息してしまわないか?
いい意味で、物心に執着せず、いつでも死ねる、それが最高かなぁ。
でも、たまには、そこでゆっくりできる曲でも聴きたい、とも思う。
『ミスタ ボージャングルス』(Mr. Bojangles、1968年発表)は、
ジェリー ジェフ ウオーカー(1942~2020,米) の作詞作曲による。
……僕(ジェリー)は、公然酩酊罪で、ニューオーリンズの刑務所に収監された。
まいってた時期、1965年の頃。
この時、本名は伏せ、ボージャングルス(往年の名タップダンサー) と名乗る白人の大道芸人を知った。
監房の囚人たちの、人生なんかの会話が続いて、
ボージャングルスが、20年前昔に、15年間一緒に旅した愛犬を亡くしたことを語ると、空気が暗くなった。
すると、誰かが、場を明るくしようとして、言ったんだ、
ボージャングルス、踊れよ!
ボージャングルス、踊れ。
白髪、ボロのようなシャツ、だぶついたズボン、そして、擦り切れたシューズ。
それをまとって、ボージャングルスは、それは高く跳んで、タップを踏んだんだ……。
ざっと、こういった歌詞。
これを、飾り気もなく、衒いもなく、ギターひとつ抱え、作者自身が歌う。
哀切なワルツ……。
もう、これ以上、言葉は要らないや。
では。