あぁ 無情 【愛鷹篇】 (沼津戦レビュウ❹)

遠征の名残りにと、桜えびせんべいを、職場で渡したら、

― 負け試合を観に行って来たの?、ジーコも来てた、という。

と返されてしまった。

よく情報とってるなぁ、と驚いてしまったが、
そうそうスタジアムには行かない人々の、こういった関心こそが、クラブやチームを支えているのを強く感じる。

ファンサポーターは、たしかに熱心な〈前衛〉かも知れないが、

松本という街全体が、水をたたえてクラブを浮かべてくれていることを忘れまい。

さて、今回は。

ささやかな交歓のお話。

当日、待機列の順番確保をしていたら、お隣の青年が、(見かねてであろう) ご親切に、テープとマジックを貸して下さった。

で、入場15前の再集合時。

青年の足もと(スニーカー)が、黒基調の、オレンジに補色青のアクセントなのに気づく。

― 失礼ですが、エスパルスサポーターでいらっしゃいます?
昨日は、アウェイ7点の勝利、おめでとうございます。

― えぇ、その現地にいました。きょうは、はしご観戦です。
いわきとは、ホームで9得点だったんで、相性でしょう(とご謙遜を)。

(2015季第3節) 山雅さんのJ1初勝利を、エスパルスが(ホームで)献上したことがいまだ悔しくて。
いつかアルウィンに行きたいんですよ。(リベンジですか)
だから、是非、(上位リーグに) あがって来てください。

― はい。(冗談に) 山雅を代表して承ります。

ところで、今季は、滝君をお貸しいただき、ありがとう存じます。
ルヴァン杯(2019年)では、ドウグラスのアシストから滝に見事なミドルを決められたんです。山雅は、手痛い得点を喫したプレイヤーをよく獲ります。
犬飼 智也(現柏)にまた、力を貸してもらえないか、とも思ってしまうんです。

そうしたら、前に並んでいた若い女性(単独行)が、チラッと振り向いて、

―滝のは、ドウグラスのヘディングによるアシストでした (と補足してくださった)。

そう、なのだ。
このお方も清水サポーター、それも、滝君の熱烈なファンらしい。

数年前のゲームに、すぐに反応する。

これこそ、エスパルス先輩の根っこが、しっかりと静岡市に張っている証し。

とまぁ、こんな楽しい会話をしてから、それぞれは入場したのですが、

ところが。

直後にリリースされた、山雅登録メンバーには、

なんと、滝 裕太の名が見あたらないではないか!!

あの女性の落胆と、そして、青年が味わったであろう敗戦の寂しさ。

これらすべては、

愛鷹における、山雅による、非情と、裏切り行為。

だから、いつか、もしも彼らにお遭いする機会があれば、

山雅を代表して、心から謝罪しなくてはならない僕。

では。