六九商店街 (大手二丁目) に、喫茶店があった。
(たまり場、休憩処としての喫茶店は盛りだった)
井上百貨店の前を、松本駅方面に向かって、
翁楼(そば)を過ぎると、アーケード街を横断する。
そのまま、女鳥羽川沿いの道に出た、その左角に。
その名を想い出すのに、数週間かかって苦労したけれど、ようやく
〈ロアール〉という名に辿り着いた。看板のレタリングも、なんとなくだが。
そうだ、間違いない。
(僕が立ち寄る時は)カウンターの中では、女性がひとりで切り盛りしていた記憶がある。
ほかにテーブルが、あったかどうか、店にどんな音楽が流れていたか、は忘れてしまったけれど、客の多くは常連のようで、皆、学生の僕なんかよりは大人に見えた。
入り浸っていた連中がサッカーチームを作り、その水脈が、やがてプロチームに結実したおかげで、
半世紀後の松本の街に、喫茶山雅は、(奇跡的に) 復活した。
でも、あのロアールは決して蘇らないだろう。
時代は移ろいで、当たり前、今の今も。
では。