すべての事がふさわしくおこなわれる、完璧な世界。
この世がそんなものでないことは、わかってはいる。
わかっちゃあいるが、高温な季節には決まって、幼い命が炎熱の車中でむざむざと命を落とす。
亡くなった幼子は、かならず天国に行くから、そのことを心配はしない。
けれど、この子から、現世での経験を積む機会を奪った者こそ、自分がこの世に生まれてくるべきではなかった、と思う。
こういう時、『A Perfect World』(1993年、米映画) を、かならず想い出す。
幼い時の体験から、子供に対する暴力や虐待を潔癖なまでに憎む脱獄囚(ケヴィン コスナー)。
8歳の少年を人質にとって逃避行を続けるこの男と、それを追う警察署長 (クリント イーストウッド)。
イーストウッドの撮る(監督) 映画は、どれも〈苦い〉が、本作はまた格別だ。
その意味で、イーストウッドでは、僕がいちばん推したい作品かも知れない。
完璧でない世界、しかも、そこで生きざるを得ないのが人間。
これって、いわば、僕等の究極のテーマなんだろうな。
では。