夏のおごり。

昨日の夕方。

東の空には、しばらく大きな虹が立ち上がると、今年はじめて、ヒグラシの鳴くのを聞いた。

もしも、平和を表現したいのであれば、

― 今日ね、虹を見たよ、とか、ヒグラシの声があったよ、なんて些細なことを、夫婦や家族、近しい人々と会話することが、それなんだろうな、と思う。

平和を、いくさのある無しで語るのは、もう、うんざりだ。

先の日曜日、所用で長野市まで行って来た。

国道19号を使ったけれど、路傍には、ノウゼンカズラの花の橙が、やたらと目についた。

家ごとに  のうぜんかずら   狂おしく      萬年

同じ頃、ジャガー氏は、蓼科山でガイドにいそしんでいたのだが、ビーナスラインの山は、ニッコウキスゲの黄が、いつになく盛んだった、と聞いた。

(すでに秋が潜み込んだ)  この夏。

自然は、黙々と奢っている。

僕等が、気づこうが見逃そうがには、おかまいなく。

自然は惜しみなく奪い、惜しみなく奢る……。

では。