月夜の夢 ひとつ。

眠りから醒めて、やおら時計をみると、なんと、もう11時をまわっているではないか。

そうだ、昨日ワクチン接種をしたんだっけ、それでこんなに倦怠感がひどいのか。

遅くなったけれど、とにかく、会社に休みの連絡だけはしなくちゃあな。

さて、誰を指名して事情を話すのがいいんだろう……、と思案していると、部屋の窓ガラスがギシギシと鳴りだした。

起きて窓のところまでいくと、にゅっと、上からさかさまに見知らぬ男の顔が降りてくるではないか。

― あんた、ここで、なにやってるんだ?、と訊ねると、

― いや、趣味で他人の窓ガラスを磨いてまわってるんでね。

― それはありがたいが、お代は払えないよ。

― もちろん、サーヴィス、無料に決まってる。

……、とここで目が醒めた。

久しぶりの面白い夢、と思いながら時計をみると、夜中の2時。

カーテンから明かりが射しているので、外に出て見あげると、

夜の頂点からすこし西に傾いた満月が、暈の中にボウっ、と輝いていた。

すこしの頭重感と腕の痛みはあるけれど、この調子だと仕事には行かれそうだ、もうひと眠りしよう、とベッドに入った。

では。