映画の原作(小説)を書いた、チャールズ ウエブは、昨年6月に、81歳で亡くなった。
監督は、マイク ニコルズ(1931~2014年)。
(彼の作品ならば、実は『キャッチ=22』(1970年)のほうが好みです)
メガホンをとった当時、マイクは 35歳。
自身が既に青春の真っ盛りを過ぎていたためだろうか、自分より少し若い年代への兄貴分的な優しさが、この作品には漂っている。
そして、主人公とミセス ロビンソン(アン バンクロフト)の情事は、醒め切った眼で描かれた。
〈和解のない〉世界を、親しみと、苦い皮肉を織り交ぜて撮る姿勢。
それが作品を、魅力的なコメディーに仕立てたな、と思う。
萬年は、作品を観た当時、米国の東海岸アイビーリーグと、ウエストコーストUCLAの、雰囲気のおおきな違いを感じておりました。
原題『The Graduate』とは、卒業生のこと。
それを卒業、と訳出したのは、かなりのセンスですよ、これ。
目標のない怠惰な生活からの卒業、という結末をも暗示していて見事。
ラストシーンは、とみに有名。
バスに乗り込んだカップル(ダスティン ホフマンとキャサリン ロス)の将来がかならずしもバラ色でないことを暗示するため、監督は、カット!の発声を、敢えて遅らせることで、俳優が見せる独特の表情をとらえようとした、といいます。
主人公が画面の向こうに去っていく、ってのは、チャップリンも多用したように、もともとハッピーな終わり方ではない。
ならば、そのラストを楽しみながら、検証してみましょうか……。
では。