ノスタルジックな作品を撮らせたら、もう独壇場の監督。
―といったら、ジョージ ロイ ヒル (1922~2002) を挙げたくなる。
職場においてルノワール氏と、太田 裕美がセットで語られるのと、まったく同じように。
ロイ ヒルならば、『スティング』(1973年)、『明日に向かって撃て』(1969年)がすぐに思い出されるけれど、
今季低迷する我がチーム、それと、この前対戦したFC琉球が、ホーム観客は平均で700人弱を知る、が重なると、どうしても、
『スラップ ショット』(1977年)のほうが頭に浮かぶ。
主演のポール ニューマンは、この当時、52歳。
マイナーリーグのプロアイスホッケーチームにあって、そろそろ引退の声がかかってもおかしくないプレイングマネジャーを演ずるには、役者としての旬だった、と言えようか。
最下位に低迷するチーム成績を立て直そうとヤッキになりながら、分かれた元妻にいまだ未練タラタラの私生活。
対戦チームのプレイヤーの女房からピロートークで掠め取った醜聞を、リンクでぶちまけることで逆上させてでも、ゲームに勝とうとするような姑息さ。
投げやりないい加減さと、必死のしぶとさとで、逆境に向かう。
こういうのは、ポール ニューマンのお手のもの、って感じがして、それから5年後の『評決』の演技に結実した感あり。
そういえば、この作品で共演したリンゼイ クローズ(1948~)は、『評決』でも共演していたっけ。
彼女、評決では、決定的な証言をおこなう看護師の役でした。
スラップショットでは、チーム唯一のインテリ(プリンストン大卒)プレイヤの妻を演じる。
現代物(当時の)ではあるけれど、地場の鉄工場が閉鎖されようとしていて斜陽の影が忍び寄る小さな街チャールズタウンが、ホームタウン―
とくれば、ヒルお得意の、失われゆくものへの郷愁が画面ににじんでくる。
萬年がいちばん心に残るのは、夜、チームバスが遠征から戻って停まると、選手の連れ合いが迎えに来て、されぞれが三々五々家路を辿っていくシーン。
地元にプロチームがあって、はじめてわかるこの感覚、とでもいえましょうか。
コメディは、最後でそこそこのハッピーエンドで終わるんだが、やはり現実の苦さをほんのり残して、ってのは巧いなぁ、ヒル。
映画の中では、その頃流行ったポップソングがいくつも使われていて、その中から、今回はこれ。
では。